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SVB経営破綻までの48時間からのシリコンバレー&ウォール街で起きた大パニック

簡単な自己紹介(スキップしてもらって大丈夫です)

初めまして、やーちです。note初投稿以前にこういう文章を書くのも初めてなのですが、シリコンバレー銀行(SVB)に関するニュースを見て、居ても立っても居られませんでした。私はちょうど1年前までNYのウォール街で米債券トレーダーとして働いていました。英語のスラングでFOMO(fear of missing out)という言い方があるのですが、大きく揺れ動く市場の波に揉まれるドキドキ感が懐かしくてまさに自分もこれは逃したくないという気持ちになりました。トレーディングフロアを離れたけど自分なりに参加する方法はないかなと考えた末の試みが難しい金融用語を使わないで面白くまとめたい、でした。私の何十倍も知識のある経済学専門の方による記事は出ているのですが、普段金融のことはあまり聞かない自分の友達が読んでくれた時にわかりやすくて面白く感じてくれれば幸いです。


シリコンバレー銀行(SVB)ってなに?

今、金融界で大きなニュースとなっているのシリコンバレー銀行(以下SVB)。SVBは名前の通りアメリカのシリコンバレーで成長し、アメリカで16番目の大きさを誇った地方銀行です。多くのスタートアップ企業やテクノロジー企業に金融サービスを提供し、2022年の年末時点では約2090億ドル(28兆円)の預金がありました。SVBの破綻はアメリカ史上2番目の規模になり、2008年の金融危機を思い出させるものでした。

銀行の仕組み

まず銀行はどうやって儲かっているのかを簡単に言うと、個人や会社から短期的にお金を預かる代わりに利息を払います(預金)。預かったお金で今度は必要とする個人や会社にもっと高い利息をつけて長期的に貸し出します(融資)。この利息(金利)の差が銀行の儲けになります。銀行は預金を使って融資するだけではなく投資をすることも可能です。例えば、SVBが行なったように世界で最も安全だと言われる米国債券を買うことができます。米国債券はアメリカの国債ですので、簡単に言えばアメリカが破綻しない限り利息と元金はちゃんと返ってきます。米国債券からもらう利息と預金利息の差がまた儲けになります。

テクノロジー業界からの大量の預金

2020年3月、コロナの爆発的大流行を受け、FRB(アメリカの中央銀行)は緊急利下げを行い、金利は実質0になったし、アメリカ政府もお金をばら撒く政策を打ち出しました。そして、在宅ワークによって一段と飛躍したのがテクノロジー業界、ZoomとかNetflixでした。その上、アメリカ政府がばら撒いたお金効果もあり、使い所がなかった人がテクノロジー株を買うようになり、テクノロジー株はまさに天井知らずに上がって行きました。

シリコンバレーのベンチャーキャピタル(スタートアップに早期投資して、将来的にそのスタートアップが上場する時に株を売却することで利益を出す。ハイリスク、ハイリターンである。)はみんなこの波を逃すまいと次から次へと第二のZoomやNetflixになりうるスタートアップに融資しました。

融資でお金が入ったらどこかに預けますよね。スタートアップ会社がなぜもっと歴史ある大きい銀行ではなくSVBを預金先として選んだのかは二つあります。一つ目は比較的、預金金利が高かったから。二つ目は他のみんながSVBだったし、SVBに預けるのがなんとなくイケてたから。単に、私の知り合いのスタートアップもSVBに預けていました。

そうして、SVBの預金額は2年間で3倍にまで伸び、その預金で何をしたのかというと上でも書いた通り、米国債券などの資産を買いました


なぜ経営破綻したのか?

歴史的インフレからのFRBの利上げ

2022に入り、FRBは40年ぶりの止まることを知らなかった超インフレに対し、金利を一気に0%から4.58%まで引き上げました。

アメリカの”金利”推移

これによって何が起こったのかと言うと、SVBが大量に買った米国債券などの資産の価値が大幅に下がったのです(債券の価格と金利は反比例します。詳しくはこちらを見ていただければと)。単純に資産価値が下がっただけだったら、他の銀行もそうだし、問題はなかったんです。しかし、SVBはこれらの資産を安値で直ちに売る事情がありました。

シリコンバレーの冬

先ほども書いた通り、テクノロジー業界の成長の裏にはコロナ時代の在宅ワークとFRBによる歴史的に低い金利政策があったのです。2022年にも入ると、シリコンバレーの冬とも言われるぐらいテック企業への風当たりは強く、前のように簡単に融資してもらえなくなりました。

想定を超える預金の引き出し

ベンチャーキャピタルから融資してもらえなくなり、現金が必要となったスタートアップたちは自分達のお金を預けているSVBへ走ります。お金の引き出しを求める人が相次ぎ、SVBは自分の資産を安値で売ってでも動かしやすい現金を手に入れる必要があったのです。そうしてSVBは18億ドルの損失を出しました。

破綻までの48時間

3月8日
18億ドルの損失を出したSVBは資金調達のための株式の売却を発表。
「え、なんか潰れそうじゃない?財務状況どうなの?」と懸念の声が一気に広まった。拍車をかけるかのようにベンチャーキャピタルのカリスマ、ピーター・ティールがスタートアップにSVBから直ちに預金を引き出すようアドバイスした。

3月9日
SVBのCEOが出て大丈夫だと言ったけど、人々の不安はさらに広まった。引き出し額も膨れ上がり、株価が60%下落した。

3月10日
SVBは助けてくれる銀行を探したが、アメリカ政府のFDIC(預金保険公社:金融機関が破綻した際に、25万ドルまでを補償してくれる政府機関)によって銀行閉鎖が言い渡された。


シリコンバレー大パニック

SVBの破綻によりシリコンバレーでは大パニックが起きました。アメリカでは2週間ごとに給料が振り込まれますが、SVBに預金しているスタートアップがお給料を振り込めないとパニックになりました。

そして、週末になって政府が介入して全ての預金額を保障すると発表しました。


今、ウォール街で何が起こっているのか?なぜ円高になったのか?

SVBの破綻に続き、Signature Bankも破綻しました。こうした状況を受け、地方銀行への不安や、巨額の損失を出したスイスの銀行Credit Suisseが後に続くんではないかの声が膨れ上がり、3月15日には株価が30%暴落しました。これを受け、どうにかして信用不安を鎮めようとスイス国立銀行(スイスの中央銀行)がCredit Suisseへの資金供給を発表しました。

こうした中、投資家たちは最も安全だと言われている米国債券を買い、これらの価格を押し上げました。上でも書きましたが、債券の価格と金利は反比例で価格が上がれば金利は下がります。下のチャートにもある通り、アメリカの2年国債の金利が3月10日から大幅に下がっていることがわかります。

アメリカの2年国債利回り(”金利”)

アメリカの金利が下がると、ドルは売られます。そして下のチャートにある通り、3月10日から逆に円が買われ、ちょっと円高になりました。

ドル円為替

おまけ

同期の友達がコロナが爆発的に広まった時よりも市場の動きが激しいと話していて、今の状況がどれだけ凄いのかがちょっと伝わればと思い、載せました。


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