#17 石の上にも3年いなかった看護師の話
「石の上にも3年、病棟勤務も3年しないと通用しないよ。」と言われてから、早いもので病院から転職をして早2年が経過しました。
今日は、年末ということで、なぜ僕が転職をしたのか、今いる職場で感じている事を書き残したいと思います。
少し長くなりそうですが、どうぞよろしくです。
病院時代のこと
新卒で入職した病院は、そこそこ大きい地域の中核を担う病院でした。
私は主に消化器外科の患者さんのケアを行なっていましたが、消化器症状の患者さんだけではなく、比較的に症状が軽い肺炎の患者さんから、がん末期の緩和的ケアが必要な患者さんのケアまで幅広い健康レベルの患者さんのケアに関わってきました。
地域柄でもありますが、関わっていた患者さんのほとんどが70歳を超える高齢の方であり、治療を行うことで、その人が持っている「病気」を治療することはできたが、治療を行う中で日々衰弱する体力や、認知力の低下、さらには自宅で過ごしていたが家に帰ることができないという場面をいくつも見てきました。
そのような、患者さん本人が持っている“暮らしを営む力”が低下していると分かっていながらも、「治療のためですから」と、本人が持っている力、特に身体機能ではなく、生活の視点についてあまり考えないで日々の治療を行うことにどこか違和感を覚えていました。
そんな中で、Aさんという患者さんと出会いました。Aさんは、在宅で暮らしていたが、医療的なケアが継続して必要であり、退院後は、施設に入所しなければならなかった。
退院前のAさんより
「施設には行きたくないよ。出来れば家に帰りたい。」
私はその言葉を聞き、「在宅に帰す手段は他になかったのか。」と同時に「施設に行きたくないのは、施設の印象が悪いのかもしれない。」と感じました。
施設に入所することは、病院にはいられないが、在宅にも帰ることが出来ない人への『消去法的な選択』となっていることが多く、施設入所を選択された本人にとっては、「私は捨てられた」と表現する人もいる。また、家族の中でも、施設に入れてしまい申し訳ない。と情けないなどの感情を抱く家族も少なくない。
病院で感じた「ケアの違和感」と、Aさんとの関わりのなかで、「本当に自分がしたい看護ってなんだっけ」、と自問自答を繰り返しました。
そんな中、千葉県香取郡にある「恋する豚研究所」という施設のことを知りました。
素敵な木材の外観に、美味しい料理、はじめは素敵なお店だなと思っていました。
しかし、運営している法人が社会福祉法人であり、さらに働いている人の中には障害をもつ方も働いていると知り驚きました。
なぜなら、お店中のどこを探しても「福祉」という言葉は使われていなかったからです。また、素敵な福祉の法人であること、特別養護老人ホームも運営していることも知り、友人を通じて、理事長とお話をする機会を設けてもらいました。
そこで、私が病院で働く中で感じる違和感や、在宅医療は発展してきているのに、特養をはじめ施設ケアは患者、家族そして医療者からも正しく理解されていないことを伝えました。
すると理事長より、
「私はそんなに目がよくないけど、今は眼鏡があることで、ものがはっきり見える。もし、眼鏡がなければ私はものが見えないから、私には“ケア”が必要になる。つまり、ケアっていうのは単純に病気を治すことだけではないでしょう。」
この言葉を聞き、私ははっとさせられました。私にとって、病院で行なっていたケアは、ただ単に「病気」を治すためのアプローチであり、私が本当に提供したかった、「暮らしを整える看護」が提供できるのではないかと思い、同法人へ転職を決めました。
当時の私は、病院での勤務が2年未満であったため、先輩や大学の先生から「まだ転職には早いのではないか。」「通用しない」「施設に逃げるの?」などあまり転職をオススメしない言葉をもらったが、まずはやって見ないと分からないと思い病院を辞めました。
施設看護師として働く
私が働く前に抱いていた「施設看護」のイメージは
・慢性疾患であるため状態の変化が起きにくい。(急変が少ない)
・スケジュールがゆったり、余裕がある。
・お局的な看護師が施設を牛耳っている。
などなど、いわゆる病院のヒリヒリした日常よりも、ゆったりとした日常が待っていると思っていました。
しかし実際に施設で働くと、病院で働いている時よりも何倍も考えながらケアを組み立てる必要がありました。
施設ケアは在宅と違って、多種多様な生活レベル、価値観を持った方の住む集団生活の場であるため、1個人の生活を考えながら、小集団のコミュニティの生活を、「管理」ではなく「生活を整える」ことに焦点をあてながらケアを考えていくことが大切になること、生活の場において、必ずしも「医療」の存在は重要視が高くない。生活の場では、本人の抱えている病気が進行しないように、かつ本人の望む生活を行えるようにサポートを行うことが必要だとわかりました。
また、昨年関東を襲った、台風・大雨などの自然災害、新型コロナウィルウ感染症といった感染症などが、高齢者施設にもたらす影響はとても大きいことを知りました。
病院のような、十分な機能がない中で、有事の際に、いか有効な予防的対策を取るのか、発生した場合に最小限の被害で抑えていくのかなどを、現場の実情に合わせてシュミレーションし、考えられる頭・チームを作るための学びの場を継続して持つことが大切だと感じているところです。
最後に、看護の役割とは何でしょうか。
医師の指示のもと治療を行うことだけが私たち看護師の役割なのでしょうか。
今時点の私の仮説として、看護の役割とは「生活を整えるために、正しく対象の生活を観察すること」だと思っています。
だからこそ、病院だけでなく、在宅、施設、地域、様々な場所に看護を必要としている人がいます。
私自身まだまだ正しく対象を看ることはできていないと思いますが、日々悩み、いろんな角度から考えながら最適解を目指して行きたいと思います。
さて、2021年は、転職をして3年目の年になります。
病院では3年在籍していませんが、施設看護師として3年目に突入します。
看護キャリアの中で迷っている方へ、私の活動が届けばいいなと思っています。もし興味がある方は、ぜひお声がけください。
一緒に“暮らしを整える看護師”になれるようお待ちしております。どこかでお会いできることを楽しみにしています!
それでは、みなさま良いお年を〜🎍
PS.
今日のBGMはスガシカオさんの「progress」でした。
ベタですが、横一列でスタートを切らなくても良いと思うので楽しく生きてたいです
ぼくらは位置について 横一列でスタートをきった
つまずいている あいつのことを見て
本当はシメシメと思っていた
誰かを許せたり 大切な人を守れたり
いまだ何一つ サマになっていやしない
相変わらず あの日のダメな ぼく
ずっと探していた 理想の自分って
もうちょっとカッコよかったけれど
ぼくが歩いてきた 日々と道のりを
ほんとは"ジブン"っていうらしい
世界中にあふれているため息と
君とぼくの甘酸っぱい挫折に捧ぐ・・・
"あと一歩だけ、前に 進もう
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?