コーポレート・ガバナンス関連ニュース(2019/11/25)
ウィーワーク、新たな幹部を複数指名-経営改善5カ年計画を発表
【注目ポイント】WeWorkのマルセロ・クラウレ会長(ソフトバンクグループCOO)は22日、経営改善に向けた5カ年計画の概要と、複数の経営幹部を新たに起用したことを従業員に説明したと報じられた。2023年までにキャッシュフローの黒字化などを目指す目標を掲げると同時に、暫定の最高マーケティング・コミュニケーション責任者に仏のパブリシス・グループの元CEOであるモーリス・レビー氏が、最高製品責任者(CPO)にラルフ・ウェンツェル氏、最高変革責任者(CTO)にマイク・ビューシー氏がそれぞれ就任することも発表したとのこと。
【コメント】SBGの支援の下、再建に向けて猛スピードで変革を急ぐWeWorkが新たな経営幹部の発表を社内向けに行った模様。先日は、グローバルで1/3に相当する2400名程度のリストラも発表したが、財務的な出血を止めるだけでなく、将来の成長に向けて新幹部によって新たな戦略と一行プランが立てられるだろう。
米CEO退任 最多1300人 1~10月 不祥事に厳しい目
【注目ポイント】2019年1月~10月までの米国企業におけるCEO(最高経営責任者)の退任が1332人と、同期間として過去最高を記録しており、年間でも最多数を更新する見通し。米国企業では取締役会や株主がCEOに対して厳しい目を向けるようになっており、今年は特にワンマン経営を続けた創業者の退任や、不祥事などによる退任が急増しているとのこと。米民間雇用調査会社チャレンジャー・グレイ・アンド・クリスマスが、非上場企業も含めた直近2年でビジネス活動のある米国企業を調査した。リーマン・ショックのあった08年1~10月の1257人の退任数を上回って過去最高となっている。これまでの傾向をみると、CEOの退任は景気悪化時に増えやすいとされており、現在のように景気拡大期にもかかわらずCEOの退任数が増える背景には、ガバナンスの強化によりCEOに向けられる取締役会や株主、世間の目が厳しくなっている点があるとのこと。
【コメント】昨以前別記事でも取り上げたが、2019年は米国企業のCEO退任数が過去最高のペースとなっている。基本的に記事にある通り、ガバナンスの強化によって、CEOへの業績や個人の振る舞いなどに対して、これまで以上に厳しい目が注がれていることが要因だろう。この退任数の中には、相当数の解任も含まれるのだが、興味深いのは解任も含めた退任が必ずしも市場にネガティブな評価をされない点である。CEOの退任のアナウンスによって、株価が上昇している企業も多く存在する。より重要なのは、あくまでCEOは経営のトップという一つの役割にすぎず(ただし、相当重要ではあるが)、その時々の企業の置かれた環境や戦略に応じて柔軟に適任者をアサインしていくことである。そのため、CEO Successionは非日常的な取組みではなく、あくまで企業の備えとして日常的な取組みにしておく必要がある。
アクティビストは生き残れるか、「外資規制強化」巡る国家との暗闘
【注目ポイント】日本企業に対するアクティビストの存在感が増しているが、一方で反発も強まっている。政府は今秋の国会に、国の安全保障に関わる投資への外資規制を強化する外為法改正案を提出した。11月22日に国会で成立した外為法改正案は、安全保障の観点から、外国人投資家が日本企業の株式を取得する際に必要だった事前届け出の基準を、これまでの取得後の持ち株比率10%以上から1%以上に引き下げる内容となっている。現在、日本の上場企業における外国人持ち株比率は、約3割となっており、外資の資金力が上場企業の成長を牽引する存在となっている。そうした流れに対して、水を差しかねないのが今回の改正外為法といえる。
【コメント】改正外為法に対しては、複数のアクティビストからも反対の声が上がってきており、記事にあるように市場関係者は改正外為法によって市場の冷え込みを心配する声がある。財務省としては中国に対しての安全保障上のリスクを考慮しての措置として今回の改正法は捉えられているが、持ち株比率基準の変更だけでなく、安全保障に関係する投資の基準が明確でない点なども指摘されており、今後同法がどのように運用されていくかが注目される。
リクシル内紛の舞台裏で「超保守的」大手生保が経営陣の命運を握った理由
【注目ポイント】今年6月の株主総会で、トップ人事を巡り元CEOと当時の現CEOが対立する事態となったLIXILグループ。LIXILでは、2018年秋に、創業家出身の潮田洋一郎氏と、当時社長兼CEO(最高経営責任者)を務めていた瀬戸欣哉氏が経営方針を巡って対立したことをきっかけに、指名委員会を通じて瀬戸氏を事実上解任し、潮田氏自らが会長兼CEOとして経営権を握るという事態が生じていた。株主総会では、コーポレート・ガバナンス上の論点が複雑に絡み合う中、最終的に、前経営陣の復権を求める株主提案が成立した。その背景では、機関投資家の議決権を巡る攻防も存在した。
【コメント】2019年の日本企業のコーポレートガバナンス上の重要事案の一つが、このLIXILの経営権争奪問題である。経営権を巡って株主総会で対立したケースは過去にも何度か存在するが、今回の事案は、形式上は執行と監督が分離された指名委員会等設置会社の形態を取り、コーポレート・ガバナンス先進企業と見られていたLIXILで、CEOの選解任というガバナンス上の重要テーマについて、創業家の暴走を食い止められなかったということが、非常に今日的なコーポレートガバナンス不全として注目を集めた。また、創業家やオーナーが鶴の一声で物事をひっくり返すことを、良くも悪くも許容してきたのが、これまでの日本企業の常識であり、多くのビジネスマンもそのように考えていたと思うが、そのことに対して明確にNOが突き付けられたことは、コーポレートガバナンスの新時代を感じさせる象徴的な出来事だったといえるだろう。私自身も何度も見聞きしているが、多くの企業の取締役会でLIXILの事案を反面教師として捉える動きが広がり、自社のガバナンスの見直しを行う企業が増えていると思う。
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