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モーショングラフィックステンプレート(MoGRT)販売で生きていけるようなった話①

自己紹介

grape design と申します

初めまして、業界歴約10年 YouTubeを中心にロゴ・モーション(オープニング・アイキャッチ・テロップなど)を制作しております grape design と申します。掛布雅之さんやヘラヘラ三銃士さんなど担当させて頂きました。
ポートフォリオはこんな感じです。


これまでテレビ番組をメインに制作しておりましたが、最近はYouTubeに力を入れております。

また、映像編集で使うテロップやタイトルのモーション素材であるMoGRTを、いわゆる素材サイト(Adobe Stock等)に登録して販売しております
1年ほど前にMoGRT販売を始め、日本人では数少ない(?)Adobe Stock Motion Graphics Template Contributorとなりました。

MoGRT販売の状況

まず、MoGRT販売の状況を紹介いたします。
月ごとの波もありますが、初めて1年ほど経過した現時点で(実際は家族もおりますが)一人暮らしであれば十分MoGRT販売だけで生きていくことができる程度の収益を得ております。
詳しくは次の記事で紹介しますが、主な売上はAdobe StockとMotion Elementsでの販売となります。
既にモーションデザインのスキルをお持ちの方にとっては大変コスパの良いビジネスだと思いますので、是非検討してみてはいかがでしょうか。

MoGRTとは

Aeのリッチな表現をPrで使用する

そもそもMoGRTとは何かというと、After Effectsで制作されたリッチなテロップやタイトルアニメーションを、Premiere Proで文字やカラーを編集して使用できるようにする機能で、正式名称はモーショングラフィックステンプレート(Motion Graphics Template)といいます。拡張子は.mogrtです。

MoGRTを使う(Premiere Pro)

MoGRTを使うのは簡単です。
以下の動画が大変わかりやすいため、興味のある方は是非見てみてください。(動画主様に許諾を得ております)

編集できる項目はMoGRTごとに違いますが、基本的には文字とカラーは編集できると思います。After Effectsでしか実現できなかったような表現がPremiere Proで簡単にできるということは革命のように感じます。
注意点としては、動作が軽快とは言えずプレビューに時間がかかることもしばしばありますので、ある程度のPCスペックは必要です。

MoGRTを作る(After Effects)

MoGRTはAfter Effectsで制作します。
作り方は需要があれば今後少しずつ解説できたらと思いますが、通常のモーションデザインの作業と違い、エクスプレッションを多用することになります。

例えば
「テキストの長さに応じてベースの長さを変化させる」
「長方形の角丸をスライダー制御できるようにする」などなど

このあたりのエクスプレッションはネットで調べても中々出てこないことが多く、ある程度自分で考えて記述していく必要があります。
普段は使わない「チェックボックス」「スライダー制御」「ドロップダウンメニュー」などどいったエフェクトも多用します。

また、基本的にプラグインは使用せずAfter Effectsの基本機能のみで制作することとなりますし、ほぼリアルタイムでプレビューできる(少なくともAfter Effects内では)ことが必要になってきます。

このようにいくつかの制約の中で制作することとなりますので、どんな表現でも可能という訳ではありません。

MoGRT販売を続けている理由

私は他のデザイナー様と同じく、ロゴやモーションデザインの仕事を依頼をもらって制作しております。
そんな中、なぜ私がMoGRT販売を続けているか紹介したいと思います。

ストック型ビジネスであること

MoGRT販売は、誰かに仕事を受注して、依頼されたものを作る一般的なデザイン系のビジネススタイルと違い、自分で商品を制作してお客さんに販売するビジネスです。
最初はとうていコスパが良いようには思えませんが、少しずつ自分の商品やスキル(資産)が蓄積されていき、収穫できる量(収益)が増えていくのはとても楽しいですし、どんどん愛着が湧いていきます
労働時間を報酬と交換しているわけではないので、収益に対する「相場」なんてものはなく上限なく(実際は甘くありませんが)成長していけるところも魅力的です。

どこでもいつでも作業できる

誰かに受注して行うものではないので、完全に自分のペースで作業できますし、ノルマも営業活動も不要です。
ストイックに頑張ったとしてもすぐに収益に繋がることは少ないですが、1ヶ月サボっても前月とあまり変わらない収益が得られます。
作業場所も時間も自由ですので、プライベートや別のビジネスとの両立に向いております。

デザイン業務(本業)とのコンビネーションが最強

とは言っても、私はプラグインも躊躇なく使い制約なく表現して、目の前のお客さんに喜んでもらいたいというのがデザイナーとしてやりたいことです。ここ1年、これまで通りデザイン受注も行いながら、ストック収入を得てスキルアップをしていくというスタイルが私の中でも定着してきました。

例えば通常通り受注したデザイン業務のフィードバック待ちの間(数日待つこともありますよね)などにMoGRTの作業や研究をしたり、MoGRTで身につけたエクスプレッションを、通常のデザイン業務に活かしたり。
「今月は依頼がない!」と焦ることもありません、そういう時はMoGRT制作に集中するチャンスと考えれば良いのでメンタル面も安定します。
このように、デザイン業務とMoGRT制作は、ビジネススタイル的にも内容的にも、非常に相性が良く相互に良い影響を与えると感じております。

一定のハードルを超えた後のコスパが良い

今ではしっかりと収入の1つの柱となっているMoGRT販売ですが、
最初の数ヶ月は0円も当たり前、1000円行くだけで喜んでおりました。
始めた当初は、「まぁ稼ぐのは難しいか」「でも面白いからやってみる」くらいのカジュアルな気持ちで少しずつ進めておりました。
少し慣れてきた頃は、「Adobe Stockに自分の商品が並ぶ」ことを目標にして、収益にはあまり期待しておりませんでした。
しかしMotion Elementsの定額制プランに入った頃から収益があがり始め、Adobe Stockに入った頃にそれなりの収益になりました。

始めた当初は、コスパが悪いところではありませんでしたが、収益のあがるサイトに登録できて、自分の制作効率もあがってきた今では大変コスパの良いビジネスとなっております。

実際に、私がMoGRTの制作にかけている時間は、1日3-4時間程度です。最初は1つ作るのだけでもかなり時間がかかっておりましたが、最近は2,3日に1つ制作しております。おおよそ今の収益と販売個数から、商品1つあたり1年の売上を予想すると、かなり収益性が高いことがわかります。
次の年も、その次も年もその商品は消えることなく販売し続けますが、どこかでMoGRTの仕様変更やデザイントレンドの変化により売れなくなっていくだろうと予想しておりまして、なんとなく1年間を1つの区切りとしています。

以上、色々と見返してみますと、既にモーションデザインのスキルをお持ちの方にとっては改めてコスパの良いビジネスだと思います。

MoGRT販売に必要なスキル

私のライフスタイルや性格にとてもマッチしたMoGRT販売ですが、残念ながら誰でも上手くいく程簡単なものではありません。
「モーションデザインのプロ」が以下の中で不足しているところを勉強して継続的に続けることで、安定した収益が得られるようになると思います。

モーションデザイン

そもそも優れたモーションデザインを制作できることが前提となります。
正直にいうと、デザインが優れていなくても売れている商品はありますが、
そういった方のポートフォリオでは、メインの収益の柱となるAdobe Stockの審査を通過することが難しいかと思います。

エクスプレッション

MoGRTはユーザが様々なパラメータを編集できるように制作する必要があります。そのためエクスプレッションを使用していくのですが通常のモーション制作では使わないようなスクリプトを大量に書くことになりますので、ある程度の勉強は必要となります。

UXデザイン

MoGRTはユーザが編集する操作パネルも制作します。正直なところ、この操作パネルは購入するまで見られないので売上には関係しないかもしれませんが、わかりやすいUX設計をすることは商品のクオリティに直結しますし、Adobe Stockの審査でもよくチェックが入ります。

マーケティングスキル

他のビジネス同様、「どんな商品が売れるか」がとても重要になってきます。必ずしもかっこいい商品や複雑でリッチな商品が売れる訳でもありませんし、販売サイトによって売れる商品は変わってきます。
また、何を売るかに加えて、「商品名」「タグ」の設定は検索ワードに直結するので大変重要です。Adobe Stockでは全て英語で設定するため、英語圏の編集者が検索しそうな自然なワードを研究する必要があります。

英語力

商品名、タグ、商品説明、プレビュービデオなど、商品にまつわるものは全て英語で表記することになります。繰り返しになりますが、英語圏の編集者が自然に使っている英語を研究する必要があります。
「ゆるふわ」「キラキラ」「シアー」など国内ではよく使うデザイン用語を、英語で自然なデザイン用語に変換するのが大変難しいです。
また、提出ガイドラインや審査員とのやりとりも全て英語です。私はDeep Lを多用しながらなんとか乗り越えてきました。

税務等の知識

こちらはスキルではありませんが、必ず苦労する点です。
販売サイトに登録する上で本人確認や税務情報を提出する必要が何度あるのですが、アメリカの税務用語なのでよくわかりません…必死に調べた結果、たいていはマイナンバーで解決しました。
確定申告の際も苦労します。収益はPayPal等でドル払いですし、入金タイミングは販売サイトごとで様々です。いつの為替で計算すれば良いかもわかりません。私は結局税理士の方に相談して計算することにしました。

MoGRT販売がさらに伸びる要素

続いて、MoGRT販売がさらに伸びるであろう要素を紹介します。

Adobe Stockの縦長動画・日本語への対応

詳細は別記事で紹介しますが、現在収益の柱であるAdobe Stockは縦長動画や日本語に対応しておりません。これらの対応が始まるとさらに1.5倍くらい伸びるのでは…と想像します。
実は、以前Adobeへ対応予定を問い合わせたところ、かなり前向きな返事が返ってきました!特にスタート時はライバルも少なく、商品が「人気順」に顔を並べることができれば、長い期間安定して売れ続けると思います。

Adobe StockのUI改善

これもAdobe Stockの話ですが、現在のUIですとMoGRTの素材は大変見つけづらいところにあります。映像編集者でさえ、ベクター素材や実写素材を探すサイトとして使っていてもMoGRTがあることすら気づかない人も多いと思います。UIが改善されれば、MoGRTの販売機会はもっと増えるはずです。

モバイル対応(Instagram, Canva等)

ショート動画(縦長動画)の流通と共に、スマホ内で動画編集を行う一般ユーザも増えております。例えばInstagramやCanvaなどを使ってデザイナーではない方でもお洒落な動画を編集して投稿する方は多いでしょう。
当分はないかもしれませんが、InstagramやCanvaがMoGRTに対応するようなことがあれば、爆発的に需要が高まると思います。

MoGRT販売の想定されるリスク

仕様変更・サポート停止

MoGRT販売を続けていく上で最も怖いのは、MoGRTそのものの変化です。MoGRTの仕様変更は当然ありますし、実際に1,2年前、MediaReplace(画像や映像をPremiereで差し替える)が実装されました。新しい機能が実装された時、それに対応していない過去の商品が売れなくなってしまう、、なんてことも想定されます。

最悪なのは、サポート停止(廃止)です、、こうなったら、また新しい市場を探すしかありません。

Premiere Proのライバル台等

MoGRTはAdobeが開発しており、Adobeのソフトで使うための機能です。
現在の映像編集業界はまだまだPremiere Proが主流ですが、代替サービスなどによってPremiere Proの需要が減れば当然MoGRTも売れなくなっていくと思います。すでにUIのジャンルではFigmaがAdobeを凌ぐ勢いで人気を獲得しており、同じことが映像業界で起きてしまうことは十分に考えられます。

まとめ:MoGRT販売はまだまだ戦えるチャンスです

MoGRTの世界ではまだまだ供給不足(クリエイター不足)だと思います。
実際に、Adobe Stockは規模も大きく世界中のクリエイターが作品を提出していると思いますが、新着順で表示すると結構な割合で私の作品が出てきますので、個人でもまだまだ十分に戦えるほどライバルの少ないマーケットだと思います。

もっと興味をもった方へ、各販売サイトの特徴などを次の記事で紹介したいと思いますので是非ご活用ください!



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