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ノルウェーと日本のジェンダー観の違いが及ぼす、子育ての違い

本日、興味深いウェビナーがあったので参加しました。
ノルウェーがどのように現在のジェンダー状況を実現したか学び、日本の現状と比較することで、日本を変える政策提言を行うことが目的のウェビナーです。
ノルウェーで子育てをして、「なぜ日本はこんなに不自由なの?」と思うのですが、その理由が少しわかりました。
今回はウェビナーの内容を一部抜粋し、考えたことをまとめます。

ウェビナー情報
タイトル:「日本の女性  新しい社会像を求めて」
主催:コンラート・アデナウアー・シュティフトゥング(ドイツの政治財団)
モデレーター:菅野 志桜里
講演者:水無田 気流(詩人/國學院大學 経済学部 教授)
    Guro Korsnes Kristensen(ノルウェー科学技術大学 総合文化研究学科 教授)

ジェンダー観が及ぼす、日本の子育て

ノルウェーと比較して、日本で子育てがしにくい理由って沢山あると思うのですが、やはり、根底にあるのはジェンダー観だろうと思います。
(※ウェビナーは「子育て」に焦点を当てたものではありません。)

どうやって日本のジェンダー観が形成されたのか、水無田氏曰く、日本が近代化する際、形式的な制度は欧米から比較的安易に構築できたが、ジェンダー観は輸入が難しく、現在でも女性の社会進出社会的・心理的なブレーキがある=高速近代化の歪み
ということです。

以下は、水無田氏による講演内容の一部抜粋とまとめです。

・江戸時代以前は、8割の女性が一次産業である農業や漁業に従事し、同居親族三世代の衣食住を管理していた(現代の専業主婦の役割とはやや異なる)。
・19世紀末に良妻賢母という言葉が生まれ、初めて女性に「賢さ」を求め、女性教育も注目されるように。
・高度経済成長期には、多くの家庭で夫のみ稼ぎで一家を養うことが可能になる。結果、戦前には上流階級のみ存在した「家事・育児に専念できる」女性が増加。また、核家族化が進み、両親と同居する家庭が減少。
・1950-60年代には「家庭は(男性が)癒される場であるべきだ」という文化があり、それに伴い女性像もつくられた。
・過去20年間、男女の家事負担割合はほぼ変わらず、総労働時間(仕事+育児)は女性の方が多い。
・1997年以降、共働き家庭が増加するものの、女性のフルタイムワーカーはほぼ増加せず。女性の管理職割合も15%弱と他国と比較し低い。

日本のジェンダー観の根本原因が、欧米から上手に輸入できなかったことにある、というのはもっともだな、と思いました。
男女平等の制度をいくら整えようと、江戸時代以前から脈々と受け継がれてきた文化が、そう簡単に変わるとも思えません。

ただ、面白いなと思ったのが、水無田氏が「日本は同調圧力社会なので、何か、コアに変革を促すような出来事があれば、一斉にぱーっと社会が変わる(同じ方向を向く)可能性がある」と言っていたことでした。
確かに、周囲の人が「パパが育休取らないなんて恥ずかしい!」「え、旦那さん子育てに参加してないの?(苦笑)」みたいな空気感になれば、日本社会は変わるのでしょう・・・。
日本社会の特質的に、確かにな〜と思いました。

また、男児平等を推進する制度もあるとはいえ、ノルウェーのように思い切った施策が少ないのも問題だったのでしょう。もう一人の講演者、Guro氏は「パパ・クオータ制度は非常に効果があった」と言っていました。
※パパ・クオータ制度:最長で54週間取得できる育児休暇のうち、15週間は父親しか取得できない。父親が育休を取らなければ、権利が消滅する。

近年のノルウェーのトレンドと問題点

Guro氏の講演の中で、最近のノルウェーのトレンドとして語られた内容が興味深かったので紹介します。

・近年、ノルウェーの若い世代では男女平等を実現するために、移民メイドを利用する家庭が多い。
 ※移民メイド:他国からやってきて、ノルウェー人家庭でお手伝いさんとして働き、生計を立てる人
・移民メイドの多くは女性。1. 利用している家庭はハッピーでも、世界的に見ると女性の家事負担を増加させている、2. 人種間のヒエラルキーを生む可能性がある、という問題点がある。
・家事育児=女性がするもの、というステレオタイプを強化する懸念もあり。
・上記問題点から、移民メイドは男女平等を推進する長期的な解決法・施策にはならない。

超シンプルで質素な食事(失礼)で、日本人よりはるかに炊事負担は少なそうなノルウェー人でさえ、誰かの手を借りなければ、女性の家事負担を減らし、男性同様社会に出る、というのは難しいのでしょう。

移民メイドに関しては、Facebookの子育てページでも、「ベビーシッターやります」という投稿が目立ちます。フルタイム希望で、その仕事のためにノルウェーに来たと見受けられる人もチラホラ。

「さすが欧米はベビーシッターも気軽に利用するんだな〜」くらいにしか考えていなかったですが、より広い視点で見ると、上記のような問題点もあるようです。自国の男女平等が推進されることでも、世界的にネガティブな影響があるかもと懸念するあたり、さすがノルウェーといったところ。

パパに主導権を握らせることの大切さ

「ノルウェーがどのように現在のジェンダー状況を実現したか学ぶ」ことができるウェビナーだったはずですが、Guro氏の講演では、ノルウェーのジェンダー観の変遷は、そこまで詳細は語られませんでした。

ただ、意外にも精神的な話が登場しました。
パパ・クオーター制は、夫の育児や家事に対する責任感を増加させますが、その時に重要なのが「夫がそういった役割を果たすべき時に、妻がしっかりと身を引く」とのことです。
家の中でのリーダーシップを妻が手放すこと。な、なるほど・・・。
夫が家庭で責任が持とうとした際、妻が許さない状況を避けること。な、な、なるほど・・・。

なんだか耳が痛い話です。そしてジェンダーのプロに言われると、説得力が半端ないですね。

結局は、どんな家庭でありたいか

色々と納得させられることが多かったウェビナーでしたが、一番納得したのはこれかもしれません。

結局、どういった生活をしたいか。どんな家庭でありたいか。

おっしゃる通り、家庭文化を見直すことが、ジェンダー観にも繋がるのだと思います。

例えば現在の私は、ノルウェーに感化されているので、
・フルタイム共働き
・夫婦ともに子供としっかり向き合う時間が欲しい
・子供の生活リズムは守りたい(7時起床、19時就寝)
・夫と二人の時間や、自分の趣味や仕事以外の時間も大切にしたい
というのが、理想です(あくまで、理想)。

となると、
・自分もしっかり稼いで、旦那と家事育児を分担し、
・子供との時間を作るために、朝食やお弁当は凝って作らず、外食も積極的に利用して炊事時間を減らし、
・生活リズムを守るために、子供には高頻度で習い事をさせず、平日は飲み会を控え、
・大人時間の確保のために、月何回かはベビーシッターを利用
と、こんな風になるのだと思います。

日本の場合、女性が働きながら、毎日手の込んだキャラ弁や栄養価の高い献立を考え、子供には沢山の習い事をさせて慌ただしい夜をおくり、仕事の飲み会にも高頻度で付き合い、ベビーシッターに頼らず夫婦(もしくは夫が参画しない為に自分だけ)でなんとかしよう!とする人が多いので、
いくら制度を整えても、女性の家事負担は減らず、水無田氏が唱える「日本人女性超人化計画」になるのでしょう。
こんな生活ができたら、もう超人も超人です。無茶振り過ぎますね。

以上、私が気になった点のみ切り取ったので、本来のウェビナーの内容とはかけ離れている懸念もありますが(笑)、
最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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