ただ「きゅうりを切っただけ」を出せるようになったこと
うちの店には開店当初から「席料(チャージ)」というものがありません。
「なぜ?」と言われても、そうしたかったからそうしたまでです。
お店を始める以前から、「あの、「席料」ってのはズルいシステムだよね。どうも日本だけらしいよ。」なんて話はチラホラ聞こえてはいたのですが、自分で店を始めるにあたっては、「まあ、無い方がお客さんも来やすいかな。」くらいの軽い気持ちで、そうしました。
ところが、です。
やり始めてわかったのですが、このシステム、本当に経営的に優れたシステムということが改めてわかりました。
「席料」はもちろんそのままお店の「利益」になります。
もちろん「お通し(チャーム)」と称して、ちょっとしたおつまみを出すところがほとんどなので、若干の経費はかかりますが、それでもうちのような、ドリンクだけで帰られる方が多い店では、強制的に売上をあげられるこのシステムは驚嘆に価するものがあります。
もし、開店当初から「席料」を頂いていたら、今頃、都心に戸建を買って、錦鯉にエサをやりながら暮していたとまでは言いませんが、50にもなって、コンビニで肉まんを買うのを躊躇うことはなかったように思います(笑。
(まあ、あくまで「席料」を頂いても同じ客数が来店していたらの話ですが。)
今ではこのシステムを否定する気はすっかり失せて、特に席を間引いて営業しなければならない昨今のこの騒動下では、むしろ見直されるべきシステムなのかとも思っています。
それはさておき、うちの店では数年前から、来店時にすぐに出せる一品として、「とりあえず」というメニューを置くようにしています。
内容は「きゅうりスティック」や「ポテトサラダ」、「マカロニサラダ」などの一人分のサイズの簡単な一皿で、まあ、いわゆる選択可能な「お通し」の代わりのようなものです。
もともとうちの店は、BARにしては割とフードのメニューが多い方なんじゃないかと思います。
開店当初に「これからのBARは食べ物も頑張らなくては」と、無理してやや凝りすぎたフードメニューを置くようにしました。
肩肘張ってたんでしょうね。
ところが、このフードメニューが、いかんせん給仕に時間がかかりすぎるきらいがあります。
お客さんを「お待たせ」てしまうんですね。
でも、今ではそれぞれのメニューにファンも付いてきていて、なかなか止めるわけにいかなくなっています。
そんな「お待たせ」状況を打破してくれるのが、この「とりあえず」のメニューです。
最初は、そんな簡単なものを出してもいいものだろうか・・、と思っていたのですが、やってみると、意外に好評で、飲み食いって、やっぱり味だけじゃなく、タイミングが重要なんだな、ということが良くわかりました。
それにしても、肩肘張って、「凝ったものを出さなければ」と思っていた開店当初からすると、ただ「きゅうりを切っただけ」のメニューを出せるようになるなんて、随分図太くなったもんだなと思います(笑。
でも、そんなんで、お客さんには結構喜んで頂いております。
ビジネスって面白いですね。
ちなみに、きゅうりには「いかのこうじづけ」に使った、「麹味噌」を添えています。
食品ロス対策にもなっています。
神保町にお越しの際は、是非お立ち寄りください。
「きゅうりスティック」、ビールと一緒にすぐお出しします。
neon lights / idealism
idealism
2017
(本文の最後に、お店でよくかける音楽を紹介しています。お家でお酒を飲まれる際に是非どうぞ。今度お店に聴きに来てくださいね。)
サポート頂いたお金は、お店でかける音源の購入に充てさせていただきます。