依存症患者の家族になって⑥:感情

このnoteを書き始めて良かったことはたくさんあります。

自分の頭の中が整理できたこと。
自分で振り返って読み返せること。
コメントなどの反応をいただいて元気になったこと。などなど

プラスして、思いもかけないことが起きました。それは、このnoteを弟に読んでもらったら、弟も自分の振り返りブログを書き始めたこと。そして、カウンセリングを受けて心の回復への道を歩み始めたのです。

依存症患者の本人に「ああしろ」「こうしろ」と要求を伝えるのではなく、本人に生きてほしい人生をまず家族が生きる。
これが、一番本人を変える結果になるという家族支援の先生の言葉は本当でした。

依存症について学び、カウンセリングを受け、子育てをする中で、一つ気づいたこと。それは、「自分が育った家庭は”感情”を疎んじていた」ということです。

「悲しい」「悔しい」「辛い」「嬉しい」「モヤモヤする」「凹む」・・
そういった感情を、表に出すことを暗に禁じられていた気がします。
例えば、何かが悲しくて大泣きした時。母は、必ず私に「ん!」と言ってごらん!と言いました。母曰く、大泣きをするとだんだん泣くのが自分でも止められなくなる。だから「ん!」と言うと、泣くのが止まるというのです。例えは汚いですが、お腹を下しているときに下痢止めを飲む、みたいな発想です。

でも、それって何かバイキンがお腹に入ったから、不具合が起きているから出そうとしている現象なわけで。出るものだけをストップしたら、悪いものは体内に留まり続ける。不健康です。
ネガティブな感情だけでなく、ポジティブ感情も、とにかく大騒ぎすることは全般的に嫌がられたような気がします。「調子に乗るな」と。
落ち着いて、ニュートラルに。おりこうさんに。分別をもって。
そういうことを続けていると、悲しむこと、怒ること、喜ぶことなどが、どうやったらできるのか、わからなくなってしまいます。

うちの両親は、私たち子供だけにそういう振る舞いを要求していたわけではなく、特に父は感情を表に出さない人でした。
今思えば、父が大声をあげたり、悔しがったり、悲しんだり、大喜びしたり、そういうことを見たことがなかったし、そういう自分の感情を伝えてくれたこともなかったなあと思います。感情的になるというのは非常に恥ずかしいことだと思っていたようです。なんで機嫌が良くないのか、何が嫌だったのか、私たちにわからない事情もあったのだろうとは思いますが、すこしでも教えてくれたらよかったのになあ。なんて思います。


私は今も定期的なカウンセリングを継続しています。
そこで、感情を丁寧に扱うことを練習し、最近やっと少しずつ慣れてきました。
感情は、天気のように自然に湧いてくるもの。良いも悪いもなく、ああ、そこにあるね。と認めてあげればいい。感情を認めて、寄り添ってあげれば、昇華される。

今までの私は、「ここは怒っていいのか?」「悲しいと思っても大丈夫か?」など、感情を頭で理解しようとしていました。でも、思考と感情は別。感情は、感じるもの。という考え方に出会って目からうろこが落ちました。

悲しい時に、いつまでも泣いてはいけない。悔しくても、暴れたりしてはいけない。そういうアウトプットのところだけを制限されていて、悲しい、悔しいという気持ちをどういう風に扱い、昇華させればいいのかについては、だれも教えてくれなかったなあと思います。両親だって、その両親だって、知らなかったのですから、当然です。

でも。自分の子供達には、感情を悪いものだと思ってもらいたくはない。
雨が悪い、晴れが良いというものではないように、嬉しいのが良い、悲しいのが悪いというわけではない。
とにかくジャッジせず、認めて、寄り添う。そういうふうに感情と付き合える大人になってほしいなあと思うのです。それが、平たくいうと「自分の機嫌を自分でとれる大人」なのだと思います。

そこで私が実践していることの一つに、「プンプンレスキュー隊」があります。子供がプン!と怒っていると、私が「プンプンレスキュー隊♪」と言って現場に駆け付けます。そして、「どうしましたか?」と聞くと、たいてい子供はプン顔のまま、「〇〇されて嫌だった」などと教えてくれるのです。
そこで私は、「そうでしたか。それは大変でしたね。」と言います。
敢えて「○〇が悪いですね」などとは言わないようにしています。
そして最後に、「ギューがいいですか?よしよしですか?おんぶがいいですか?」と、やってほしいことの候補をあげます。
すると、「ギューして」などと答えてくれます。たいていは、「ぜんぶ。」ですが(笑)

これを一通りやると、びっくりするほど落ち着きます。
一度、私がプンプンしていた時に(笑)子供たちがレスキュー隊として来てくれたことがありました。私は子供たちに怒っていたのに、彼らに「それは大変でしたね。」と言ってギューしてもらって、不覚にも本当に癒され、温かい気持ちになりました。

プンプンレスキュー隊を始めて、たぶん1年半くらい経ちますが、今でもしょっちゅう、特に寝る前に出動しています。
子供たちが、「レスキュー隊来て!」と言うことができるようになったのも、ヘルプを出せるという意味で大事なことだと思っています。
これから小学生、中学生と大きくなっても、自分だけで抱えきれないときには、悲しい!辛い!という気持ちを誰かに言える人になってくれたら嬉しいです。
そのために自分自身も、自分の感情を子供たちに言葉で伝えられる親でいたいなあと思います。



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