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たかが殺人じゃないか

「たかが殺人じゃないか」(2020年、辻真先・著)読了。今年の各ミステリー賞で大賞を獲得した、御年88歳という大ベテランの作品。終戦後の名古屋が舞台。中盤から登場する名探偵・那珂一兵シリーズという位置付けということではあるものの、実際は辻自身がモデルと思われる推理小説家志望の男子高校生が、物語の主人公。
 
「密室殺人はいかにして行われたか?」「解体殺人はいかにして行われたか?」という読者への質問状が後半部分で出てきて、どんだけ読み返しても頭を捻っても自分にはもちろん解明できなかったわけだが、最終的に出てきた犯人の意外性に驚くと同時に、犯人は「このトリック」で殺人を行うしかなったという必然性が見事に論理的に組み立てられていて、読後感の満足度は高かった。最後の部分もニヤリとさせられた。さすがです。
 
 リアルタイムで戦争から戦後に思春期を過ごした作家が、その時代のことを(おそらく)体験を交え描き、それがハイレベルの競い合いの世界である本格ミステリー界で2020年に最高評価を受けるということが感慨深いし、あの戦争は決して遠い歴史的出来事ではなく、今につながっているんだよなとも思った。年末年始におすすめの1冊です。

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