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連載『オスカルな女たち』

《 大切な・・・・ 》・・・16

 弥生子(やえこ)が通話をしている間、織瀬(おりせ)は洗面台で水を汲み電気ケトルの電源を入れた。

 そして「トイレ…」と、声を出さず口パクで弥生子に伝え、一旦病室の外に出た。

「ふぅ…」
 大きく息を吐き、これから自分になにができるだろうか…と考える。
 「トイレ」と言って出て来たからには、一旦トイレに向かうのが筋かと談話室の方に歩みを進めると、正面突き当り右側の診察室のドアが開き誰かが出てくる気配があった。
「まこ…」
 言いかけて動きが止まる。
 出てきたのは先ほど〈ファミリールーム〉に向かう際にすれ違った、長身の男性だった。
「あ…」
 こちらもタイミング的に出てきてはまずかったのか…と、きびすを返すが、
「織瀬…!」
 真実に声を掛けられてしまった。
 逃げるつもりもなかったが、声を掛けられては振り返らずにはいられない。
「どうした」
 こちらに向かいながらそう問いかけられ「それはこっちのセリフ…」と思いながらも、
「あぁ、トイレ…もどったとこ」
 と、とっさに嘘をついてしまう。
「そっか…」
 織瀬も流れから正面玄関の方に足を進め「今、彼女電話中で…」と言いかけてはやめ、聞こえるか聞こえないかぐらいの言葉を発した。



*初めから読み返したい方はこちらからどうぞ( *´艸`)

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