見出し画像

長野にある1166バックパッカーズのこと。

ゲストハウスプレス編集長のニシムラです。今日で連続更新10日目となりました。毎日記事を更新する!って、こっそり決めて自分のブログではやったことがあるのですが、宣言しての連続更新は初めてなので、個人的によくがんばってる!と褒めてあげたい。たった10日でそんなこと言ってたらブロガーなんて一生なれない気もするけれど。

30代女性として、自分らしく働く努力と根性

さて、1166Backpackersのことを今日は書こうと思う。1166(イチイチロクロクと読む)バックパッカーズは、長野県長野市、長野駅から頑張れば歩けるくらいの距離、善光寺の門前と言われるエリアにあるゲストハウスだ。

このゲストハウスのことを知ったのは、d design travelというトラベルガイド本が読んだことがきっかけだった。今や渋谷のヒカリエ8Fにどーんとフロアがあるd&department だが、当時はデザイン業界以外の人は、知る人とぞ知るといったレアな存在だった。旅のムックシリーズが出はじめてわりとすぐにd travel NAGANO が発売された。それが2010年のこと。その中でナガオカケンメイさんの旅日記のような欄に、これからできる宿として紹介されていたのが1166バックパッカーズだった。まだ名称も出ておらず、女性が一人でDIYでつくってる、すごい!みたいな紹介のされ方だったような気がする。

たまたま長野に知人がいたこともあって、その頃わたしは長野市内中心部から車で30分ほどの戸隠神社と言うところに通うようになった。ボディーセラピストという仕事はなかなかハードワークで、体力的な疲れもあるが、何よりも自分が心身ともに充実していないと、よいセラピーができないので、コンディションづくりが大切だ。それで定期的に自然のそばに行くようになった場所のひとつが戸隠エリアだった。

そんな時に利用していたのがこの1166バックパッカーズ(以後1166と略)。小さな2階建ての古い家を改装したこじんまりとした宿で、今流行のカフェやバーが付いているわけでもなく、当時はオーナーの飯室織絵さんという女性が1人で運営していた。

ここの特徴は、玄関入口のガラス扉をがらりと開けると、大きな縦長のテーブルがどんと置かれていて、その奥にキッチンスペースがあるというところ。たまたま空間的にそういう作りになったというのが大きいのかもしれないけれど、このことが1166の大きなアドバンテージになっている。

二階が客室になっていて、日本家屋独特の急な階段を上って奥にあるのが二段ベッドが並ぶ女性専用ドミトリー、もう一部屋が混合ドミトリー、それに小さな和室の個室があるとてもシンプルな構成だ。

コンパクトなつくりの部屋なので、ほとんどの人がちょっとくつろぐため、お茶を飲んだりご飯を食べたりするために、一階の共有ラウンジへと降りてくる。特にラウンジに行くつもりがなく、外に出かける時にも、玄関に出るために必然的にそのラウンジを横切ることになる。

だいたいいつもそこにスタッフがいて、何かしら声をかけてくれる。「どこ行かれるんですか」とか「これからどういう予定ですか」「それおいしそうですね」とかそんなふうに気楽なラフな感じで。

それで、話がちょっとはずんだりしていると、ぼんやり横で聞くでもなく聞いていたソファに座っている誰かが「それだったらここがいいですよ」なんて話に入ってくることもある。

その絶妙な加減がとても居心地良く、押し付けすぎず付かず離れずなのだ。そういう対応は、簡単そうに見えてなかなかセンスと努力が必要なので、なかなか真似できるものではない。

最初はひとりで宿の営業を始めた飯室織絵さん。その後、スタッフを入れてローテーションで宿をまわすようになった。その間、彼女は遠距離恋愛を経て結婚することになり、子供が生まれて、と、どんどん生活が変わっていく。

30代の女性としてはよくあるライフスタイルの変化。生活そのものがガラリと変わってしまうその中で、宿を続けていくにはどうしたらよいか?
スタッフ教育にも定評があるこのゲストハウスを、子育てともなると明らかに宿にいる時間が減っていくなか、どうオペレーションしていくのか、とても興味深い気持ちで見ていた。

ゲストハウスプレスの始まりは「彼女みたいな人を応援したい」と言う気持ちからだった。彼女みたいなと言うのは、自分で人生を切り開き、人に頼らず自分の力で新しいことをやっている人のこと。それを旅という分野で、ちょっとしたお小遣い稼ぎじゃなく、ちゃんとビジネスとして実業を成り立たせている人。

自分自身も、当時ボディーセラピーサロンをひとりで運営していて、それで食っている立場。表には出ない大変なことも多々あって、業種は違うけれど勝手になんだか同志みたいな気持ちにもなっていたのだ。

飯室さんは、自分のことを親に言われたという「長所は真面目なところ、短所は生真面目なところ」という言葉で説明してくれたことがある。宿の仕事は一見派手にみえるけれど、実態は7割位が「掃除・メンテナンス」2割が「予約管理」という地味〜な仕事。ゲストと話をして交流するなど目に見える部分はたった1割くらいしかない気がする。

それをずっと続けていること、ゲストへの1166流の対応をスタッフに教え、高い接客スキルを保ち続けていること。どれもこれもなかなか真似できない努力と根性のたまものだと思う。自分らしく働くって、楽しいけれど、そんなに甘いもんでもない。

ゲストハウスは、昔は本当に安いだけの相部屋宿と思われていて、接客やインテリアやいろんな部分で工夫を凝らして運営している1166のような素敵なゲストハウスとの情報差別化がむずかしかった。

いろんな種類があっていろんな場所があって、それがゲストハウスの特徴でもあってその多様性がおもしろい部分でもあるのだけれど、自分がお客さんの立場なら、やっぱり行ってよかったなって思えるところで時間を過ごしたい。ゲストハウスプレスは、だから自分に向けたガイド本のようなところも多分にある。

いいゲストハウスはずっと続いて繁栄してほしい。女性がふつうに自分らしいライフスタイルを営みながら、実業分野で活躍してほしい。そんな気持ちが強いから、最近は女性オーナー宿の取材が多いのかもしれない。そしてここはその筆頭株ゲストハウスなのだ。

……  現在クラウドファンディング実施中 ご支援ください!  ……

ゲストハウスの魅力を全力で伝える!フリーペーパーから書籍へ
旅のあたらしい魅力を伝えるゲストハウスプレス出版プロジェクト

noteで連載しているゲストハウスは、すべて書籍にも掲載!
インタビュー取材やおすすめスポットなどをご紹介しています。

フリペとWEBをつくる人。ゲストハウスと旅にまつわるお話を書いています。ただいま書籍出版に向けて準備中!少額でもサポートしてくださると全わたしが泣いて喜びます。ニシムラへのお仕事依頼(執筆・企画・編集など)はinfo@guesthousepress.jpまでお願いします。