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"虹の橋のたもとで…。"

Now&Here#09 (2011年7月記)

ひとけのない 東京駅のプラットホーム。
湿っぽいベンチに腰掛けて
たった今、繰り広げられた
ばかりのまばゆいギグを思い描いていた。

ずっとずっと昔、
独りよがりで根拠のない虚勢だけで
駈けていた頃。
身勝手さと自由をはき違え、
醜い肉体をもてあましていた。

ある時、この世界のまぶしさに
目をふさぎ、耳を凝らしてみると
凶暴で鋭角な光が暗闇の片隅で
激しく、そして狂おしく
のたうちまわるのが見えた。

そこでは取り返しのつかない
果てしなく続く日常の傍ら、
光のありかを追いかけ続けていた。

「光が遠くの空で虹を創っている」

あの虹はある人には色はなく、
ある人には胸をえぐるような
鮮やかな七色、それ以上の輝きと
痛みを刻みつける。

生き延びてきた身の回りの
たわいもない痛みや悲しみ。
そして、ありったけのささやかだが
鮮やかなロマンスをかき集め、
それらすべてを瞳に差し込み、
いびつな心のプリズムを通して
自分の脳味噌の中を見渡してみた。

佐野元春30周年
アニバーサリーツアーファイナル
「All Flowers In Time」 
東京国際フォーラム ホールA

この日、ぼくの前にいたのは
佐野元春&The Hobo King Band
だけだった。

追いかけ続けていた虹が
目の前に架かる。
鼓動は高鳴り、この心にそして魂に、
一瞬の光と音の連なりを
焼き付けようと試みた。

すべての楽曲はかつてないほどの
緻密さと生命力に満ちあふれ、
その圧倒的な音の塊は、
ぼくらがここにいる理由を
高らかに讃え、君やぼくの魂の
居場所を明らかにした。

あてのない”音楽の力”

それはヒトの心の無意識の
領域にもたらす
”ティンカーベルの魔法の粉”

虹の橋のたもとで、ぼくは立ちすくみ、
まどろみ、夢を見て、そして祈る。

流れる川を見つめながら、
俺は往く。

いつかきっと、
風に舞う小さな翼をつけた希望と
まあたらしい朝に出会うために
こここら旅立つ時がくるでしょう。

あの晩、
ぼくは終着駅であり始発駅である
東京駅のプラットホームの
ベンチに腰掛けて、
これからはじまる夢の続きを夢見ていた。

Beat Goes On.....。


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