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英国・・・イングランド・スコットランド・アイルランド・ウェールズのロックシーンについて SAULT 『Untitled (Rise)』『Untitled (Black Is)』Part7

前回までの6回で、いわゆる著名・有名バンドについてを書いてきた。今回からは、比較的にスモールマーケットで、インディーで、草の根レベル、『これからを背負って立つ』存在について書いていきたい。

とはいえ、耳敏いかたならすでに知ったバンドが多くなるので、そこはご了承を。

ということで、今回書くのは、SALUTについて。様々な理由で、短い記事です。

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先に申し上げておきたいのだが、SAULTは2021年の3月の時点で、メディアなどでのインタビューには全く答えておらず、まったくもって謎に包まれている状態だ。

リトル・シムズの作品に参加していたディーン・ジョシュアを含んだ3人組、ボーカルにローレット・ジョサイア、マーキュリー賞を受賞したマイケル・キワヌーカの2人がゲストボーカルとして加わっている、それくらいの情報しかない。これら以外のことはほとんど推測された情報だと言っていい。

メディアに出てきて自身らをPRするか、SNSを通じて公に話すか、いやそれらを見たとしても「確実な情報」として捉えるのが難しくなった社会の中で、彼らの秘密主義な振る舞いは、転じて神秘性をもった音楽としてリスナーに届くだろう。

とはいえ、より確実な情報がある。

今作でのグルーヴィでスムースなファンクサウンドは70'sのフィラデルフィア・ソウルやディスコの煌びやかさ。マッシブ・アタック、トリッキー、ポーティスヘッドへと連なるヒップホップ的サウンドメイキングや硬質なビート感・スローなBPM。アフリカン・ミュージックめいたチャントやソウルミュージックライクなコーラスワーク。それらが彼らの作風だということだ。

この2作はもとより、前年の2019年に発表した『5』『7』の2枚からも伺えるサウンドであり、よくよく聴いてみると濃厚かつ多彩さがあり、それらがシンプルなR&Bのサウンドスケープとしてまとまっているのだ。

ちょっとだけ大きく言ってしまえば、この50年前後に渡るブラック・ミュージックのエッセンスが今作にはグッと凝縮していると言ってもいいくらいほどか。温故知新、アーカイブ性、これもまたネット時代がゆえに生まれえたコレクティブな側面を非常に強く出ているように感じる。

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もう一つ確実なのは、この2作はBlack Lives Matter運動に呼応する形で制作された作品だと言えること。

トレイボン・マーティン、エリック・ガーナー、マイケル・ブラウンらといった2010年代前半における事件を通じても、アメリカを中心にして世界的にデモ活動が活発に起こった。2020年5月には、米ミネソタ州ミネアポリスでアフリカ系アメリカ人のジョージ・フロイドが警察官の手によって殺害された事件を端を発し、前後数か月内にブリオナ・テイラー、アマード・アーベリー、ジェイコブ・ブレークら3人の事件が続けて発生、コロナ禍という世界史にも残るであろうパンデミックのなかにあっても大規模なデモ活動が多発した。

ということで、Kendrick Lamar『To Pimp a Butterfly』やD'Angelo『Black Messiah』といった作品群、2020年で言うならばBeyonce「BLACK PARADE」やLil Baby「The Bigger Picture」やTerrace Martinによる「Pig Feet」やRun The Jewelsの「Walking in The Snow」など、枚挙に暇がないほどにBLM運動とリンクした楽曲とメッセージが届けられた。

特に2020年は自宅滞在を余儀なくされる状況が続いたこともあって、タイムリーな形で楽曲がリリースされることが多かったようにも思う。

SAULTがメッセージは、ヒップホップのようにヒネられたストーリーテリングではないものの、それが故にストレートで直截的だ。シンプルな単語で構成された歌詞で理解しやすい。

音楽、言葉、その2つの裏に潜んでいる多岐に渡るナラティブとその深さは有り余るものだが、シンプルであり、強烈だ。

シンプルに聞こえるサウンドと言葉、だがそれを紡ぐ演奏と声には、複雑に絡み合った思想と感情が読み解けるのだ。

Black is safety
Black is benevolence
Black is a lifeboat after an SOS
Breaker, breaker, all clear
Black told ya it's all gonna be okay in the end
Black is Granny
Black is Aunty
Black is, "There's still meat on that bone, lil' girl"
Am I eating wrong?
「Out The Lies」
We are dying,
it's the reason
we are crying
We are crying
But we will never show fear
Even in my eyes
I will always rise
In wildfires
「Wildfires」
We're moving forward tonight
Gotta fight, gotta fight
We won't back down tonight
Gotta fight, gotta fight
Got to stay, even when they're (Wrong)
Got to stay, even when they're (Wrong)
Got to stay strong, even when they're (Wrong)
Got to stay, even when they're
「Storng」
Don't need a hero anyway
Although I really like your stylе
Don't need a hero anyway
Even though you changed my mind
'Causе I needed you yesterday
But again, you weren't around
'Cause I needed you yesterday
But again, you weren't around
「Free」

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