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ショートショート |「ゲームの住人」

もし、この世界がゲームだったらどうする。

この世界がゲームだったらね。この世界がゲームって知ってるのは自分だけって設定でいいの?

そうだな。知ってるのは自分だけって設定にしよう。

事実を知ってるのが自分だけなら、私はどうもしないかな。今まで通りの日常を送るよ。

意外と冷めてるのな。みんなに教えたりしないのか。

だって、証明できないことを主張しても誰も信じてくれないでしょ?それとも、私はこの世界がゲームだって証明できる証拠を持ってたりするの?

いや、そんなものは持ってない。

だったら、やっぱり普段通り生きるしかないかな。


逆に君はどうする?もし、この世界がゲームだって分かったら。

うーん。どうにかしてゲームを作った人に会いたいな。会って俺がゲームの中でどんな役割を持っているのか聞くよ。

そっか。教えてくれるかな。ゲームの製作者は。

教えてくれるんじゃないかな。そんなこと聞いてくるキャラクターがいたら面白いだろう。

面白がってくれるかな。もしかしたら気味悪がって電源を切られちゃうかもよ。

電源を切られるのは嫌だな。それって強制的なゲームオーバーみたいなもんじゃないか。

ゲームオーバーより残酷かもね。二度と電源をつけてもらえない可能性もあるし。

二度と電源がつかなかったら、俺って存在はどうなるんだろうな。

ゲームという物体は存在しているけど、ゲームの中にいる君は活動していない状態になるのかな。

それって死んでるのと、どこが違うんだろうな。

そもそも、ゲームの登場人物は生きてはいないんじゃないの。

でも、俺は自分が生きていると信じているし、自分が人間だって疑ったことはない。

みんなそうだよ。普通、自分が人間かどうか疑う事なんてないはずだよ。

だったらこの疑問を持った俺は変なのかな。

女は男の言葉に答えなかった。
男の疑問が、至極まっとうなものであると分かっていたから。




ショートショート No.2

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