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マイソールの小箱~南インド、古き良き市場で

 もしあなたが、南インドのマイソールという街を訪れる機会があれば、僕はためらいなくデーヴァーラージ市場に行くことをお勧めする。ガイドブックなどには「デーヴァーラージ・マーケット」となっているが、やっぱり「市場」「いちば」という感じ。
 しかも、関東風に「い」を強めるのではなく、関西弁で「ば」に弱いアクセントを置く言い方が合う。
 狭いところは人が何とか行き交い出来るような通りを挟み、両側にぎっしりと店が並ぶ。間口3、4メートルの果物屋もあれば、たった1メートル余りの線香屋もある。
 どの店にも眼光を抑えて、少し口元を緩めた親父が奥に座ったり、商品の並べ方を工夫したりしている。
 市場を歩けば、誰もがライブで味わう原色のインドと、当地の豊かな生活感に満たされるだろう。庶民の活力が飾りっ気なしで飛び込んでくる。
 人々の胃袋と習慣、雑貨、つまり暮らしが凝縮されているからだ。

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