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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#ソクラテス

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

「正義とは何か」神島裕子著 書評

<概要>ロールズ「正義論」を訳した著者が、ギリシア哲学を確認した上で、6つのアメリカ政治哲学(リベラリズム、リバタリアニズム、コミュニタリアニズム、フェミニズム、コスモポリタニズム、ナショナリズム)をジャンル別にわかりやすく解説した著作。 <コメント>後半のフェミニズム・コスモポリタニズム・ナショナリズムの議論は、私の知識不足・理解力不足であまりよく理解できませんでしたが、前半の3つの政治哲学に関しては、より深く理解するには、ちょうど良いボリュームでした。 ちなみに最初の

「哲学の誕生ーソクラテスとは何者か」納富信留著 書評

<概要> ソクラテスの生きた時代は、ソクラテス・プラトンだけが突出していたのではなく、同時代に生きる思想家たちの大きな潮流の一環としての位置付けとして再認識すべきとして紹介しつつ、後代における主にソクラテス思想の受容の仕方を紹介した著作。 <コメント> 中盤は考証学みたいで「史実的・文言的に何が正しくて何が誤っているかの検証」は、専門家に任せておけばいい内容で、我々のような素人にとっては正直言ってあまり面白くないのではと思いますが、「無知の知」など、終盤の日本における誤った

プラトン解釈の類型 西研著「哲学は対話する」

プラトン勉強にあたって、西研最新の大作「哲学は対話する」通読中。 西研哲学は、竹田青嗣哲学と近いので「哲学的思考」はじめ、何冊か過去に読んでいます。本書は2019年に出版された最新作で結構なボリュームの大作です。いずれ全体も展開したいと思いますが、まずはプラトン関連について。 本書の第1部で、哲学対話の先例としてソクラテス・プラトンを紹介。プラトン著作は、対話による著作がメインなので、ルーツオブ哲学対話たるプラトンの思想「魂の世話」について扱っています。 その前に著者の

「国家(下)」プラトン著 ー善のイデア編ー

<概要> (ポピュリズムが僭主独裁を生むみたいな)現代にも通用する政治思想のエッセンスに加え、価値の原理のルーツともいえる「善のイデア」や「芸術」「教育」に関して解説した壮大なる古典。これが2400年前に書かれたというのですから驚愕するしかない名著。 <コメント> 学習院大学で哲学を専攻していた作家の塩野七生さんが「哲学は古代ギリシア哲学を勉強すればそれで十分」と言っていましたが、本書を読むとその意味がよくわかります。 やっぱり解説書・入門書も大切ですが、原典にもちゃんと

「ゴルギアス」プラトン著 書評

<概要> ソフィスト(ゴルギアス&ポロス)とアテネの政治家(カルリクレス)とソクラテスの対話を通じ、「善」を目的とした生き方であってこその人生であり、「善」を押し進めることによってこその政治であるとのプラトンの理想を伝えた対話編。 <コメント> プラトンの創作ではあるものの、ソクラテスがソフィストの大家と言われたゴルギアスやその弟子のポロスを追い詰めていく姿は見事。 ◼️善く生きる 結局、プラトンがソクラテスを通じて言いたかったことは、何においても「善く生きる」ことが前提

「プロタゴラス」プラトン著 書評

<概要> 若き日のソクラテスが、その当時の知の巨人プロタゴラスにアレテー(徳)に関する対話を通して、アレテー・善悪・快不快・知識の関係について議論した著作。 <コメント> アレテーを媒介にして、快不快と善悪の関係やアレテーと知識の関係性について、ソフィストの第1人者たるプロタゴラスに挑んだソクラテスの生々しいやりとりが、脚本家プラトンによって展開されます。 当初はアレテーは教えられないものだとしながら最後には、アレテーとは知識だから教えられるものになってしまったという、結

「パイドン」 プラトン著 書評

<概要> 事実に基づく世界説明から価値に基づく世界説明、イデア論の展開、自殺禁止論、魂と肉体の関係、不死の魂など、プラトン哲学の重要な論点が散りばめられた傑作。 <コメント> プラトンまたはソクラテスによる現代にも通じる重要な哲学的テーマが展開されていて、そのレベルの高さに驚嘆せざるを得ません。 個人的には 「事実による世界説明」を否定して「価値による世界説明」をはじめて主張した点で、深く納得。 ◼️「事実」による世界説明から「価値」による世界説明へ 何よりも画期的な

「ソクラテスの弁明」プラトン著 書評

<概要> 「ソクラテスの弁明」のわかりやすい現代語訳とともに、その解説や読み進めるにあたってのキーポイントなど、翻訳者の丁寧なサポートが得られる著作。 <コメント> ソクラテスの死に至る裁判を題材にプラトンが脚色したのではといわれる「ソクラテスの弁明」。 有名な「無知の知」が掲載されている著作ですが、より正確には「不知の自覚」。 ソクラテスの弁明の中では、「不知」と「無知」という言葉が使い分けられていて「不知」は価値あることを知らないという事実を表すニュートラルな意味を

100分で名著「ソクラテスの弁明」西研著 読了

哲学には2大テーマがあってそれは、 「世界原理の追求」と「価値への問い」 ソクラテスは、世界の原理は見方によって色々変わるので問い続けても意味がない。むしろ人間が問い続けるべきは「良さ」(価値)の根拠を問い続けることだと提唱。 著者自身もニーチェの著作を読んで「君が探している真理なんてどこにもないんだよ。真理を欲しがっている君がいるだけさ。君は真理を探すんではなくて、何が君に心からの悦びを与えてくれるのか、と問わなくちゃいけない」というメッセージを感じたそうです。