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1歳児に笑われた話

今日は朝からどしゃぶりだった。
そんなあいにくな日にあいにくは重なるもので、息子が初めて保育園で熱を出した。
慌てて医務室のドアを開けると、そこには母親の顔を見るなり、嬉しそうにニヤァ〜〜っと笑う息子がいた。なんだ全然元気そうじゃん。

確かに熱は高く、小児科でお薬ももらってきたが、本人は割と元気そうだった。
大盛りの夕飯も、いつも通りにモリモリ食べた。
その気持ちいい食べっぷりをぼんやり眺めながら、ようやく母も一息ついた。

その時だった。私と息子の間を一匹の大きな蚊が横切った。
ふわふわとした動きを逃すまいと追跡している間に、息子の方へと向かっていく。
「うわ〜〜!ダメダメ!!」

パン! パン!
私は必死に蚊を叩いて追いかけた。
なにがなんでも仕留めてやる。すでに今シーズン虫刺されだらけの息子なのだ。これ以上ボコボコにさせるもんか。
パン! パン!

すると後ろで息子がなにやらケラケラ笑っている。
ケラケラ、ケタケタ、おかしくっておかしくって、もう笑いが止まらない様子。
口いっぱいに詰め込んだ卵焼きが、笑いすぎてぼろぼろこぼれている。

どうやら突然大人が、宙に向かって手をパチンパチンし始めたもんだから、それがたまらなく面白かったらしい。

息子の笑いは止まらない。
ケラケラケタケタ笑っては、今度は自分の手をパチンパチンしている。
面白かったところを自分でも真似てみて、どうも思い出し笑いをしているようだ。へー1歳児ってもうそんな知能があるんだぁ。

突然始まった息子のドツボの笑いに、母は腑抜け顔。蚊もどっかに行ってしまった。

そうして私も雨の中のイレギュラー対応でなんだか疲れていたのかもしれない。
息子の笑い声につられて自然とケラケラ笑ってしまった。

こんな他愛もないことだったけど、この時ばかりは、たった1歳の子供とだいの大人が同じ気持ちで笑っていた。
この間まで赤ちゃんで、守ってあげなきゃと思っていた子に、まさか笑わせられちゃう日が来るなんて。

それからしばらくは、どちらかの笑いがおさまりそうになると、またどちらかがパチンパチンと手を叩いた。二人の笑いは止まらなかった。

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