ゲストハウス錺屋(かざりや)
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ゲストハウス錺屋(かざりや)

ワンダラーユウコ (Guesthouse Press編集長)

大正時代の京町家に花咲くほっこりあたたかな異空間

京都市内の中心部、五条烏丸にあるゲストハウス錺屋は京都にまだゲストハウスがとても少なかった頃2009年から運営しているに老舗のゲストハウスだ。ちょっと洋風モダンが入った京町家をうまく利用していて、大通りに面してるとは思えないくらい素敵なちょっとした異空間がそこに存在しているかのようだ。

外側は大正ロマンといった風情だけれど、中は古き良き日本。特に中庭が素晴らしく、なんと大工仕事が得意な初期のスタッフがDIYで作ったと言う茶室まである。外国の人が憧れる日本家屋ってこんな感じじゃないかな、なんて思うけれど、もちろん日本人の私たちだって感激するレベルだ。

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ここのオーナーは上坂涼子さん。京都に生まれ育ち、ご実家は西陣織に関係していると聞いた。でもそんな伝統工芸と関係する家でも、住まいはマンションだったらしく、いわゆる京都らしい風情とか建物に憧れがあったと話してくれた。

彼女は、たまたま和楽庵と言うゲストハウスができた頃にオーナーと知り合い働くことになり、数年スタッフとして働くうちに、次は自分で宿をやると言う選択肢が生まれたのだという。そして思い切ってこのレトロかわいい物件を借りてスタートさせたのが錺屋。彼女のインテリアセンスは、きりりと上品な乙女心が混じりつつも、甘すぎない絶妙なラインを保っていて、それがこの宿独自の良さにつながっている。好みに合わないものはたとえ必要性を感じていても使わないと決めているそう。「だから個人用ロッカーが長年見つからなくて困ってるんです・・・」とそんな苦労も。

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備品のひとつひとつがアンティークだったり、京都ならではの東寺などで行われる古道具市で買ったものだったりして、想いがこもっているのがわかる。わたしの特にお気に入りはキッチン。昔ながらのコンロがあったり水屋があったりなんかすごく懐かしい気分になる場所だ。

小さいダイニングテーブルが置かれているのだけれど、ここで調理してご飯をつくって1週間くらい滞在したらめちゃめちゃ楽しそうだ。ある漫画家さんがここを気に入り、この場所がそのまんまコミック本の表紙に使われたこともあるそうだ。

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取材時は前日に宿泊もした。インタビュー取材は次の日だったけれど、せっかくならこの町家の時間の流れをじっくり堪能してみたかったのだ。

涼子さんとスタッフのあゆみさんは、そんな私を歓迎して、前取材的にあれこれとキッチンのダイニングテーブルを囲んでいろいろとお話を聞いた。近くにおはぎの有名なお店があり、差し入れでもらったというその超絶美味しいおはぎをいただきながらあれやこれや話が咲く。(次の日の朝、おはぎを買いに走ったことは言うまでもない)

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特にスタッフとなったあゆみさんがここで働くまでのストーリーがとてもよかった。もともとはゲストとしてよく訪れていた彼女が、いろんな転機があって京都に移住し、ここで働くことになる。

私はそんな人生模様を聞くのがとても好きだ。オーナーのインタビューを聞くだけなので本当はそんなスタッフさんの話を聞いても記事にするのが難しいのだけれど、そういう時間は、わたしにとっても宝物のような体験だ。

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京都は今、オーバーツーリズムなどと言われ外国からの観光客が増えすぎでは?という声もある。それに合わせるかのように数年前から京町家がどんどん一棟貸しの民泊になり、ゲストハウスも増え、もちろんホテルも建設ラッシュ。宿不足と言われた数年前の状況とはがらりと変わっている。

今でも大通り沿いにこんな家屋が残されていることが奇跡のようだけれど、京町家の状況はどこもなかなか厳しいようだ。近隣の空き地がホテルの建設現場になったり、以前は残されていた町家が、経営効率を考えるとビルのほうがよいから、と簡単に壊されることも増えているらしい。さらに価格競争が起こって宿泊価格の相場は下がっているとも聞いた。

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錺屋は、少しだけ離れた場所に「月屋」という別館もあり、そちらは個室だけの宿だ。2年連続でミシュランの星認定を受けるなど、とても人気が高い。また錺屋とは違った雰囲気の町家宿で、もっと高い値段でもおかしくない位のクオリティが評価されているのだと思う。

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京都はこれから安易に開業した宿があっけなくクローズするような新陳代謝の激しい時代に入っていくのかもしれない。自分たちができる工夫を、細やかに丁寧に。そんなふうに日々のおすそ分けをしてくれている素敵なゲストハウスが、経営効率とか大きさだとかそういうものに屈していくのを見るのは悲しいを通り越して苦しい気持ちになる。

いい雰囲気というのは、人と環境で構成されていて、どちらかのバランスが崩れただけであっというまになくなってしまう。そんな絶妙な空間美と人の温かさがある錺屋には、たくさんの人にこれからも泊まりに行って欲しい。

ただ、ドミトリーは女性のみ、その点だけはご了承くださいね。個室には男性も泊まれるし男性スタッフもいます。ただ、やっぱりInstagramも含めて女子ウケがハンパない。でも「映え」だけじゃなく、写真と同等、それ以上に実物もよいところですよ。

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ワンダラーユウコ (Guesthouse Press編集長)

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ワンダラーユウコ (Guesthouse Press編集長)
日本全国のゲストハウスを自費で旅して後日取材してフリーペーパーとWEB記事にする活動を地味に8年やっている旅人。在庫切れのフリペを救うため、2019年12月『ゲストハウスプレス 日本の旅のあたらしいかたちをつくる人たち』を刊行:https://g.co/kgs/fkvmZS