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六本木WAVE 昭和バブル期⑭

  猫を預かった話 恐怖との戦い

部屋に入ってからしばらくは2人ともソファに座ったまま
寡黙になっていた
緊張と言うには当たらないが
むしろ興奮と疲労の入り混じった複雑な感覚で
思考停止になっている状態 であった
 
先に口を開いたのはレイであった

「喉が渇いたわ 何か飲まない?」

「うん・・・」
私は答えながら、冷蔵庫の中に2本あった
ミネラルウォーターの1本をレイに手渡した
「ありがとう」
レイは一気に飲み干していた

お互い水分補給で少し落ち着いた
 
(さてこの後どうしよう…)

私は柄にもなく童貞君のように固まっていた
レイに促されるまで待つしかなかった
自分から動けない(情けない)
 
それを察したようにレイは立ち上がり
やおら部屋の中を丁寧に物色しだした

シャワールームの水分量
ベッドのクッションの固さ
部屋の設備、特に
X十字架の形状
スパンキング用のテーブルとベンチ
吊り用の器具 等々
自分にはとても使いこなせない
意気消沈してしまう

フロントで借りたロープや口枷はそのままテーブルの上に
置かれたままであった

正直アブノーマルには興味はあったが
実践となると未経験であった
突然気が付いた
(まてよ・・・俺は自分のS行為のことだけ考えていたが
 レイがMだと誰が言った???)

いきなり頭の中で 縛られ鞭うたれる自身を想像した
(嫌だ 嫌だ そんな嗜好は俺には無い!)

人が聴いたら笑いそうな稚拙な いやいや が頭の中を駆け巡る…
レイは鞭のしなりを試している・・
(うそ!!?)
捉われた獲物のように怯えている自分
 
突然振り返り
「シャワー先に浴びてきて良いよ!」
 レイが言った

(ついに促された…)
 
「はい そうするね」
私の声は上ずっている・・・

そそくさと速足でシャワールームに向かう自分 
相当に恰好悪!!

全裸になりシャワールームに入って熱いシャワーを浴び生贄のように隅々まできれいに洗う自分
(何やってるんだ…俺…)
 
すると突然シャワールームのドアが開いた

BGM Madonna Nothing Really Matters (William Orbit Instrumental).

真っ赤な短いキャミソール姿から美しい足だけが見えた

(レイ?)
そう思って顔を見た瞬間 私は恐怖の声を発していた

「あああ・・・!」

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