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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#宗教

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

ピダハン「言語本能を超える文化と世界観」書評

<概要> 言語学者でありプロテスタントの宣教師である著者が、アマゾンの狩猟採集民族ピダハンへの布教と新約聖書のピダハン語への翻訳を目的に長期間家族と共に滞在し、最終的には無神論者になった著者の記録。前半は著者の冒険記とピダハン族の文化紹介。後半はピダハン語の紹介と言語学的分析に加え著者自身の心境の変化についての記録。 <コメント>◼️ピダハンの価値観 これは数十年間にわたる著者の人生と信仰をかけた壮絶なる記録。本書はチョムスキーなど主流となっている言語学のセオリーとは異なる

「神は妄想である」リチャード・ドーキンス著 書評

「全ては遺伝子のなせる業」と謳ったリチャード・ドーキンスについて、ドゥ・ヴァールの書評の中で引用したので改めて彼の宗教関連本=無神論原理主義の著作紹介。 本書「神は妄想である」は、宗教、特にキリスト教について、科学的見地、特に進化論的見地から、ありとあらゆる方法で、キリスト教の「神」がフィクションであることを証明しようとしています。 結構分厚い本なんですが、本の半分ぐらいは真面目に、半分以降は斜め読みしました。というのも、自然科学的視点からは明らかにフィクションである「神

なんでも因果関係で考えてしまうのは? 脳科学的仮説

哲学を勉強すると「世界に普遍的な原理」はない(原理的にわからないといった方が正確か)という結論に行き着くのですが、では 「そもそもなぜ人間はひたすら因果関係を求めてしまうのか?」 とついつい問いたくなってしまいます。 その答えは、心理学的には上記のカーネマンの「システム1の働き」だという知見。 そして脳科学的には脳神経学者のデイビッド・J・リンデンが「宗教」を題材に以下のように説明しています(「脳はいい加減にできている:8章宗教と脳」より)。 (上記2冊は全く同じ書

はじめての哲学的思考 苫野一徳著 書評

「その奥義、あますところなく伝授します」というオビに始まる著作。 竹田青嗣先生の弟子の方の著作なので、竹田現象学=欲望論に基づいた、極めて簡明で実践的な哲学の本。宗教・科学・哲学の関係と違いにはじまり、哲学的思考を学ぶことによって解決できる世の中の問題が、こんなにあるんだなと実感できます。 今でもトップランクに入っている「WEBちくま」で紹介した記事を大幅修正の上、加筆した著作とのことです。 一般的な哲学書とは違って、あっという間に読めてしまいます。かといっていい加減に

カソリックとプロテスタントの教義の違い

以前の「不思議なキリスト教」の紹介でユダヤ教・イスラム教との決定的な違いとして「キリスト教には法がない」ということでしたが、 さてでは、キリスト教のカトリック(ローマの方)とプロテスタントの思想の大きな違いは何か?といったら、それは 「知性で神の存在を認識できるかできないか」 以下、平原卓先生の講義に基づく思想的観点からの整理です。 カソリックは、ドメニコ会の聖人トマス・アクィナスの考えに基づき、神は、神からの恩恵によって人間にもたらされた知性・理性によって神の存在を

21世期の啓蒙 下巻 スティーブン・ピンカー著 書評

下巻に至って啓蒙主義の理念に基づき、世界中の我々自身が普遍的な共通理解として啓蒙主義の理念を持つべきだなと確信させてくれる内容でした。 「暴力の人類史」を「20世紀の啓蒙」とすれば、本書はまさに現代人と近未来人に向けた「21世紀の啓蒙」です。間違いなくお金を出して時間をかけて読むに値する名著だし、全ての人に読んでもらいたい。そんな感動的な読後感でした。 社会の虚構としての近代市民社会の原理とほぼ同じ概念である「啓蒙主義の理念」が世界共通の虚構として、いかにこの世界を進歩さ

世界は4大文明でできている 読了

世界の人口のほとんどは、グローバルスタンダードになりうるキリスト教、イスラム教、ヒンドゥー教、儒教の各社会でカバーされている。この4大宗教をベースにした価値観を持つ4つの文明を学ぶ事で、グローバルなコミュニケーションが外国人とできるという内容。 橋爪大三郎氏は、専門的なことを簡潔に説明することに関しては本当に天才的だなあと思います。 彼の共著の「不思議なキリスト教」「ゆかいな仏教」を更に簡潔に説明しているので、さらっとした4大宗教論としても読める。 この内容に興味があれ