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ほんと

目覚めれば影が濃い

ふと彩ればいいと思った

無我夢中で塗りたくった

時間も忘れてどんどんと色を重ね

不気味にカラフルなのが出来た

アンバランスで醜くなった

でも皆んなそうしてるよ

直ぐに嘘だと解った

消そうとしても消えない

深く刻まれたそれらを見て

美しいと言う人もいた

では買ってくれるのか

それの答えはノーだった

幾千か過ぎた刻に

また独り現れた

これはきみ?

そうだよ

きれい

咄嗟に嘘だと言った

ほんとだよ

嘘だ

うそじゃないよ

そんな言葉を繰り返し合って

必要に食い下がらない君を見て

僕は本当だと思ってしまった

またくるね

そう言って君は来なくなった

やはり嘘だったんだ

次第に雲行きは怪しくなり雨が降る

雨でこの気持ちを共に流して欲しかったが

そんな事はなくこれは醜くさを増していく

一層の事また塗ってみようか

今度は冷静になって考えた

深く息を吸って吐くを繰り返し

心臓の鼓動を落ち着かせる

強い意志が試される

やってみよう

君に綺麗と言って貰えた

あの時の景色を忘れないように

何度も夢に見る事を繰り返す

日を重ねる毎に色とりどりになる

これからも続く新しい日が

明るいもので溢れますように

そう願いを込めて塗る

幾万と過ぎた時

解き放つ想いが遠く彼方へと

不可視の宙へと向かって飛んだ

それは一番高い所で美しく弾けた

記憶は朧げで儚くて

消えて行ってしまうものだとしても

いつどこに居たって

自分がわからなくなっていっても

君だけには伝えたい

この気持ちだけは本当だった

-完-

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