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六本木WAVE 昭和バブル期②

l  猫を預かった話
 
 この頃 或る女から猫を預かったことがある。その女は恋人でもなく、友人でもない。コールガールであった。古い表現を用いれば(街娼)の類である。
 最初に知り合ったのは名刺大の安っぽいちらし 昭和バブル期の頃を知っている人には懐かしいであろう お店別の風俗情報のチラシである そのようなものが毎日郵便受けに投函され、また公衆電話ボックスのガラス面に貼られていた。たまたまその一つを手にして持ち帰った。

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 好奇心と性欲のなせる業 20代の独身男に躊躇いは無かった と言っても一回2万円程度とはいえ安月給のサラリーマンには少なくない出費である

 このような行為に及ぶ前にいつも考えるのが費用対効果である 2万円は安くはない でもお相手の方にもリスクはある 全く見ず知らずの男に遭遇し行為に及ぶ これはやはり2万円でも高くはない 当然店(元締め)がピンハネするのだから実際の手取りも少ないであろう などとあれこれ都合よく自分に出費させることを納得させるのである 

その説得で折り合いが付いたらやおら電話をして条件を提示し時間と場所(アパートの住所)、名前(だいたい偽名)、電話番号(もちろん家電)を提示するのである。今思えば個人情報も含めて無防備な時代であった。いわゆる今の時代のデリヘルなのだが当時は妙にこのチラシから入るというアナログな行為の連続がそわそわドキドキを催させ、且つ煽情的でもあった。
(つづく)

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