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【雑記】練習嫌いだった僕が大人になった今でもピアノを続けている理由。

僕はピアノが上手くない。
小学1年生から20歳になるまで14年間も習っていたのに。普通14年も1つのことを続ければそこそこの腕前になっているものだが、僕はそうはならなかった。

上達しなかった理由は単純で、ほとんどピアノの練習をしなかったからだ。イスに長時間座っていることが苦手だった僕にとって、ピアノの練習は1日5分も出来れば良いほうだった。

それでも、ピアノを辞めなかったのは偏に先生のおかげだった。僕が通っていたピアノ教室の先生は近所でも優しいと評判で、ほとんど練習せずにレッスンに行っても怒られたことは一度もない。

先生は練習してこなかった僕を叱るのではなく、少しでもやる気になるように好きなアニメの曲を演奏したり、流行りの曲の楽譜を用意してくれたりした。ピアノは好きではなかったが、先生のことは大好きだった。結局、高校生になるまでピアノを続けたのは先生に会いたかったからだ。

そんな、ほとんど練習をしない状況が高校生になって一変した。高校入学後、友人に誘われて軽音部に入部した僕はピアノ経験者ということもあり、いくつかのライブに出演することになった。

今まで、まともに練習をしたこともない僕だったがライブに出るようになると、演奏する楽しさが少しずつ分かるようになった。軽音部に入部して半年が経つ頃には、毎日ピアノを触ることが当たり前になっていた。

バンドを始めた結果、僕のピアノのレッスンに対する姿勢は大きく変わった。

毎日ピアノの練習をすることは勿論、積極的に先生からテクニックを学ぼうと努力した。先生は僕の変わりように本気で驚いていた。でも、それ以上に僕がピアノを好きなったことを喜んでくれた。

当時の練習量を見て先生は「小中の9年間と高校3年間の密度が同じ」と言っていた。ひどいことを言われているような気もするが、正直その通りだった(笑)。それくらい小中の9年間は練習をしていなかったし、逆に高校の3年間はバカみたいに練習をしていた。

真面目に練習するようになると、一つの疑問が僕の中に浮かんだ。それは「練習をしない僕をどうして先生は怒らなかったのか?」ということだった。普通に考えて先生は僕を叱りつけてもいいし、指導する際に叱るピアノ教室なんて山ほどあった。

でも、先生は一度も怒らず、根気強く僕にピアノを教えてくれた。勿論、先生は僕の親から月謝を貰っていた。だから、お金のためと言えばそれまでかもしれない。

しかし、それを差し置いても僕の練習のしなさは先生にとってストレスだったはずだ。先生は近所でも評判の先生だったし、生徒の数は多かった。僕を辞めさせたところでお金に困ることはなかったと思う。

結局僕は、自分の中で納得する答えが出せなかったので、先生に直接たずねることにした。

「先生はどうして、練習をしてこなかった僕を怒らなかったんですか?」

質問に対する先生の答えは

「怒って上手くなるなら、私は怒るよ。でも〇〇君(僕の本名)は怒ったらピアノを嫌いになるなと思ったから、そうしなかった。」

という単純なものだった。

 返事を聞いて僕は、先生の優しさに対する感謝と、練習をしていなかったことの申し訳なさで何も言えなくなった。黙っている僕を見て先生は何も言わずに、レッスンを再開してくれた。その日の帰り道、心の底から思った。

「この先生にピアノを教えてもらえて良かった。」

 練習をしない生徒を叱ることは簡単だ。しかし、叱ってしまえばただでさえ興味のないピアノを嫌いになることを先生は分かっていたのだろう。だからこそ、流行りの曲やアニメの曲の楽譜を用意するなどの、工夫を凝らしてくれたのだと思う。

人に何かを指導する時、どんな教え方をするかは人それぞれだ。厳しい指導もあれば、優しい指導もある。でも、僕は工夫を凝らして根気強く付き合っていく指導を超えるものはないと思っている。その理由は、この記事を最後まで読んでくれたあなたには伝わっているはずだ。

僕もいつか先生のような教え方ができる大人になれたら良いな。

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