ぐん税ニュースレター vol.28 page01 -ご挨拶-
皆さまいかがお過ごしでしょうか?
12月師走、師も走るというスピードでやり残した仕事を仕上げようと努力はしていますが、不完全なままになりそうです。
さて、今回は師、税理士業についてのお話をしたいと思います。私は毎年10件前後の税務調査に臨んでおり、税務調査の結果、何もありませんと申告是認となればいいのですが、多くの場合は修正申告となります。これについては証拠に基づいた指摘なので納税者も私も仕方ないと思って修正申告をすることになります。しかし、法令解釈の問題となると修正申告に応じたくないというケースも中には出てきます。今回は税務署と戦いたい、という場合には修正申告に応じないで放っておくと税務署長が更正の処分を出します。その処分に不服があれば国税不服審判所に審査請求を出します(3か月以内)。審判所で裁決を出した結果、その裁決に不服があれば裁判となります。
更正の処分に対して再調査の請求をするという方法もあり、これは税務調査を再度行って下さい、ということでその調査後の決定に不満があれば、不服審判所に行くことになります。
認容の中には全部認容だけでなく、一部認容も含まれているので納税者の言い分を全面的に認めてもらえるのは10%以下ということになるかと思います。令和元年や2年に審査件数が大幅に減ったのはコロナで税務調査が少なかったことが影響しているかと思います。
国税不服審判所の裁決にも不満な場合は、税務訴訟になります。
どうでしょうか?納税者が負けてばかりで、お役所はズルいと思った方もいらっしゃるかもしれません。しかし、裁判所が正義だとすると税務署はグレーなものには踏み込まないというか、絶対に勝てるというケースにしか更正処分をしていないということも言えます。
ここで国税不服審判所の裁決結果についてさらに踏み込んで調べてみました。
取下げというのは納税者が審査請求を取り下げること、却下とは税務署側が処分を取り消すなどで、審査請求をする対象がなくなったことを言います。棄却は審査請求を認めないということで、税務署側の完全勝利です。全部取り消しは、納税者の完全勝利、一部取り消しは納税者の一部勝利となります。
この表を見ると、国税不服審判所によって棄却率(税務署側の完全勝利)が大きく違うことがわかります。棄却率は全国では69%ですが、熊本は19%、金沢は28%、広島は30%しかありません。関東甲信越の審査処理件数は東京に次いで多いのにも関わらず、54%しか完全勝利をしていません。納税者の完全勝利である全部取消件数は110件で、総処理数319件に占める割合は34%です。全国平均が160/2282=7%ですから、関東甲信越は異常値を示していますよね。気になったので、過去のデータも調べてみました。令和2年度の全部取消件数は9/214=4.2% 令和元年度は4/441=1%でしたので、令和3年度だけが突出していたようです。
東京税理士会が税理士会員向けに令和3年度に実施アンケート結果が、2021年の12月1日号に掲載されていましたので、そのデータを見ますと
税務調査総件数 188件
申告是認 40件(21.3%)
修正申告 145件(77.1%)
不服申立 3件(1.6%)
という割合だったそうです。修正申告145件のうち納税者が不満を持っている修正申告は5件だったそうですので、140件は納得の上で修正申告をしているようです。188件のうち更正の処分をされて不服申し立てに行ったのは3件のみということで(1.6%)、平和な税務調査がほとんどを占めているようです。群馬県内の税理士の友人に聞いてみると不服審査請求をしたということは聞いたことがないので、東京の税理士は割と不服申し立ての率が高いというのが私の印象です。
最近は税務調査官も高齢化が進み、上司は50歳代だが、現場に来る調査官は20代の経験の浅い人しかいないような税務調査が見受けられます。税務署は30代が極端に少ない組織になっており、税務調査の能力も10年ほど前に比べて格段に落ちているような気がします。一方で、能力不足が原因からか、変な指摘事項や間違った税法解釈によって無理な修正を強いられるケースが多くなっていると感じています。無理な指摘や間違った税法解釈には断固反論しておりますが、場合によっては不服申し立てして戦わないと納税者を完全に守れないということも想定されます。机上演習だけでなく実際に不服審判所あるいは裁判所で戦うことも必要になってくると感じています。
租税正義の実現のためにも税務署と談合をする税理士ではなく、戦う税理士を目指してこれからも研鑽していく所存です。税理士会のブラックジャックになれたらいいな(初夢)。
ぐんま税理士法人
代表社員 小林浩一
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