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Life is Beautiful.....?

Now&Here#10 (La Vita e Bella) 2012年8月記

どんな芸術家にも描けないような、研ぎ澄まされた青空に
巨大な入道雲が微動だにせずにへばりついている。
突然、陽がかげり 大粒の雨がトタンの屋根を激しく打つ音。
そして雨上がりの世界の夏のにおい。

この一瞬の光に満ちた景色は小さな子どもの頃の記憶に刻まれた、
ある時はひとりぼっちで、ある時は親しい人と過ごした日々の
かけらとしてふとした時にデジャヴのように脳裏に焼き付いた
景色とともに心の中で再現され続け、狂おしくも二重写しとなり
心の何処かが刺激され舞い上がることがある。

いつの頃からか、生きてゆく糧としてどこか気乗りしない
誰かの口車のって無反省のままここまで押し流されてきた。

わかりきった循環の中から抜け出せないまま、
またお前の口車に巻き込まれるのか?
うすのろな生活にさえ置いてきぼりを喰いそうで、
自分が取るに足らないゴミのように一瞬で消え去りそうだ。

大変お世話になった方の死。
悼む気持ちを抱えながらも朦朧とした日々。

今回は見送るつもりだったが、偶然にも行く機会を手に入れられた
4月の東京ビルボードライヴ 'Smoke & Blue'。
2002年のPLUG&PLAYの流れを汲み、
アルバム「月と専制君主」の拡大ライヴ版といった印象を持ちました。

The Hobo King Bandに加わった笠原あやのさんのチェロ、
Bandの演奏の中、バッキングのカウンターメロディーとして
奏でられながら、間奏に入るやいなやメインのメロディが、
ぐわっと浮かび上がってくる瞬間の高揚感は今までにない
音のスリルを感じる事が出来た。

あの時、あの場所で、ぼくの朦朧とした意識は
佐野元春&The Hobo King Bandの掛け替えのないサウンドの中で
心の底と体全体で共振して自分自身を整えられた気がしました。

このビルボードライヴから間をおかずに続けて行われた
佐野元春&The CoyoteBand「2012 アーリーサマー・ツアー」。

初日の横浜Britz。オープニングのインストゥルメント曲から
ツインギターとなった新生CoyoteBandサウンドが
新たな行く先の予感を奏で始めた。

続く、「ナポレオンフィッシュと泳ぐ日」から最後まで、
あふれ出す音楽への情熱と愛を抱きしめた男達が
気取って 気負って 競って、でたらめな世界の時間を掘削して、
そして空間を掘削した。

掘り当てられる当てはないと思われ続けていた宝石の原石が
荒削りな魂を通して、このデタラメな現実を見定め、
この先を往く覚悟と覚醒の目印を爆音のロックサウンドとして
俺達の目の前に叩きつけられた。


おはよう、ブルーベリー・ヒル。

今朝のお天気は疑いようもなくどこまでも
晴れた夏空が広がっています。

まだチョッとだけ眠たいけど、あなたの丘の上の
曲がりくねった獣道に目を凝らしながら
電柱1本、あと1本とやり過ごす。

正気を保ちながら、迷惑かもしれないが、
あなたの背中を眺めながらもう少し先へ行こう。

朝日を背にして真っ黒な自分の影が曲がり角まで長く伸びる。

あの角を曲がればきっと素敵な何かと出会える事を妄想して、
今まで "Life is Beautiful"と思えたほんの少しの記憶の
かけらを抱きしめて、2012年の夏に”さようなら”をする。

またいつか逢えたらいいな....。


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