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(超短編小説) UFOからUAPへ

   去年の師走の月初頃、海岸線の直線道路でUFOを見た。午後3時頃だ。
最近、UAP(未確認空中現象)に呼び名が変わったようだが、現象Pというより、やはり、物体Oだというのが実感だ。
 見た瞬間は、ドラム缶が浮いてる?と思った。しかし、その物体は銀色に鈍く輝き、最上部は自らが放つ白い光の中にあって見えなかった。引き潮の波打ち際の中空に居たあの物体は、いったい何だったのか。飛んではいないから、Fではない。未確認空中物体=UAOとでも云えばいいのか?ぅあぉ?

 車を止めてスマホで動画を撮れば良かったと思う。その時は一瞬、物体に見とれている間に車が中央線をはみ出して、対向車とぶつかってしまうのではないかという危惧が浮かんでしまい、視線を正面に外してしまった。幸い、車線内を真っすぐ走っていた。対向車はいなかったし、後続車もなく、歩道を歩いてる人もいなかった。その時その空間には、運転中のオレと銀色のドラム缶しか居なかったはず。だが、視線を中空に戻した時には、すでにそこには何もなく、ややくすんだ曇り空と、海岸にせり出した緑の稜線だけが取り残された。
 やつは消えた。ほんの、数秒の出来事だった。

 「この前さ」
 オレは、友人達にこの体験を話してみた。
 「実は、俺も見たことがある。光が夜空をす~と走ってさ」
 「それ、流れ星じゃん」「へへ、バレたか」
 まともに聞いちゃぁいない。
 「オレは、部屋の隅でカラスがカ~カ~鳴いてるのを見たよ」
 大丈夫か?話の主旨が変わってるんですけど。
 「ほんの数秒って?実は数時間たってて、宇宙人に誘拐されてたりして。   首の後ろあたりに、なんか変なしこりがないか?取り出さないとやばいぞ」
 いやいや、話が飛びすぎててヤバイっす。思わず、首の後ろ触ってしまったじゃないかぁ。
 
 こいつらに話しても無駄だった。オレは、ドラム缶型UFOを検索した。意外と出てこない。古くは、フライングソーサーからアダムスキー型。最新は三角形のTRー3Bで、米軍製だという話もあるらしい。
 似ていたのは、茶筒型UFOだ。自衛隊の2機の戦闘機の間を飛んでいたという。しかし、航空力学的にこの形でマッハ1で飛ぶのは、空気抵抗でつぶれてしまうから不可能だという。瞬間移動の繰り返しなら可能だ、と。可能っても、人類は不可能でしょうに。あっさり、地球外生命体を認めてますよね?
 え?人類は宇宙人が作ったって?神様は、実は宇宙人なのか? 
 え?幽体離脱で過去に戻れる?どゆこと?
 え?UFO基地が地球の深海にある?まじですか?
 え?え?え?

 1か月がたった。新しいカレンダーをめくって気づいた。年明け早々、昇進試験があるんだった。次々と押し寄せるネット情報の波にのまれて、すっかり忘れていた。ぅあぉ!
 当然、試験は不合格。オレの将来は未確認のまま、未来という四次元の空中に放り出されるという現象が起きた。結局、オレ自身がUAPなのだ。
 あの銀色ドラム缶は、そのことを警告しに来たのかもしれない。
                                                 
                             (了)



 

ツリバナの実
開くとUFO!

 

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