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3月の読書感想文:ブランドの世紀/山田登世子先生

1.購入したきっかけ

昨年、四天王寺で開催されている秋の古本市に訪れてこちらの本を購入した。

お店の本棚に並んでいるのを見て、「ココ・シャネル」などブランドの創始者の映画のCMを最近よく見かけるな〜と思い、何となく手に取ったのがきっかけだった。

買ってみたものの今に至るまで、積読状態になってしまっていた。しかし、読み始めてみるとページを捲るのが止まらないくらい、読んでいて面白く読まなかったのを後悔したくらいだ!

2.ブランドを知らない私でも楽しめる

ブランドバッグも持っていないし、ブランド自体もあまり興味はない。
持っている自分がかっこいいorかわいいだけで、ブランド価値をわかってる人っていないんじゃないかと偏見さえ持ってた。
完全に酸っぱい葡萄である。

その点ハンドメイドは好きで、百貨店で買うよりはminneでアクセサリー等買うことが多かった。

その理由を考えてみると、希少性と作り手のこだわりに価値があると考えるため。

この本を読むと同じ理由で世界に名高いブランドたちも、時代ごとに愛されてきたんだなぁと分かって、もっと「エルメス」や「ルイ・ヴィトン」、「ココ・シャネル」など深掘りして知りたい!と思うようになった。

3.時代背景からのアプローチで分かりやすく面白い

あとがきで書かれていたが、山田先生はもともとブランドものが好きだったわけではないという点が興味深い。
もとは、フランスの世紀末リゾートを専門で研究されていて、リゾートは旅の文化史と密接に関わっているので、交通の歴史を調べていくうちにルイ・ヴィトンに出会い、そこからどんどん探究心を深められるうちにブランドそのものが気になり、ブランド論を研究されるようになったようだ。

ここで、リゾート→交通→ルイ・ヴィトン?
というように?で頭がいっぱいになった方、ぜひこの本を読んでほしい!
知的好奇心が刺激されるので、読み応え抜群だった。

歴史的なアプローチでブランド論を紐解いていく方法は、当時の人がどういうことを考えて生活していたのかを知ることができるので、すごく好きだ。
生活背景を知り、もし自分が当時生まれていたらと想像するのが楽しい。

またブランドが出来始めた1920年代は、まだ映画とかもないので当時のリアルな時代背景を知るには小説や絵画が分かりやすいのだけど、作中では様々な文豪たちの作品が紹介されるので、この本を読み終わったあとに気になった時代の作品を読むと、よりリアルに当時の情景の理解を深めることができていいんじゃないかなぁと考えた。

フランスの章でリゾート史の話を読んでいるとき、夏目漱石の「こころ」 で私と先生が最初に出会った海のシーンをふと思い出した。
当然こころでブランド論は展開されていないけど海で静養するという点では、夏目漱石も留学で影響を受けたのかなぁ?と考えられ、点と点が繋がる感覚が面白かった。

また、私は竹下夢二の作品が好きなのだが、なぜ彼の絵はこんなにもモダンガールがレトロ可愛い絵なのかというのも、日本のブランド展開の章で理解を深められるので面白い。

興味の幅を広げていってくれる展開で、かつ、堅い文章ではないのでブランドを知らない人でも知識を得られることができ、
ブランド好きな人にとっては、歴史的背景からよりそのブランドストーリーの理解を深めることができるので、とてもオススメの本だ。

4.この本を読んで考えたこと

第4章では、日本でブランドがどのように展開されていったかが論じられている。

ブランド感覚が成立したのは、1970年代を迎えてかららしい。

アパレル産業の飛躍的発展と、広く商品情報を流通させるメディアの成立、そして何より経済的に豊かな消費社会の到来をまってはじめてブランド現象は立ち起こる。

P187,「ブランドの世紀」/山田登世子

そして、1980年代のバブル景気で浮かれてブランドバッグを買い漁っていた当時を、ブランドと大衆の「おかしな」関係として紹介されている。

実際の話、ブランドと大衆がミスマッチであるのと同じくらい《ブランド》と《流行》もまた本来なら相反する二つの現象のはずなのだ。(中略)
いかにも今風の流行をとりいれたファッションが「今」を過ぎたらたちまち古びてしまうのと対象的に、流行に左右されないことがブランドの価値の一つでもあるのだ。

P221,「ブランドの世紀」/山田登世子

そのため欧米では年齢層の高い人びとがブランドを購入する。一方日本ではファッションに敏感な20・30代の若い女性が精力的にブランド品を購入する。しかも、雑誌でプラダ特集が組まれればプラダに駆け込み、エルメスを推せばエルメスに。

本来流行感覚とブランド感覚は相反するものなのに、矛盾なく共存している。

このことから日本では「おかしな」関係が成立したと書かれている。

どうしてこうなったかというと、日本独特のかわいい文化だ。
いまや世界にもkawaiiとして広まっているあの感覚。
このことに関しても分かりやすく紐解かれているのだけど、ここでは割愛させていただき
私がこの本を読んで考えたことは、山田先生は今のインフルエンサーなど2010年以降の消費感覚をどう捉えられているのかを知りたいということ。

1980年代から2000年代は、まだ雑誌に勢いがあったころ。雑誌を見て消費欲を高めブランド品を買い漁る、流行を知るといえばファッション雑誌だった時代。
では今、SNSでインフルエンサーと呼ばれるもとは普通※の人だった女性を介し消費者が消費欲を高めているこの状況を、山田先生はどういう風に考えられているんだろう?と興味がある。(※ここでの普通というのは、モデルなどの芸能人ではないという意味で書いてます)

5.知的好奇心の爆発


この本を読んで、このケースはどうなるんだろう?や、ここをもっと深掘りして知りたい!など興味がぽこぽこ生まれてきた。
お金と時間があるならもう一度大学に通いたい、あっ、でもテストはなしで(笑)

堅苦しくない読みやすい文章で、なんとなく肌感覚で知っていることが論理的に説明され腑に落ちるのが楽しかった。
今インターネットで何でも調べられるけど、体系的に物事の理解を深めるには、やはり本が重要だなぁと考える。

ぜひブランド好きの人もブランドをあまり知らない人にも読んでもらいたい1冊である。



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