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金魚から出汁をとった話

中学1年の夏祭り。
金魚すくいで もらった金魚のことが、今でも忘れられない。

友達と金魚すくいをした。
私も友達も1匹も救えず、金魚屋のおじさんは、それぞれ2匹づつ金魚を袋に入れてくれた。

私がもらったのは、2匹とも赤い小さな和金だった。(金魚すくいでよく見るタイプの金魚)

家に帰ると 早速 物置にあった水槽を引っ張り出した。
水道水を満タンにして そのまま どぼっと金魚を入れた。
本来だったら、水道水のカルキを抜いたり、エアーポンプを入れたりするの必要があるのだと思う。
しかし、当時の私はそんなこと知らず 水に泳がしとけばいい と思っていた。
翌朝、水槽を確認すると、すでに1匹は死んでいたが、残された1匹は元気に泳いでいた。
父親がエアーポンプと餌を買ってきてくれたので、さっそくセットした。
水槽は玄関において、エサは私が毎朝あげた。

餌をあげると パクパク口を開ける姿が、可愛かった。
時々水槽の水を変えて、エサをあげていただけなのに、金魚は季節を2つ越した。
金魚の体は 少しづつ大きくなっていた。
もうすぐ 冬休みになる頃、 毎朝しびれるような寒さだった。
玄関に置いてある水槽が 凍ってしまったらどうしよう。
寒くて金魚が凍死したらどうしよう。と心配になった。

ある朝 金魚の水槽にお湯を入れることを思いついた。
お風呂より、ぬるいくらいの温度だったら、きっと金魚も気持ちよいだろう。
熱帯魚というのがいるんだから、金魚だってぬるま湯は大丈夫なはず。

そう確信し
たらいにぬるま湯を汲んできて そのまま水槽にいれた。
たらいの半分くらい お湯注いだところで、急に金魚が、
水槽内を縦横無尽にぐるぐる回りだした。
回ったと思ったら ビチビチと勢いよく暴れだした。
狂ったように暴れ、ついには水槽から飛び出そうになった。
私は、とっさに水槽の蓋をしめた。
目の前の異常な光景に おそろしくて 動けなくなった。 

震える手で水槽の蓋を抑えてると 金魚がおとなしくなった。

この間 ほんの数十秒だったと思う。

恐る恐る蓋をあけて金魚をみると

金魚は まな板に乗せられたような 横向きの姿勢で水面に浮いていた。

口はパクパクし ひれを動かして、生きていた。
その様子も恐ろしくて 目が離せなかった。

自分はとんでもないことをしてしまった。

横泳ぎをしている奇妙な金魚から目が離せないでいると
金魚のうろこ全体から 白い白濁とした液体がもや~っとでてきた。

さらなる恐怖に

「おかーさん きて~!! 金魚から出汁みたいなのでた!!」



大声で母親に助けをもとめた。

金魚はしばらく横泳ぎをしていたが、学校から帰ってくると死んでいた。

私が無知であったがゆえに 死なせてしまった。
かわいそうなことをした。

20年以上たつ今でも
夏祭りの時期になると 横泳ぎの金魚の姿を思い出すのだった。



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