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行動経済学と誘導的UX

予想どおりに不合理

ユーザーの行動を考えるとき、行動経済学とゲーミフィケーションで、
ナッジ(人々が強制によってではなく自発的に望ましい行動を選択するよう促す仕掛けや手法)を利用することがあります。

行動経済学は人間の「感情によって合理的な判断が歪む」性質を研究している学問です。近年ではダニエル・カーネマン教授の『プロスペクト理論』や『ファスト&スロー』、ダン・アリエリー教授の『予想どおりに不合理』、リチャード・セイラー教授の『行動経済学の逆襲』が有名になっております。

従来の経済学が「人は自身の満足のためには合理的に動く」としたのに対し
行動経済学は「人は必ずしも合理的には動かない」としています。

つまり、その物や現象の良しあしに対する客観的な絶対評価よりも、
物事をどう感じるかという主観的な比較評価(認知的近道、ヒューリスティクス)により人間の選択が左右される心理傾向があるのです。

世にあるWebシステムやソフトウェアでも、この仕組みが使われていることが多いです。このように「なぜか自然と」「どうしてかわからないけれど」行動してしまうように仕向ける(誘導する)ことも、UXを考えてサービスを設計する際には必要です。

但し、使い所をうまくしないと、善にも悪にもなりますから、自覚的になりましょう。

行動経済学のまとめnote

この2つのnoteを読んでおけば大丈夫だな、というnoteです。


行動経済学の原理たちと活用例

原理はたくさんあるのですが、そのなかでも重要なものを書き出しました。
サービス提供側が考慮するだけでなく、サービスの受け手として、このような設定が隠されていないか?を確認することも必要ですね。

1. コミットメント

ゴールに向けて行動すればするほど、その行動から逃れにくくなる。

例;「あなたの得たい結果は何ですか?」と聞いて、実際に紙などに書き出してもらう。

2. 現状維持バイアス

今あるものに大きな価値を見出し、新しい行動に躊躇する。

例;「お試し期間」を設定する。
価値を感じたお客さんは「手放したくない」と感じるようになり結果、お試し期間が終了した時にお金を支払ってくれる

3. 選択的意思決定

コミットメントが強ければ強いほど、たとえそれが間違った選択だったとしても「その選択をした自分は正しい!」と思い込み自分の都合のよい情報だけを集めてしまう。

例;説得材料が多く、繰り返されるLP

4. 後悔回避

コミットメントが強ければ強いほど、期待と逆の結果に「後悔」という感情を抱く。

例;「あのとき買っておけばよかった」と後悔したくないから、株を買わない。

5. 松竹梅

3つの選択肢の真ん中を選ぶ。

例;商品・サービスの選択肢が2つのとき、人は「自分にとって必要なほう」を選択する。3つになると「安さ」を本来は必要としていた人に「見栄」という心理状態が加わり、真ん中の選択肢「竹」に選択を変える人が出てくる。

6. アンカリング効果

最初に印象に残った数字や物が、その後の判断に大きく影響を及ぼす。

例;「通常価格○○円のところを、△△%オフの□□円で販売します!」

7. 初頭効果

最初に得た情報によって後の情報の価値判断に影響を受ける。

例;知的・勤勉・衝動的・批判的・頑固・嫉妬深い
と、示された人物Aさんの印象を尋ねると好印象
嫉妬深い・頑固・批判的・衝動的・勤勉・知的
と、Aとは逆に並べただけの特徴を示したBさんの印象を尋ねると悪い印象

8. ピークエンドの法則

あらゆる経験の快楽・苦痛の記憶は、ほぼ完全にピーク時と終了時の快楽・苦痛の度合いで決まる。

例;メルマガで何か情報を提供したら、文末に「まとめ」を入れる。それによって、読者は一気に情報が整理され「勉強し、成長した気分」になり、「あの人から学ぶことは勉強になる」と記憶づけてくれる。

9. 利用可能性

ある事象が起きる確率や頻度を考える際に、最近の事例やかつての顕著な事例と特徴を思い出すことで評価する。

例;「1ヶ月前にテレビでやっていた黒酢ダイエットよりも、
昨日やっていたまいたけダイエット」のほうに、強く影響される。

10. 気質効果

損をする意思決定をするようなとき、心のなかで満足できる言い訳を自分で作って納得してしまう。

例;「今まで成功できなかったのはあなたのせいではありません。○○のせいです」と相手の言い分を代弁してあげる。

11. 心理的リアクタンス

ある立場を強いる説得を受けると、その圧力を自由への脅威だと考え、反発する。

例;「もし迷っているなら買わないで下さい。なぜなら〜」

12. フレーミング効果

意思決定のとき、質問や問題の提示のされ方によって選択・選好の結果が異なることがある。

例;「生存率95%」なのか「死亡率5%」なのか

13. ウィンザー効果

何かを直接言われるよりも、第三者から間接的に言われたほうが信頼性が増す。

例;レビュー、口コミ

14. 希少性の法則

これは、いつでも手に入るものは価値が低く、数が少ないものは価値が高いと考える。

例;コロナ禍でのマスク、トイレットペーパーなど

15. ツァイガルニック効果

人は達成できなかった物事や、中断している物事に対して、より強い記憶や印象を持つ。

例;「続きはCMのあとで!」

16. テンション・リダクション効果

緊張状態がなくなったあとは注意力が下がってしまう。

例;お金を払ってもらった瞬間、別の商品を買ってもらう「追加でこちらも必要じゃありませんか?」

17. バーナム効果

誰にでも当てはまるような曖昧なことを、自分に向けられたメッセージだ!と思ってしまう。

例;占い師「あなたって優柔不断だけど、潔い一面もあるでしょ?」

18. バンドワゴン効果

特定の製品・サービスを支持する人が多ければ多いほど、顧客がそれによって得る満足・安心感が増加する。

例;行列のできる店

19. 権威への服従原理

人間は無意識に「権威者」の命令に従い、盲目的に要求に応じてしまう

例;そろばん計算全国一位の学生監修!東大クイズ王推薦!

20. ザイオンス効果

同じ人や物に接する回数が増えるほど、その対象に対して好意を持つようになる。

例;テレビのCMで短期間集中して商品をプロモーション

21. 返報性の原理

人が他人から何かの施しを受けた場合に、お返しをしなければならないという意識を持つ。

例;「無料でこんなに教えてくれるなんて凄い!」
友人から奢ってもらったら、次は奢り返さないとなんだか気持ちが悪い。



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