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書籍 めざせ!ムショラン三ツ星

ちょっと変わった本に出合った。

刑務所栄養士、今日も受刑者とクサくないメシ作ります
というサブタイトル。黒栁桂子著。

これは受刑者たちの「ウマかったっス」を目指す栄養士の奮闘記だ。
読むと、ムショ暮らしはしたくないが、ここのムショ飯は食べてみたいと思うから面白い。よく「臭い飯」と形容されるが、予算(税金!)の制約の中でも栄養価を考え、味はもちろん、「かさ」や、時として「見映え」までも考える栄養管理士の本。普段全く垣間見ることのない「中」のハナシだけに、興味がわく。

栄養管理士は献立を考え、指導するのが主な仕事で少なくとも「中」では調理師ではない(もちろんお上手でしょうけれども)。食事は彼ら自身で作るという。男子たちが繰り広げる「珍調理」に思わず笑ってしまうが、ある意味「生真面目」でもある。筆者と受刑者の「給食」を通した交流が新鮮な一冊。

受刑者への、しかも税金を投入した食事など適当にしておけ、という声はあるらしい。正直なところそう思わないでもない。
だが筆者は彼らの「ウマかったっス」を目指している。それは、職業柄単に美味しいものを作る、という以上にこの一つひとつの献立や、指導を通した交流が彼らの何らかの役に立つという確信に基づいている(そうストレートには記されていないが)。

娑婆にはもっとおいしいものがある。ここを出たらいくらでも自由に食べられる。刑務所での生活なんて彼らには黒歴史だろうし、ましてやムショメシなんて思い出したくもないだろう。そう思っていたけど、違うのかも・・・。刑務所生活の中でも数少ないよい思い出として、彼らの印象に残るような給食を出したいと思った。

本文より

彼女のプライドが感じられる。

言葉を選ばずに言えば、このメシを食うことができた彼らはある意味、幸せ者だと思う。


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