見出し画像

連載『オスカルな女たち』

《 エピローグ 》・・・2

「それにしたって、だよ」
 入院当日、玲(あきら)の夫が〈吉沢産婦人科医院〉に現れてから、散々ごねた挙句になんの挨拶もなくそそくさと帰っていったふたりの姿を、喫茶店の窓から眺めていた真実(まこと)は「なんだよ、あれ」と見送っていたことをぼやいた。
「真実がいちばん振り回されたもんね」
「織瀬(おりせ)だって、いいたいことあんだろ? 怒っていいぞ」
「あたしは…」
 織瀬にしてみれば、玲の態度うんぬんよりも、機嫌の悪い真実ばかりかさほど面識のない真実の元夫〈佑介〉を置いていかれたことに戸惑いはしたものの、佑介は意外と気さくな男で、結果楽しく3人でサンドウィッチを食べた…という始末だった。
「入院させて2日続けて来ただけで、それ以来10日にもなるってのに、預けっぱなしでまったく顔も出さない」
 なにやってんだ…と続ける真実だったが、心配されていた〈特別患者〉である女優〈弥生すみれ〉の出産も、だれに知られることなく事なきを得たことを思えば、御の字ではある。
「だってもう、下の子たちの学校だって始まったでしょうし…」
 相変わらずの真実のご立腹ぶりに、つかさの頬は緩みっぱなしだ。これまでの「日常」が返ってきたのだと安堵する。

*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)

いつもお読みいただきありがとうございます とにかく今は、やり遂げることを目標にしています ご意見、ご感想などいただけましたら幸いです