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VERBE〜動詞的な日常

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「動詞としての文化」とは何かの考察
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#物語

他者の物語と接続し、切り離す

息子の友達が遊びに来て、次男も混ざり、子供の自由さでそれぞれが好き放題やり出す。このカオスの中で凪良ゆう『汝、星のごとく』を読了した。

瀬戸内の島で暮らす高校生の男女が、それぞれ問題を抱えた親に翻弄される。主人公・櫂は母子家庭で、母親は男性への依存度が高く、新しい恋人ができるたびに櫂を振り回す。ヒロイン・暁海は父親が家を出て浮気相手のところで暮らし始め、残された母親は精神に病を抱える。この二人の

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母性的なるものを巡って

遠藤周作は『沈黙』で日本におけるキリスト教の変質を描いており、文化触変を考える上で極めてわかりやすい。いわく、父なる神の厳しさが日本の精神的土壌に根付くことは難しく、許してくれる「母」のイメージが浸透する。そのイメージは聖母マリアが観音と融合する文化(マリア観音)によって推察することが可能だ。この例の妥当性はともかくとして、日本における母の表象は興味深い。

アニメや漫画などの現代的メディアに目を

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非知性的な夢想の対象がファンタジー世界であること

ダルコ・スーヴィン『SFの変容』において、文芸作品は四象限に分類された。分類の軸は「自然主義的/異化的」と「認識的/非認識的」となる。

自然主義的とは、すなわちこの現実を舞台としていることだ。対して異化的は現実外世界を意味する。認識的とは確固とした学問体系に基づき新たな知見を獲得できるものを指し、非認識的は習得から遠ざかるものであろう。この図式に当てはめると、現実において新たな知見を得られるもの

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