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スクールカウンセラー、マスクについて考える

みんなでマスクの学校


 
学校はずっとウィルスにおびやかされている
子どもたちはずっとマスクを着けている
小学低学年の子もけなげにマスクを外さない
大声で叫んだり、笑ったりすることもがまんしたまま3年がすぎた
マスクなしですごせる学校はいつもどるのか
 
みんなと同じようにマスクをしているのが良い子
マスクを忘れた子は申し訳なさそうに保健室にもらいに来る
ウイルスを移さないように 迷惑をかけてはいけないから
 
肌の感覚が刺激に敏感な子どもたちもいる
鼻呼吸が苦手な子どもたちもいる
そういう子にとって、つねにマスクを着けることはかなりの苦痛だ
一人ひとりの感覚や体験は同じではない
ただ、マスクに関してはそういう事情が許されない
みなと同じようにふるまわないといけない
それは文字通り「息苦しい」ことだろう
 

マスクについての思い出


 
スクールカウンセラー(SC)はコロナ禍以前の学校のことを思いだす
あのころは、マスクを着けることのほうがイレギュラーだったはずだ
 
「あの生徒はいつもマスクをつけっぱなしだ」とある先生が言い出した
中2の女生徒
うつむきがちで人と話す場面が少ない
前髪を長くのばして、目が隠れていて表情にとぼしい
クラスの子と話すことも少ないようだった
「給食のときも、音楽の歌練習でもずっとマスクを着けたままなんです。
外すように言っても、かたくなにこばみます」
先生は困ったように話す
SC「マスクを着けていることで、何か迷惑がかかるんですか?」
 「だって変じゃないですか?花粉症の時期でもないのに、いつもマスクつ  
 けっぱなしなんて、だいたい表情が見えないと相手に失礼でしょう」
SCにはよくわからない理由だ・・・
先生はこう思っているらしい
(マスクは口元をかくす。すると人と話さなくなる。もともと内向的で人とかかわらない生徒だから、マスクをつけるとよけいコミュニケーションをとらなくなる。それはあの子のためにならない)
 「それにあの子は、前髪を伸ばしていて目が隠れています。あれは校則違 
 反ですから。短くカットさせないと・・・」
 いろいろな理由はあるが
先生は彼女がマスクや前髪によって、人と関わらないことを心配しているらしい
SCは(その子の自由ではないですか?)と思いつつ、こう応える
「もしかしたら、人と話したくないのには、それなりの嫌な体験があったのかもしれませんね。いじめられたとか・・・」
 

口元はこころのまど


 
SCは、子どもと話すとき、口元に気をつける
表情やしぐさはこころを物語る
ことばよりも顔つきのほうが、多くを表現することもある
本人も気づいていないことが、目や口から漏れることもある
拒むようにぎゅっと引き締まった口元、何か言いたいように動くくちびる、思わずもれ出るため息など

SCは、無理にことばを探すよりも、口元から本音を感じて、それ以上せんさくしないこともある
 
マスクを外さないというのは、口元からもれ出るこころを守っているということだろう
それにはそれなりの理由があるはずだ
髪で目をかくすというのも同じだろう
目や口にカーテンをかけて、そっとこころの外を見ている
そういう子どもの敏感なこころをそっとしておくのも大事だ
 
 

常識はかわる



コロナ禍を経て、常識はずいぶん変わった
マスクをしたままのコミュニケーションが普通になった
オンラインではじめて「あの人って、こんな表情してるんだ」と気づいたりする
以前は、「人前でマスクをしているなんて無礼」と言っていたのに、今や真逆になってしまった
あのとき、マスクをつけっぱなしだった女生徒は今どう感じているだろう?
 
いつかコロナ感染のリスクが減れば、今度は学校でも「みんなでマスクを外して、どんどんコミュニケーションをとりましょう!」と言い出す人たちが出てくるだろう
 
そのときSCはこう言うつもりだ
「もう、子どもたちの好きにさせてください!」
 
 
 

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