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連載『オスカルな女たち』

《 打ち明け話 》・・・11

「物はなんだかわかりますか?」
 幸(ゆき)が獣医に問う。
「ちょっとわかりませんが、おそらく金属かなにか、じゃないかと…」
「え?」
「もし仮に、金属だとして、この先ここにとどまり続けると、悪さをしないとも限りません。仮に悪さをしないものだったとしても、この大きさですからね。現に食欲もなくなっていますし、早く取り出してあげないと」
「金属…」
 言われてすぐに織瀬(おりせ)は、それがなにかすぐに把握できた。
 多分、いや、おそらくそれは、結婚記念日の夜に失くした…
(指輪だ…)
 それ以後織瀬は無言になった。
「今日は顔を見ずにこのままお帰りになられるのがいいでしょう。後追いされても辛いでしょうから…」
「それではよろしくお願いします」
 横で話している幸と獣医の声すら流れる風のように過ぎていく。
「明日、うんちが出たら連絡します。連絡のない場合は、夕方にでもまたいらしてください」
 それが〈手術〉の合図だった。
「織瀬…。織瀬」
「え? あぁ、はい、わかりました」
 気もそぞろに動物病院を出た。
「オレが迎えに来るよ、織瀬は仕事だろ…」
「いい、あたしひとりで。…あ、あたしが、迎えに来たいの」
「会社は?」
「休む。こんな気分で仕事どころじゃないだろうし、心配。大丈夫、平気だから…」
 心配。…平気?
(どうしよう…でも…)

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