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【小説】ガチ腸活女子 第2話

豆柴犬のドージー

彼女は「ドージ」という名前の豆柴犬を飼っている。彼女がドージーのことで羨ましく思っているのは、その快便さだ。豆柴ドージは、いつもツルッと切れの良い、適度に水分を含んだ便をする。また、ドージの明るい性格は、いつも安定していてボラがない。誰かのツイートによって高騰下落を繰り返すコインとは正反対に、飼い主の扱い方で気分が乱高下することは考えられない。また、「行って来い!」と彼女がお気に入りのボールを投げれば、そのキャンドルスティックのような脚で爆走して取りに行き、すぐに同じ所まで戻ってくる。彼女はこのドージの温和な性格は腸内環境が整っているからだと解釈している。ある本で、腸は脳やマインドにも影響を与えてると読んだことがある。

朝のリチュアル(儀式)

彼女の朝は忙しい。5時半過ぎに起床して、朝の腸活をルーティーン化している。彼女はそのメニューを1つでもサボれば「呪われた1日」になりそうなので、一連のメニューを「リチュアル(ritual)」と呼んでいる。

起きたらすぐ、アスコルビン酸パウダー10gを冷たい水に溶かして一気に飲む。口角がへの字に急落するほど超酸っぱい、このビタミンCパウダー水を飲むと便が柔らかくなることをどこかで読んだ。その後は腸に効くヨガと腸内マッサージ。朝食では、商品名に"L"やら"R"と表記してある(何となく腸活に良さげな)ヨーグルトにマヌカハニーをかけて食べる。

パンは食べない。というより、彼女は小麦粉を一切摂取しない「グルテンフリー」を実践中だ。以前リーキーガットのような症状を経験したのと、憧れの海外セレブたちがグルテンフリーをやっているのを雑誌で読んだことがあるのだ。

朝食の後にお通知があれば、その日はウエストが強調された「男子目線を狙ったスカート」を履いたりするが、なければポッコリお腹が目立たない工夫をする。便秘症の彼女には、いつも着たい服が着られる自由は与えられていない。

便が出た日は腸内フローラを検査してくれるサービスに自分の便を郵送する。なにも自分の便をジップロックとかに適当に入れて、ポストに投函するわけではない。そんなことをしたら、大変なことになるのは言わずもがなである。彼女はあらかじめ検査キットを購入しており、健康診断の検便のように、封筒には中身がにじみ出ないようにして送る。郵送後1週間ほどで、スマホのアプリから自分の腸内環境のデータを見ることができる。そこには腸内環境のスコアとグラフ、腸年齢などが確認でき、専門家からのアドバイスも受けられる。おすすめの食品やサプリも紹介されていて、「初回限定 今な70%OFF」「先着1,000名様限定」「定期購入がお買い得」など、くるくる目が回りそうなバナーを即ポチして購入する。きちんと考えて購入しているから、自分は情弱なんかじゃない、と彼女は考えている。

To Be Continued つ・づ・く







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