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コロナウイルス連作短編

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2021年11月の記事一覧

コロナウイルス連作短編その134「辞書で調べてみよう」

 だけども美谷ひかるは母親の美谷亜子に呼びとめられる。 「散歩、いくの?」  重そうなお腹…

コロナウイルス連作短編その133「幽霊の力」

 にも関わらず、杯芽冴木は祖母である杯芽貞代の傍らで本を読み続けている。彼女の命、その灯…

コロナウイルス連作短編その132「救えねえよ」

 卓柿絋は部屋でハリウッド・ザ・コシショウというお笑い芸人のYoutube動画を観る。彼は“有…

コロナウイルス連作短編その131「左スワイプ右スワイプ」

 土草入間は地下鉄に乗りながら、Tinderを見る。そして次々と左スワイプを行い、目の前から女…

コロナウイルス連作短編その130「眼球の高速回転運動」

 軽部朝坂はソファーに寝転がり本を読んでいる。『消失の惑星』という海外文学だった。ロシア…

コロナウイルス連作短編その129「お前も同じLGBTQだろ」

「あいつらの家にお呼ばれすんの久しぶりだな」  三原吉名が横を歩く妻の三原李枝子にそう話…

コロナウイルス連作短編その128「ドーナツの入ってる箱みたいな」

 松嘉良三好は児童館の前で来客を待つ。三好は人類学を学ぶ大学生で、今年からここで時々ボランティアとして働いている。ある女性から電話を受けたのは1週間前だ。何でも彼女の姉がこの児童館をリノベーションしたそうで、一度伺ってみたいのだという。電話を受けたという縁から、三好が彼女の応対を行うことになったんだった。  午後2時、待ち合わせの時間ぴったりに女性が現れた。ふくよかな体型で、おそらく脂肪で目元が細まり、常に柔らかな慈愛の笑みを浮かべている風に見える。穏やかな黄土色のコートを身

コロナウイルス連作短編その127「ギロチンを落とす」

 ニュースである日本人バレリーナが特集されている。芝浦ついは現在アルゼンチンのバレエカン…