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意地悪で天邪鬼で嘘つきな祖母

私の家族はみんなおとなしい。でも祖母だけは例外だった。
私の祖母は、天邪鬼で、ちょっと意地悪で、嘘つきで、頑固で敵が多かった。
でも、その分、祖母の家には、いつも親族やら近所の人が家に上がり込んでいた。祖母に会いに来ていた。
祖母に対する文句を言いながらも、みんな祖母のことが大好きだったのだ。

私の祖母は、とにかく口が悪い。
とにかく、人の悪口をいう。
特に親族の悪口を言いまくる。(不思議なことに、私や他の孫の悪口は言わなかったけど)

やれ、「波ちゃん(私)のママは、ご飯に惣菜ばっかりだ」とか
「波ちゃんのパパは、パチンコばっかりやってパープーだ」とか
と〜にかく 悪く言う。

でも、その祖母は悪口を 面白おかしく言うのんだから聞いている方は、
笑っちゃう。
なので、祖母の周りはいつも笑いがあって明るかった。
子供ながらに祖母の悪口は 面白かった。
(今思えばとんでもない、ばぁさんだけど)

私が中学生くらいまでは、毎日のように祖母の家で過ごしていた。
私が大学に進学して下宿するようになると祖母の家に行く回数は年に1〜2回になった。

私が就職活動の時期には、祖母は段々と衰え始める。
もともと体は小さくて病弱だったが、さらに弱くなり、しょっちゅう入院していた。
大学から帰省して、祖母の病院受診の付き添いに行ったときのこと。
久々に合う祖母は、より小さくなって、なんだか弱々しくて、守ってあげなきゃと感じた。
病院のエレベーターに乗る際、躓かないようにそっと祖母の手を取る。
祖母が「波ちゃんありがとうね」とゆっくりゆっくりエレベーターに乗り込む
弱わしい祖母の姿に胸が熱くなる。
次の階で 女の人が乗り込んでくる。
突然祖母が

「波ちゃん許して!もういじめないで〜」 

と大きな声で言ってくる。

女の人、びっくり顔で私と祖母を見てくる

祖母は、「孫が病院連れてきてくれたんですよ~。私もたもたしちゃうから、迷惑かけちゃうの」と女の人に話しかける。

女の人苦笑い。

私は 突然のことで びっくりしたのと恥ずかしいので下を向く。

(え?え? 私祖母をいじめてる孫みたい??)

ひ汗だらだら。。。  そして意味不明な祖母の言動に内心パニック

エレベーターをおりると祖母は何事もなかったかのように スタスタ歩き出す。

ヲイ! ばばぁ!!)  
とんでもない意地悪ババァじゃねえか!

そうだった 祖母はこういう人だった。
人の気を引くために奇抜なことをする。

特に自分を可哀想に仕立てるのが得意だ。

そんなことがあってから
また何年かすると祖母は歩行がさらに不安定になり、外出がままならなくなる。
祖母はもう さみしくて毎日何回も何回もいろんなところに電話をするようになった。  私の実家、親戚中の家 友達 近所の人。。。。
1日中電話の前で小さく座っている祖母が可哀想だった。

「歩けないからきて」
「お腹痛い」
「死にそう」

祖母の悲痛な訴えに
最初はみんな、その度に祖母の家に様子を見に行っていた。 
でも毎回、さみしくて騒いでるだけの祖母に だんだんみんなうんざりした。
祖母は、もともと文句が多くて感謝が少なかったので
動けなくなくて要求ばかりの祖母の相手は
疲弊するのだ。

私が結婚する少し前
突撃で祖母の家に行ったことがある。
母から祖母が歩けなくなったときいたからだ。
祖母の様子が気になって
祖母の家の縁側からそっと 様子をみると 祖母は普通に歩いていた。

(はて・・・?)

私が呼び鈴を鳴らすと、
祖母は、ハッとした表情をしていきなり 
這いずりだしたのだ。

私のことを認識すると

「波ちゃん、ばぁば歩けなくなっちゃった」

ヲイ ばばぁ・・・さっき歩いてたの見たぞ

こんな同仕様もない祖母だけど、憎めない。
なぜなら
祖母は、天邪鬼で意地悪で嘘つきだけど、
ホントはとっても優しい。

祖母は、7人兄弟の長女。 
祖母の母は、祖母を子守のようにつかい、
祖母が大きくなると働きでとして
どこかの屋敷に祖母を売った。

その他の兄弟は、学校にいって可愛がれたが祖母はとにかく働からかされた。

祖母はとても働きものだった。

忙しい私の母の代わりに、毎日手作りのご飯とおやつを用意してくれた。
塾の送り迎えもしてくれた。
なんでも器用につくってくれた。

文句いいながらずっとずっと だれかのために働いてくれた。

祖母の母(曾祖母ちゃん)が寝たきりになってうんこまみれになったとき
曾祖母ちゃんを一番介護したのは祖母だった。
曾祖母ちゃんがなくなって一番泣いたのは祖母だった。

祖母は優しい。ただ圧倒的に素直じゃない。
甘えたことがないから、甘え方をしらないのだ。
だから、気を引くように奇抜なことをいう。
悪口をいって笑いを取る。
それは、決して良いことじゃないけど、
私はそんな祖母が好きだ。
(腹が立ったり傷つくこともあるけど)

祖母の 弱さが人間らしいと感じる。

祖母は3年前、施設で亡くなった。
認知症が進んで寝たきりになった祖母。

祖母はどんどん 周りに関心がなくなっていった。

母のことも、その他の親族のこともわからなくなった。

母の報告によれば
介護士さんにご飯食べさせてもらっていたのたけど、嫌いな煮物は嫌がってたべないとか。
介護士さんの呼びかけにニッコリしたとか。
身体を拭いてもらってうれしこうな顔になったとか

およそ祖母とは考えられないような情報で複雑なきもちになった。

私が実際施設に会いにいった祖母は、赤いほっぺたで顔がまるまるつやつやして、リクライニング車椅子で眠っていた。
よだれで汚れるのを防ぐため、首にタオルを掛けられた姿は
なんだか赤ちゃんみたいだった。

そこから 季節が一周した頃
祖母は、誤嚥性肺炎となった。

「もう長くないですね。」

そう医師からいわれてからは
母は、毎日施設に足を運んだ。

私もできるだけ会いにいった。

赤ちゃんみたいになって介護士さんにお世話されている祖母をみて、母は時々涙を浮かべていた。

施設に入りたてのころの祖母はそれはそれは、手が付けられないほど、親族に怒り爆発だった、、、、大暴れ暴言ババァだった。

それはまた別の記事で書こうと思う。  

コロナ禍の真っ最中 祖母は亡くなった。

びっくりするくらい きれいな 穏やかな顔だった。

お葬式はコロナ禍とあって 簡素で短時間で淡々と終わった。
あんなに大騒ぎで周りを巻き込んだ人の最後にしては地味だな、と思った。

祖母がいてくれて、私たち親族は笑いと怒りが絶えなかったよ

安心して、意地悪な天邪鬼を卒業して思いっきり曾祖母ちゃんに甘えてください。

#おじいちゃんおばあちゃんへ


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