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連載『オスカルな女たち』

《 織姫と彦星 》・・・1


 平日の〈クリスマス〉だというのに、翌日が休日のような賑わいの駅周辺を一瞥し、織瀬(おりせ)は慣れた道を『kyss(シュス)』へと歩いた。
(また、ひとりで来ることがあるなんて…ね)
 次は絶対にひとりで来ない…と、そう心に誓った半年前とは自分の心境も身の回りの環境もがらりと変わった。

 バーの看板は消えていた。
 だが迷いもなくその扉を押し、
「いらっしゃいませ…」
 いつもと違う景色が織瀬を迎える。
「いらっしゃいました」
 やっぱり少し気恥ずかしいのか、少しおどけて見せる。
 暗い店内に浮かび上がるのは、バーカウンターの上の3点のスポットライトだけだった。慣れた店とはいえ、さすがに商売っ気のない店内には身構えてしまう。
「こんな日にお休みって、オーナーに叱られないの?」
 まっすぐとカウンターに歩み寄り、真田の前に来るなりコートを脱いだ。
「オーナーは今、パートナーとシンガポールにバカンスです。年明けまで帰ってきません。それに、これでも一応店長なんで実質ここは丸投げなんですよ」
 そう語る真田はいつもの黒服ではなく、真っ白なフード付きのパーカーを着ていた。カウンター越しに下半身は見えなかったが、おそらくデニムではないかと想像がつく。
「ふ~ん…」
 隣の椅子の上にコートとバッグを下ろし、真田の目の前の席に座る織瀬。普段通りではない店内に、普段と違う様子のカウンターに僅かな緊張感が生まれた。

*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)

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