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コロナウイルス連作短編

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2021年8月の記事一覧

コロナウイルス連作短編その111「ぼくもクラゲのように」

 タマラ・ハルトゥニアンは大手町の丸善で三国武玄と落ちあう。2回目のデートだ。タマラは阿…

コロナウイルス連作短編その110「防音室つきマンションのためのドローイング」

“幻滅と希望と信頼を同じひとつのものとして数えること。幻滅を必要とする信頼と希望があると…

コロナウイルス連作短編その109「SFみたいな夢を見た」

 SFみたいな夢を見たの。  伊坂真宮子がそう語る。  地球から何光年も離れた、今の人が何度…

コロナウイルス連作短編その108「痕跡としての可能性」

 馬橋霧生は家に帰ってくるが、恋人である座敷伴の“おかえり”という言葉が聞こえてこない。…

コロナウイルス連作短編その107「今日は俺にとって最高の1日だ」

 本多博男は、風呂に一本の毛が浮かんでいることに気づく。それは白髪だった。明らかに博男の…

コロナウイルス連作短編その106「偉大なる男」

 うだるような暑さに、思わず岡拓也は目覚めてしまう。空には枯れたラベンダーのような禍々し…

コロナウイルス連作短編その105「キャラメルが口でとろけてる」

 朝食を終えたあと、仕事に出かける恋人の六路萌奈を、寺田風午は玄関で見送る。彼女が彼の左頬に軽くキスをし、彼が彼女の額に軽くキスをする。 「今日は有沢とセックスしてくるから遅くなるよ」 「オッケオッケ」  そして萌奈は部屋から出ていく。  しばらくタブレットでニュースを読んだ後、風午は仕事を始める。来年冬頃に日本で発売されるアメリカのRPG、その翻訳だ。学校で負け犬と呼ばれる少女が、突如学園の女王であるビッチとともに古の悪を退治する旅に出るというものだ。負け犬主人公、女王ビッ