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2022年 新年明けましておめでとうございます

新年明けましておめでとうございます!

今年は年始から新聞報道が相次ぎ、1月3日付けで東京新聞と毎日新聞のそれぞれ朝刊に私のインタビューや千葉エコ/つなぐファームの記事を掲載していただきました。

SDGsやESG投資、脱炭素など様々な文脈でソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)に対する期待が集まっていることを感じる年始にあたって、今年は何に取り組んでいくかを少し書いていきたいと思います。

今年は具体的なアクションに踏み出す年へ

昨年は新たな政府計画・政策目標の策定が相次ぐこととなり、2030年や2050年に向けた気候変動対策・再生可能エネルギー導入目標が一新されました。その流れから、今年は中長期の政策目標を実現していくための具体的な手段を明確化し実行していく1年になるのだろうと考えています。

この点はこれまで同様に政策提言のアクションを重ねていくと共に、政策側でさじを投げてしまった部分を民間側でどうフォローするかの仕掛けをする必要があるだろうと思います。具体的には、以下の3つの分野です。

1.再生可能エネルギー政策全般

再生可能エネルギーの視点からは、まず2030年の電源構成比を確実に達成していくためのロードマップを固めていく必要があります。昨年ASPEnとして表明した第6次エネルギー基本計画に関する意見で詳しく示しましたが、今年から導入されるFIP制度は新たなエネルギー需給見通しの達成と整合を図る検討が全く行われておらず、もはや開始前から死に体となっています。

FIT/FIP制度の運用・検討状況からも経済産業省・資源エネルギー庁が再エネ普及拡大に投げやりな姿勢であることが浮き彫りになっており、2030年のその先も見据えるとエネルギー政策の実施体制そのものを見直す必要が出てくるだろうと考えています。

また、再生可能エネルギー電源の話は盛り上がっていますが、再生可能エネルギー熱の議論が第6次エネルギー基本計画でも置き去りになってしまっており、国内の最終エネルギー消費の70%以上を占める熱・燃料部門の電化による再エネ転換を進めていく具体的な計画作りも必要です。

そして、この評価を進めると2030年のエネルギー需給見通しにおける電源構成の想定が電力需要の大幅な増加によって崩れることになるため、それを見越したアクションも考えていきます。

2.太陽光発電産業の復興、再国産化

再生可能エネルギーのうち私が密接に関わっている太陽光発電に目を移すと、これまでも再三述べてきたように2030年に向けた気候変動対策として再生可能エネルギーの普及拡大を進めるに際して、最も貢献していくエネルギー源が太陽光発電です。来年度から本格的に動き出すゼロカーボンシティの取り組みの中でも、国内各地で普遍的に導入できる再生可能エネルギーとして太陽光発電が再評価されることになるでしょう。

一方で、足元では太陽光パネルを始めとする太陽光発電関連資材の急激な値上がりが続いており、FIT制度で漫然と前提に置かれてきた「再生可能エネルギーのコストは経年で必ず逓減し続ける」という想定が崩されました。

これは資材の多くを輸入に頼る状況からも必然であり、世界各国が再生可能エネルギーの導入に注力する中で、太陽光パネルが戦略物資としての価値を持つようになっていることを認識する必要があります。

今後、最低でも2050年に400GWdc以上の太陽光発電を国内で導入していくことを念頭に置くと、概算でも30~40兆円分の太陽光発電資材が必要となります。年間1兆円以上の市場になるので、この大半を輸入に頼るという状況のままで放置するべきではなく、再国産化に向けた産業政策の実施を速やかに進めなければなりません。ここは私としても今年の注力分野の一つです。

3.ソーラーシェアリングの足場固め

太陽光発電の中でも期待が高まるソーラーシェアリング(営農型太陽光発電)ですが、FIT制度の特定営農型太陽光発電の影響や、大手企業を中心とした再生可能エネルギー電源確保の動きが広がっています。時間軸としては2023年頃までが様々な準備期間となり、その先で大きく伸び始めることになるというイメージを持っています。

2030年までに必要となる再生可能エネルギー電源目標から逆算すると、ソーラーシェアリングの導入量は最低でも13.7GWdc規模が必要だと試算しています。ただ、これは他の再エネ電源種が目標を順調に達成した上で、原子力発電も政府計画通りに再稼働するという前提での太陽光発電目標分からの逆算なので、それらが崩れることを想定したプランを念頭に置くと昨年ASPEnで表明した45GWac(1,000億kWh)が最大値です。

数字だけ見ると膨大なことになっていますが、原子力発電所10基程度の脱落(再稼働遅延・不能)、輸入資源バイオマス発電の脱落、洋上風力発電の計画遅延といった要素を想定すると、単純に1,000億kWh程度を太陽光発電でカバーする必要があると試算しました。それだけの積み上げを受け入れられる余地は、ソーラーシェアリングしかないだろうという見立での想定が上記の数字です。

こうした導入量を積み上げる仕掛けはここまで述べてきた1や2に含めてとなりますが、そんな普及拡大にも耐えうるソーラーシェアリングの足場固めという点では、事業計画から設計・施工に至るまでのガイドライン作りが重要です。昨年11月に暫定版が公表された「営農型太陽光発電の設計・施工ガイドライン」が、その第一歩となりました。

こちらは引き続き実証試験等が重ねられており、2022年度末には試験内容を踏まえたバージョンが公開予定となっています。私も専門委員として引き続き関わっていきます。

他にも、農林水産省が地域における営農型太陽光発電のモデル検討事業を準備しており、こうした取り組みも踏まえて2022年は「普及していくべきソーラーシェアリング」のイメージを固めていく1年にしたいと思います。

目的と手段を見誤らずに前へ進む

最近は「SDGsのファッション化」が問題視される傾向も出てきましたが、日本の政治や企業における共通の課題として「目先ばかりに囚われて本質を見失う」傾向を引きずっているように思います。

気候変動対策や再生可能エネルギーの導入などは全て、より豊かで持続可能な社会を次の世代に繋いでいくための手段であり、それ自体を目的として捉えると色々なものを見誤ります。

私がソーラーシェアリングに注力しているのも、資源エネルギー的にも経済的にも農業そのものを持続可能な産業としていくためであり、それがなければ早晩私たちの社会は立ちゆかなくなるだろうと思うが故です。

気候変動が国家安全保障の問題であると捉える動きも出てきましたが、エネルギーと食料の充足を確保出来なければ必ずや人類社会に破局的な結末を招きます。そうした未来を回避し、現役世代として将来世代への責任を果たすために、今年も邁進していきます。

本年もどうぞよろしくお願いいたします。

2022年 正月


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