雑談

コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/12/18)

アスクル社長、ZHDと資本提携解消の模索中止-企業価値向上で一致

【注目ポイント】アスクルの吉岡晃社長兼最高経営責任者(CEO)は経営体制を巡り対立した筆頭株主のZホールディングス(HD)との間で模索していた資本提携の解消を取りやめることを発表した。アスクルとZHD間で「アスクルの企業価値をどうやって上げるのか、業績を確実に上げることで一致した」とし、ZHDが展開する「『ペイペイモール』に乗らない手はない」と述べている。ZHDとの資本提携を解消した場合の株式売却先候補と進めていた協議を打ち切ったことも明らかにし、今後については「独立社外取締役を選任し、ガバナンスの仕組みをつくる」とのこと。アスクルを巡っては、ZHDが今年7月に業績の早期回復や経営陣の若返りを図るとして岩田彰一郎前社長の取締役再任に反対を表明。他の大株主も巻き込む対立騒動に発展し、株主総会で岩田氏と独立社外取締役3人が解任されていた。

【コメント】結局アスクルとZホールディングスとの間で生じていた親子上場におけるガバナンス不全がなぜ生じたのか、という多くの人が知りたい疑問には一切答えていない。特定の大株主の利益を優先し、少数株主の利益を棄損させない仕組みの構築については、事実上棚上げになったといえる。独立社外取締役を選任し、ガバナンスの仕組みを作るとのことだが、そもそも岩田前社長の在任中にも独立社外取締役が3名存在し、それを解任したのはヤフー(現ZHD)自身である。単に、新たに独立社外取締役を選任するだけでは、同じことがまた起きかねず、その点についての真摯な対応が必要不可欠なはずなのだが...。


平時の昼行灯

【注目ポイント】改正会社法が成立したことにより、投資家や企業は社外取締役の「量」と「質」の問題に関心が集まる。企業のガバナンス事務局からは「社外取締役が張り切りすぎて、執行の細部にまで口を出してくる」という愚痴もこぼれる。社外取締役に求められるのは「独立」かつ「非業務執行」による監督機能だが、自身の存在感を示したいという意欲を持つ社外取締役は不必要に関与を強めたがる。特に指名諮問委員会などではこうした問題は深刻な影響を及ぼしかねない。指名報酬委員会における社外取締役の役割は、経営陣の指名や報酬決定などに関するプロセスの公正性をチェックするためだが、まるで人事を決めるのは社外取締役であるかのように勘違いするケースもある。一方で今年経営陣の指名を巡って企業のガバナンス問題が複数の企業で表面化したが、他の予定があることを理由に、ガバナンス上の肝心な時に、取締役会や委員会を欠席する社外取締役も存在した。社外取締役の仕事における平時と有事を見極め、必要な時に本来あるべき役割を果たせる社外取締役の選任が求められる。

【コメント】実際に複数の企業の取締役会や指名・報酬委員会のアドバイザーを行っている立場から得てきた実感としても、社外取締役が過度に口を挟む、または存在するだけで貢献らしい貢献を一切していないというケースは多くの企業で存在する。ただし、一概に社外取締役自身に問題があるかというとそうではない。多くの場合、企業側が社外取締役候補者に対して就任時に、具体的に何をどのように行うことを期待しているかを明確に伝えていない。そのため、企業側の期待役割と社外取締役自身が考える役割とが、多くの場合ずれている、というのが一番の要因である。こうしたズレをなくすために、例えばある企業では、社外取締役に対して、取締役会や委員会における言動に対して、取締役会議長が1on1でさりげなくFBを繰り返し、ズレをなくすように努めている。多くの企業では、そこまで取り組むことはできていないだろうが、本来はCEOではなく社外取締役が務める取締役会議長がこうした役割を担うべきだろう。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?