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思想(哲学と宗教)

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価値観の学問そのものといって良い哲学、価値観そのものといってよい宗教を勉強する事で「価値観とは何か?」に迫りたいと思っています。
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#西研

なぜ哲学を勉強しているのですか?

■他者:なぜ哲学を勉強しているのですか? ■自分:自分は、どう生きるべきか、どう生きるべきでないか?根本的に考えた上で生きたい=行動したいからです。 ■他者:その答えは出たのですか?あるいは出そうですか? ■自分:出ました。 ■他者:答えは? ■自分:「答えはありません」というのが答えです。 ■他者:それでは、哲学の勉強は無駄でしたね。 ■自分:無駄ではありません。「答えはありません」という答えが出たので、とてもスッキリしています。 ■自分:もうちょっと詳しく

「これからの正義の話をしよう」M・サンデル著 書評

<概要> 正義に関する具体的思考実験を読者とともに考えながら、これまでの既存の思想(功利主義、リバタリアニズム、カント、ロールズなど)を紹介し評価しつつ、最後にコミュニタリアニズムの正当性を主張した著作。 <コメント> 本当はプラトン関連著作を読みすすめるスケジュールだったのですが、西研著「哲学は対話する」にいたく感動してしまったので、その流れでコミュニタリアンの主張を勉強すべく、親戚が私にくれたベストセラーをさっそく読んでみました。 が、コミュニタリアニズムに触れている

「哲学は対話する」西研著:天皇制というコミュニタリアニズム

天皇制は「ハーバード白熱教室」で有名なサンデル教授など、コミュニタリアンの主張に寄り添った「共通善」に基づく政治思想であり、これら天皇制含む共同体の物語(※)は近代市民社会の原理(近代的正義)と共存できるのでしょうか? ※共同体の物語=歴史とともに生成してきた具体的な価値観 コミュニタリアニズムについて「哲学は対話する」では 社会の正義は歴史の中で生成してきたコミュニティが具体的な「善」と認めるもの(共通善)であるべきであり、歴史と具体性とを欠いた個々人の権利は抽象物に

正義の本質に基づく政治思想の評価

上記書籍、西研著「哲学は対話する」より、引き続きです。 正義の本質を精査した上で、社会主義やリバタリアニズム、功利主義など、民主主義以外の政治思想を評価すれば、自ずとその是非が判断できます。どれも非常に納得感の高い論です。 ■社会主義社会主義の失敗は、自由の権利が国家・社会において何よりも重視されるべきこと。また経済は市場経済を基本としながらそれを調整するという仕方でしか運営し難いことを私たちに教えてくれた とし、社会主義を採用したソ連や中国などの国家の能力が低かったか

民主主義の正当性とはー西研著「哲学は対話する」より

本書では「近代市民社会の原理(※)」が現時点で最も優れた政治思想だということが、前回説明した正義の「本質観取」によって結論づけられています。 ※近代市民社会の原理=著者の表現では近代的正義(民主主義の原理)。どんな人間でも人間として対等の権利を与えられて共存できるということ。しかも、その社会を自分たちの自由な責任において営むということ。万人に生産と消費の権利が保障されていること。そういう基本ルールを前提にして、互いに相手の自由を認め合うこと(竹田青嗣)。 ■本質観取に基づ

「哲学は対話する」西研著 ーサイエンスの限界を哲学が克服する

<概要> 誰にでもわかりやすいコトバで哲学の根本的意味を問いつつ、プラトン・フッサールの思想を通じて、共通了解に向けた哲学対話の具体的手法を提示した上で、分断→共存の社会の可能性を提示した画期的な大作。 <コメント> 本書には(自分にとって)特質すべき重要なテーマが満載で、かつ個人的に最も関心を寄せている「個人の虚構(=思考の枠組み)」「社会の虚構(著者は「物語」と表現)」についても言及。 とりあえず別途それは展開するとして「サイエンス」ではカバーし切れない領域、つまり価

プラトン解釈の類型 西研著「哲学は対話する」

プラトン勉強にあたって、西研最新の大作「哲学は対話する」通読中。 西研哲学は、竹田青嗣哲学と近いので「哲学的思考」はじめ、何冊か過去に読んでいます。本書は2019年に出版された最新作で結構なボリュームの大作です。いずれ全体も展開したいと思いますが、まずはプラトン関連について。 本書の第1部で、哲学対話の先例としてソクラテス・プラトンを紹介。プラトン著作は、対話による著作がメインなので、ルーツオブ哲学対話たるプラトンの思想「魂の世話」について扱っています。 その前に著者の