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連載『オスカルな女たち』

《 打ち明け話 》・・・18

「あなたの気持ちは『本気』で。あたしの毎日が『嘘』だったなんて言わせない! 嘘で『抱いて』だなんて、言えるわけがない! それともなに? あたしがそういう女だと?」
「そういう女だっているだろ…。ぁ、あぁ、もちろん君は」

「うるさい!」


「ぇ…うる…」
「こんなにも一緒にいて…この10年。10年間、あの会話や、この時間が、嘘だなんて、よくも…」
 キッと幸(ゆき)を睨みつけ、
「それで別れようなんて言い出したの? 今さら…そんなことを引き合いに出すなんて。それで子どもが作れなかったの? それで…そんな勝手な思い込みで…あたしを抱かなかったっていうの?」
 流れる涙にすら構ってはいられない。
「ち、違うよ。そういうわけじゃ…」
「じゃぁ、どう…っ・・・・」
 咳き込む織瀬(おりせ)。
 声が詰まって言葉にならない。
「オレだって…ずっと言えなかったんだ…」
(だからなに? だから『許せ』とでも?)
「…言えなかったのも、あたしのせい…?」
「そうじゃない、だけど。いや…でも。・・・・あぁっぁぁぁⅹ…あぁっぁぁぁⅹ…」
「なに…?」
 幸はこれまで、聞いたこともない奇声を発し、見たこともないゆがんだ表情でもがき、頭を抱えた。
 「うー」「あー」と言葉にならない音を繰り返し、頭を両手で叩きながらテーブルの周りを行ったり来たりし、なにか言葉を探しているようだった。
「ちょっと待ってくれ…そうじゃない、そうじゃないんだ…」
 今さら言い訳されたところで「そうなの」「誤解してたのね」で済む話なんかではない。

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです