後藤敏章

ボブ・ディランの公式アルバム全制覇を目指すおっさん。 ジャズとディランのことを中心に書…

後藤敏章

ボブ・ディランの公式アルバム全制覇を目指すおっさん。 ジャズとディランのことを中心に書きます。音楽好きのかたと気楽に交流したいです。よろしくお願いします。

最近の記事

拝みたくなった瞬間

『ショット・オブ・ラブ』。ボブ・ディランのキリスト教3部作の3作目。1981年発表。 ⁡ 『レニー・ブルース』など、あ、ディランっぽいなという楽曲も収録されていて、前の2作品に比べると、熱烈な宗教賛美感は薄くなっている。ただ全体的にはサウンドも歌詞もシンプル過ぎて、ディラン聴きとしては物足りない。 ⁡ そんななかでも6曲目『ザ・グルームズ・スティル・ウエイティング・アット・ジ・オルター』とアルバム・ラストの『エヴリィ・グレイン・オブ・サンド』が心に残った。前者は81年発表時に

    • ジョニー・ホッジス無双

      レコード。1959年8月9日のシカゴ録音。タイトルは、『ビリー・ストレイホーン・ライブ!』だが、実際はデューク・エリントン・オーケストラの演奏。諸事情があったか?もっともB面の圧倒的なハイライトである美しい『パッション・フラワー』ではエリントンに代わりピアノを弾いてるので、ビリー・ストレイホーンもちゃんと活躍はしている。ややこしいタイトルに違いはないが。 ⁡ この盤でストレイホーン以上に存在感があるのが、ジョニー・ホッジス。彼のアルト・サックスがフューチャーされている曲は、8

      • 異形の傑作

        ボブ・ディラン『ナッシュビル・スカイライン』。1969年作。 ⁡ 前作『ジョン・ウェズリー・ハーディング』、その前の『ブロンド・オン・ブロンド』、そして本作と、いずれもナッシュビルでの録音だが、3作はそれぞれ全く雰囲気が違う。この『ナッシュビル〜』は、聴いてまず声に驚く。ディランの表現者としての最大の個性である、あのガラガラでザラついた声じゃない。ソフトで甘い声。ディランは曲によっていろんな歌い方をするのは分かってるが、本作のこれはなかなかのもんです。 ⁡ イレギュラーなのは

        • 恥を晒しながら、それでも生きる

          『欲望』。1976年発表。ディランの人気作、代表作としてよく取り上げられる作品。 黒人ボクサーのルービン・カーターの免罪事件、その根底にある人種差別を糾弾する『ハリケーン』が一曲目。怒りに満ちたディランの声と言葉、躍動感のあるバンドの音に引き込まれる。ピラミッドの墓泥棒が主人公の2曲目『イシス』もそうだが、ディランが語り手に徹して様々な登場人物の物語を歌う、バラッドものが本作は多い。 他人とのどうしようもない距離への絶望感を歌う『コーヒーもう一杯』、心優しいギャングの

        拝みたくなった瞬間

          伝承者 ボブ・ディラン

          『奇妙な世界に』(1993年)。 ⁡ ボブ・ディラン、52歳の作品。前作『グッド・アズ・アイ・ビーン・トゥー・ユー』同様、古いフォーク・ソングやブルース、トラッドをディランがアコギ一本でカヴァー。ディラン・オリジナル曲は入っていない。 ⁡ ボブ・ディラン作品を聴くときは、歌詞と対訳の読み込みは欠かせないと自分は思うが、弾き語り作品については、もう絶対に対訳読まなきゃいかんと思う。飽きるし、世界に入りこめない。しかし本作の国内盤には、歌詞も対訳も当初ついていなかった。全編弾き語

          伝承者 ボブ・ディラン

          天才的なセンス

          『セルフ・ポートレート』。 ⁡ 1970年発表。24曲収録。他人の歌や古い伝統曲をディランがカヴァーするという中身。自作はほとんど入っていない。多数のミュージシャンを起用して、いくつかのスタジオで録音された各曲のサウンドは、統一感がない。ディラン自作『ライク・ア・ローリング・ストーン』『シー・ビロングズ・トゥ・ミー』のライブヴァージョンも収録されているが、これがなんだかえらい勢いがなく、おすすめできない。 ⁡ と、ここまで書くと、だいぶ良くなさそうな感じだが、これ確かになんと

          天才的なセンス

          どんな気持ちだ / ひとりぼっちになるというのは

          『追憶のハイウェイ61』。1965年発表。ディランの代表作で、ロックの大名盤と言われる作品。 ⁡ 本作を初めて聴いたのは30数年前。CDで。まず歌詞が意味分からず笑、しかも曲長いしで、当時大好きとは決して言えないアルバムだった。なんでだろう?例えば同じ時期に聴いたブルース・スプリングスティーンの『明日なき暴走』は、歌詞分からずともめっちゃ感動したのに。今思うと、ディランはやっぱり歌詞をちゃんと読むのが肝なんだろうな。その数年後、大学生になって『血の轍』や『プラネット・ウェイブ

          どんな気持ちだ / ひとりぼっちになるというのは

          ディランの優しさ

          『テンペスト』。ボブ・ディラン通算35作目のオリジナル・アルバム。2012年発表。 ⁡ ウェスタン・スウィング&ジャイヴ&戦前ジャズ風の軽快なサウンドに、ディランのダミ声が力強く乗っかる『デューケイン・ホッスル』で、アルバムはスタート。続く2曲目『スーン・アフター・ミッドナイト』はガラっと雰囲気が変わり、甘い声とメロディで、胸をぎゅっと掴まれる。この冒頭2曲で、もうこの作品に持ってかれてしまう。しかしまあ勢いがあるなー、71歳のボブ・ディラン! ⁡ 『マニッシュ・ボーイ』の歌

          ディランの優しさ

          ラブ・アンド・セフト

          『ラブ・アンド・セフト』。2001年作。ボブ・ディラン自身によるプロデュース。 ⁡ 発表時、ディランは60歳。しゃがれ声はより渋みを増している。アルバムのサウンドは、アメリカーナ風の明るい雰囲気で、マンドリンやヴァイオリン、バンジョー、アコーディオンなどの音が耳に残る。 ⁡ ジャズやポピュラーのスタンダード風の、洒落た雰囲気の楽曲を歌うことが多くなった21世紀のボブ・ディラン。その路線のスタートは本作から。『ムーンライト』『バイ・アンド・バイ』『フローター』『ポー・ボーイ』な

          ラブ・アンド・セフト

          最低でも週2は

          ついに妻の許可が出て笑、レコード・プレイヤーをリビングに設置。自宅でレコードを聴けるという生活が今月から始まった。おかげさまでとても楽しい。 何が一番楽しいか?聴くのはもちろんなんだけど、レコード屋に行くって行為がなんか一番楽しいのかも。休みの日、仕事帰り、空き時間。時間を見つけてレコード屋に行ってレコードを探す。なんかワクワクする。中毒性がある。買うとしても1000円前後の安いやつばっかりなのだが。 あきらかに音楽サブスクの影響で、足が遠のいていたCD・レコードショップ

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          良いお年を!

          2020年最終日ですね。コロナで忘年会もできず、人にも会えず、年末気分も希薄です。皆様はどんな感じでしょうか? 画像は昨日家で聴いていたCD。音楽が気持ちを上げてくれます。 左上がコルティーホ・アンド・ヒズ・タイム・マシーン「コルティーホ」。1974年作。ボンバやプレーナというプエルトリコ音楽にロックやファンクやジャズの要素がぶち込まれ爆発するサウンドは、とても聴きごたえがある。そしてやはり最大の魅力は、躍動感とうねりが素晴らしすぎるコルティーホのパーカッション。

          良いお年を!

          姫野カオルコ「青春とは、」

          「青春とは、」(2020年、姫野カオルコ著)読了。読んで良かった。 「謎の毒親」「彼女は頭が悪いから」と最近の作品しか読んだことがなく、これで読むのがまだ3作目程度なのにしかももう評価も十分に確立された作家なのに、お前はいまさらなにを偉そうに言ってるのかではあるが、姫野カオルコ、最も信頼できる小説家の一人であるとここで断言したい。明暗、喜びと哀しみ、くだらないことと真剣なこと、個人が生きているうえでの歪さ、それでもそのときそのとき各々が懸命に生きてる感じを、深く掘って言葉

          姫野カオルコ「青春とは、」

          今年の9枚

          コロナにより1年前には全く想像もしていなかった社会に生きる日常。音楽への向き合い方が変わったとまでは言わないが、一期一会感が強まったというか、聴くなら真剣に聴こうという切実さは強くなった。選んだ9枚は何度聴いても自分に力を与えてくれた。9枚の中での順位はなし、です。 (画像、上段から左から右に) 1 赤木りえ「魔法のフルート」 2 友部正人「あの橋を渡る」 3 ブルース・スプリングスティーン「レター・トゥ・ユー」 4 藤井風「ヘルプ・エヴァー・ハート・ネヴァー」

          今年の9枚

          たかが殺人じゃないか

          「たかが殺人じゃないか」(2020年、辻真先・著)読了。今年の各ミステリー賞で大賞を獲得した、御年88歳という大ベテランの作品。終戦後の名古屋が舞台。中盤から登場する名探偵・那珂一兵シリーズという位置付けということではあるものの、実際は辻自身がモデルと思われる推理小説家志望の男子高校生が、物語の主人公。   「密室殺人はいかにして行われたか?」「解体殺人はいかにして行われたか?」という読者への質問状が後半部分で出てきて、どんだけ読み返しても頭を捻っても自分にはもちろん解明

          たかが殺人じゃないか

          ザ・クロマニヨンズ「マッドシェイクス」

          昨日土曜午前は子供の保育園のお遊戯会に参加。コロナ感染防止のため、観覧できる家族は1名のみ、入場整理券の事前配布など、例年とは違うさまざまな規制あり。まあほんとに大変な世の中だよなーと、毎日毎日感じている。そしてあっというまに1年が終わろうとしている。 とても寒くて雨も降っているので、帰宅後は子供と二人で家で過ごす。レゴブロックで大きい家をつくったり、仮面ライダーセイバーのベルトで遊んだり。子供は盛り上がっていてそれはそれで楽しそうでほっこりはするものの、日々の疲れゆえか

          ザ・クロマニヨンズ「マッドシェイクス」

          こもりびと

          朝と夕方はだいぶ寒くなって冬突入という感じですね。今日は家族で近場を散歩したり、密にならないよう短時間の買い物をしたり。欲しかった本も何冊か買えた。  録画していた「こもりびと」ようやく観た。NHKスペシャルの枠で先日の22日に放映されたドラマ。力作だった。特に主演の松山ケンイチの演技、目の動きとかの表情のつくりかたが素晴らしくてほんとに圧倒された。すごい役者。北香那さんの全力の演技もグッと来た。  全国に100万人以上いる「ひきこもり」。そのうち61万人が中高年だと

          こもりびと