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ランチに行くのが嫌だった

葉桜の季節になった。

この季節になるといつも思い出す。

僕も、お店をやる前に、一応会社員だったことがある。

新卒で入社した会社だ。

その会社は半蔵門にあって、桜の季節になると、近くの千鳥ヶ淵〜北の丸公園あたりを花見をしながら出勤できる、文句のつけようがない一等地だった。(奇しくも今のお店はそこからそう離れていない場所になった)

桜の季節が過ぎると、見事に葉桜に変わり、お堀の周りの遊歩道は、あたかも緑のトンネルのようになった。

薄情なもので、この時期になると、すっかり人の影もまばらになって、僕にとっては、絶好のお昼寝スポットになった。

日本では、外で昼寝ができる季節は、実はそう多くはない。夏は暑いし、秋は涼しくても葉っぱが落ちてしまっているので木陰が少ない。冬は冬で寒いし。結局、桜の花が落ちた今ぐらいの時期から梅雨入りまでの、春の僅かな時期しか気持ちよく昼寝のできる期間はない。

そんなわけで、この時期の千鳥ヶ淵公園あたりには、早めに昼飯を済ませて、よく昼寝をしに来ていたものだ。


ところで、僕は

お昼に皆でランチをするのがどうも苦手だった。

別に誰か嫌いな同僚がいるとかそういうことではなくて、

皆で一緒にぞろぞろと出かけて行って、今日はどこにしようか、人気の店はどこか、あそこでもないここでもないと歩き回って、挙句の果てに、30分も待ってようやく飯にありつける、という時間の使い方が、どうにも耐えらなかった。

それならば、コンビニの握り飯でもなんでもいいから、とっとと一人で済ませて、ちょっとでもいいから昼寝がしたい方だった。

考えてみると、それは学生の頃からそうで、大学の学食でも、皆が友達同士、人数分の席を取るのに躍起になっているのを尻目に、さっさと「孤食」を済ませ、代わりに大学の近くのジャズ喫茶などに行って、やっぱり昼寝(申し訳ない・・)をする方がよかった。


今だと「友達のいない、寂しい奴」というレッテルを貼られるのかもしれないが、

当時の僕にはそんなことはどうでも良かった。(実際友達もいなかったし(笑 )


そんな習性は、社会に出ても一向に治らず、そのうち「ああ、一生一人でランチのできる環境に身をおきたい。」と、本気で思うようになっていた。


それだけが理由で、退社し、BARで働き、独立した、というわけではないが、


何事も一人であっさり済ませたいというのが、案外、僕の人生の大きなウエイトを占めているのは、事実だと思う。



そんなこんなで、


夢は現実のものとなって


今は、昼飯を一人で作って、一人で食べて、


ついでに、一人で働いてます(笑。


神保町へお越しの際は、是非お立ち寄りください。

千鳥ヶ淵からお店まで歩くと、ちょうどビールの美味しくなる距離です。

お待ちしております。


Green Lights / Huez
 VinDig
2018

(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)

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