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もうちょっと早く知りたかったわ

今住んでいるカナダにはFamily doctorと言われるかかりつけ医がいて、基本的には同じ医者が診察をしてくれる。俺の病気や健康状態の履歴だとか最後に検診してから時間経ってるから調べておきましょう、みたいなことを向こうから連絡してきてくれる。非常に有難いシステムである。特にこの有難さを特に実感した出来事が、俺にASD(Autism Spectrum Disorder)『自閉症スペクトラム障害』があると発覚した事だ。

俺には双子を含めた4人の息子がいるのだが、そのうちの一匹(大猿B)がよく肌にアレルギー反応を起こす。カナダのアルバータ州は湿気が低く肌の乾燥が凄いので、特に冬は子供に保湿クリームを塗っている。大猿Bがまだ4歳くらいの時だろうか、たまたま買ってあったココナッツ入り(成分か香りかは覚えていない)の保湿クリームを身体中に塗りたくったところ、アレルギー反応が出た。すぐに使うのをやめたのだか、嫁とは「なんだろうね〜。」なんて軽く話していた。

それからしばらく経って大猿Bがまたアレルギー反応を起こす。クリームは塗っていない。なんだ?なんだ?と嫁と話しているとココナッツ入りのクッキーを食べたと判明。ここに来てやっと点と点が繋がり、ココナッツからアレルギー反応があるのでは?と考えるようになる。何度か同じような現象にならないと危機感を覚えないダメ親なのだろうか。

その大猿Bも次の誕生日で10歳になる。危機感を覚えない程度にアレルギー反応は度々出てくるのだが、何を思ったか嫁が猫を飼いたいと言い出した。結果コーニッシュレックスというアレルゲン物質の生成が少ない種類の猫を飼い始めた。猫が来たその日から大猿Bの耳がおかしい、鼻水はでる、目は痒いと大変な事態に。取り敢えずは様子見と言うことだったが、症状が改善されるまでに1ヶ月はかかった。改善された理由は不明なまま、もしかしたらちょうど同じ時期に花粉が多くなったのではないだろうか?などと的外れな事を言っていた。

若干の危機感を覚えたダメ両親は、また同じようなことが起きた時に行動がとりやすいように、アレルギー専門医に診てもらうことにした。こういう時にかかりつけ医の所に子供を連れて行くとアレルギー専門医を紹介してもらえる。

かかりつけ医に会う予約の日の朝、一番下の子(小猿、3歳)の体調が悪い。こういう日に限ってこんなことが起こるんだよねー。嫁は子猿と一緒に家にいることになり、俺が大猿Bと残りの子供(大猿Aと中猿)を連れてかかりつけ医のいるクリニックに行くこととなる。

かかりつけ医の場所に着き、ドクターが大猿Bと話し、その後俺と話す。子供が椅子に座っていたので俺は立ったまま話していた。ドクターは陽気な人で子供用の冗談を加えたトークをしていた。その後もいろいろ話して大猿Bをアレルギー専門医に取り次いで貰えるとの事。何の問題もなくその日は終わった。

その1週間後に大猿Aがかかりつけ医に行く予定になっていた。その時は嫁が連れて行くことになる。大猿Aは家の中でもつま先立ちをしていたりイライラしていると家の中をぐるぐる歩き回ったり、メルトダウン的な事が良くあり、精神的な何かがあるのではないかと思い一度かかりつけ医に相談してみようということであった。かかりつけ医から嫁と大猿Aが帰ってくると、嫁がなにやらニヤニヤしながら話しかけてくる。

嫁は日系(2世)のカナダ人であるが100%英語で話す。楽しそうに話しているのだが何やら聞き慣れない単語があり、ちょっと理解しにくかった。初めてその単語を聞いたときは「アスバーガー」と聞こえた。アス(ass)はお尻の事で、まぁこっちの人でも敢えてその単語を使わない人もいるし、要はよろしく無い言葉ってことですわな。お尻バーガーって。

結果、大猿A(と大猿B)にはアスペルガー症候群の傾向が見られるとのこと。まぁ、なにかはあるだろうと予想はしていたので驚くことはなかった。しかし驚いたのはその後である。

順を追って話そう。

元々Asperger Syndrome (アスペルガー症候群)は一つの独立したものであったが、現在はAutism Spectrum Disorder (自閉症スペクトラム障害)を略してASDに含まれる。ということで、ここからはASDで統一します。

スペクトラムとは可視光のような一定の区域を指すようで、虹を見ると色が分かれているように見えるがはっきりとした線引きは無いとの説明を受ける。要は自閉症の中にもピンからキリまでの症状があり、線引きをしてここからがアスペルガー、ここからが自閉症と言うのが非常に難しいと言うことだ。自閉症の中にも症状が比較的軽い(こういう言い方は違うのかもしれないが)ものがあり社会にうまく適応できる場合もあれば、社会での生活が困難な場合もある。

カナダでは約1~2%の人がASDと診断されているらしい。そしてASDは先天的な要因が大きいということ。つまり親から子へと遺伝するということだ。ここで嫁がニヤニヤしていた理由がわかったと思う。もちろん、かかりつけ医は嫁に子供のことも聞いたのだが、それよりも多くの『俺』に関しての質問をしていたようだ。

人と話す時に目を見て話すか
友達と出かけたりするか、それとも一人で居るのを好んでいるか
休みの日は何をしているか
感覚的な偏りがあるか
話を聞いていると思っていたら全然聞いていなったことがあるか
話す時にジェスチャーを使うか
冗談は通じるか
笑いのツボが人とは違うか

などなど、俺に関しての質問をした後かかりつけ医は、嫁と合う前の週に俺と会った時にASDっぽいな?と考えていたらしい。そして今回子供のことを調べに行ったはずなのに、俺のことまで判明してしまった。

その後ASDについて調べてみたら、これもあれもと該当することが多いのである。過去を思い出したり、現在の状況を考えれば考えるほど、なるほどな…というところで落ち着ちつきました。

かかりつけ医ってのはいいもんだね。笑

ASDだと認識できたことにより得たのは『安心』でした。いままでなぜこれが出来ないのか、人のように出来ないのかと考えていた。

諦めがつくし、原因もわかった。ただ、それを言い訳にする事をしたくはない。まぁASDであろうがなかろうが、今まで生きてきたのだから大丈夫であろうということだ。

ネットで調べていて良く目にするのは「俺ASDだから〇〇」「俺ADHDだから〇〇」と何か起こるたびに言い訳をして、周りの人に納得してもらおうとする行為だ。俺は周りにいる人にASDだと公表するつもりもないし、それを言い訳にするつもりもない。始めに言った通りASDには千差万別の症状が見れる。俺は人のことをとやかく言うつもりはないが、人として成長していきたいと思っている。

ASDが苦手とする部分は対処する方法を予め決めておくとか、色々と対処法が確立しているとのことだ。ASDであるからこそ俺という人格があるわけで、それが俺を作る個性であるということだ。

ASDだからこそ出来ることもあるかもしれないし、ASDに向いている仕事もあるだろう。36歳になって気付くなんてかなりしんどいが、人は何歳になろうとも新しいスタートを切れるし、切れるべきだ。

ただ、もうちょっと早く知りたかったよ。今年で36になったでな。もう立派なおっさんだよ。笑

ちなみにその後大猿Bはアレルギー専門医に診てもらおうということになった。結果として大猿Bには猫にだけ軽度のアレルギー反応があることが判明した。花粉やその他30種類以上の中から反応があったのはそれだけ。良かったけど、猫アレルギーだけって。数あるうちから猫だけ…。猫飼っちゃったよ。アレルギー専門医が言うには、耐性がつくこともあるとの事なので、そうなることを願うばかりです。


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