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六本木WAVE 昭和バブル期③

l  猫を預かった話 出会い
 
 そんなある日のこと。そのチラシを思い出して久しぶりのドキドキアクションに踏み切った。大げさかもしれないが、毎回(そんなにしょっちゅうではない)決心に至るまでは先に書いたような心の葛藤が生じるのであった。そして自分の心と同意した後は後戻りしないように無心で少し震えながらダイヤルを回した(家の黒電話である)。どうしても慣れないのである。
 
 コール先はすぐに応答した。商売っ気丸出しであった。若そうな男性の声が受話器から響く。「はい!〇〇です!大人のお遊びのお店です!」」こちらの意向を伝えると「はい!それでは30分くらいで伺わせます!呼び鈴ブザーが鳴りましたらすぐに応答ください!」こうもはきはきされるとなんだか興覚めであるが、店によっては声の感じから強面で、後々やばいのではないかと思わされる場合もあるから、こっちの方が良いには決まっているが。
 
 仕事は中堅の広告代理店 PR誌や販促の活字媒体を担当していた 営業もするが主に制作であった 大学同期と比べても比較的給料は良かった 私の部屋は麻布十番のワンルームマンション 地上7階にあった。バストイレもあるオートロックの新築マンションである。

 そう聞くと、安サラリーマンには贅沢と思われるかもしれないが15㎡くらいで収納は無く値段も相応であった。ただし窓から結構な近さで東京タワーが見えた。それが一番のお気に入りであった。午前0時になると消灯するので、いつもそのころにはしっとりしたジャズボーカルの曲をかけていた。

 当時まだ地上げ等に入る前であったから、この地域も下町の雰囲気は残っていた。在日の方も多くキムチのお店やハングル専門のレンタルビデオ店もあった。少し歩くと六本木なので散歩がてら軽く夕飯を食べ、行きつけのカフェ・バーでマスター相手にバーボンを飲むような独身貴族を気取っていた。

 よく行っていたのは麻布十番の南国酒家、六本木WAVE 一階にあったお洒落な洋食屋 雨の木、イモ洗い坂の洒落た中華のお店 東風、地下に降りていくカフェバーのエンゼル、乃木坂近くのカフェ タバック、ミスターバーボン、たまに西麻布の328,当時珍しい洋楽のプロモーションビデオをエンドレスで流していたミュージックインターアクションとかとか…
 
20分くらいでその娘は現れた。(つづく)

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