SDGsマーケティング施策事例研究 Vol. 4 :ネスレ日本株式会社 KitKat(キットカット)のごみ問題解決を後押し YouTubeチャンネル #キットずっとプロジェクト で 「知る」からスタート
このnoteのポイント
1. キットカットが取り組む「#キットずっと」プロジェクトのコンテンツの1つ、公式YouTubeチャンネルでのドキュメンタリー動画シリーズを紹介。
2. キットカットの主要ターゲットであるZ世代を意識したホストやインタビュー先の選定を行うことで、ブランドのこれまでとこれからをうまく繋げている。
3. サステナビリティ分野でネットワークを持ち、コンテンツ制作を自らも行えるホストを選ぶことで、比較的低予算で長期的にコンテンツを制作できる。
こんにちは、Good Tideチームの太田です。
今回ご紹介するのは、ネスレ日本株式会社の主力ブランド「KitKat(キットカット)」が取り組む「#キットずっと」プロジェクトの一環であるYouTubeでのドキュメンタリー番組です。
ネスレは2018年4月に全社で製品の包装材料を2025年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にするというコミットメントを発表しており、それを受けて日本ではキットカットが大袋製品の外装をプラスチックから紙パッケージに切り替えました。
キットカットはメジャーかつ人気のお菓子ですが、日本では特に受験シーズンに応援メッセージを伝えるツールにもなっています。そしてこの紙パッケージ化もキットカットからのメッセージの1つ。
紙パッケージへの切り替えにより年間380万トンのプラスチックごみ減量につながるという量的な貢献だけでなく、紙パッケージ化することで生活者にごみ問題の深刻さ、そして明日から何ができるかを「一緒に考える」ことを呼びかけています。
それではさっそく、キットカットの取り組みを見ていきましょう!
1. ブランドのサステナビリティに対する姿勢
スイスに本社を置き、世界最大の食品・飲料会社であるネスレ。
サステナビリティの面では、2030年までに事業活動における環境インパクトを「ゼロ」とすることを目指した活動を続けています。
特に重きを置いている活動が、①水資源の無駄遣いの減少、②再生エネルギーの活用、③埋め立て廃棄物ゼロの達成、そして④サステナブルなパッケージへの変更です。
(参考:https://www.nestle.com/csv/global-initiatives/zero-environmental-impact)
パッケージのリニューアルについては、2018年4月に製品の包装材料を2025年までに100%リサイクル可能、あるいはリユース可能にするというコミットメントを発表。
日本ではキットカットが大袋製品の外装をプラスチック製品から紙パッケージに切り替えました。
現状は外袋のみですが、2022年までに小袋も含めたキットカットの包装すべてをリサイクルやリユースができるものに変える方針で、ネスレグループ全体では2025年までに全製品でリサイクルやリユース可能な包装に切り替えることを目標に掲げています。
(参考:https://www.asahi.com/articles/ASM8144JVM81PLFA006.html)
キットカットはただパッケージを変更するのではなく、その変化を生活者がごみ問題について知るきっかけとし、また楽しく取り組めるような工夫を提供していくために同時に「#キットずっと」プロジェクトを始動。
サイトでは紙パッケージとなった外袋を活用した折り紙アレンジや、売り上げの一部が「一般社団法人 ゼロ・ウェイスト・ジャパン」の活動支援へ寄付される商品「キットカット オーシャンソルト」の紹介を行っています。
そして、そのプロジェクトの一部として始まったのが今回特に紹介したい施策、キットカット公式YouTubeチャンネルでのドキュメンタリー「#キットずっとプロジェクト」です。
2. 今回の施策の概要
キットカット公式YouTubeチャンネルのドキュメンタリー「#キットずっとプロジェクト」は、コロナ禍の2020年4月に開始され、2021年6月10日現在までに29本の動画を公開しています。
ホストには、特にファッション分野で精力的に環境問題・社会問題の啓発やアクションに取り組んでいるモデルでファッションブランドのディレクターの長谷川ミラさんを起用。
第1シーズンではごみ問題とリサイクルに向けた取り組みを行う自治体や企業への取材を中心に、第2シーズンではネスレの取り組みのほか長谷川ミラさんと同じZ世代を中心にサステナビリティ推進に取り組む個人や団体を取材。各動画で取り上げる課題に対して理解を深めるだけでなく、取材した方それぞれの想いやアクションを後押ししています。
ターゲットは、キットカットを子どものおやつとして購入するファミリー世代だけでなく、長谷川ミラさんと同世代のZ世代やミレニアル世代といった若年層を意識しているように感じます。
(#キットずっとプロジェクト 動画の一部)
長谷川ミラさん自身も環境・社会問題について勉強している途中であること、またネスレも企業として紙パッケージ化に取り組んだもののまだまだ社内理解の促進や努力の途上であることを伝えた上で、各分野の識者に素直な質問をぶつけることで問題の理解、そしていま自分に何ができるのか、ということを考えるきっかけを提供しています。
堅苦しいドキュメンタリーというよりは、「そういうことが起こっているのか」「これは共感できるけど、ここはまだあまり理解できないな」と、気楽に捉えてもらいながら、日常的にごみ問題や自分が気になる社会問題に意識を向けるようになるストーリーであると感じました。
3. 施策の仕組みと波及効果
この施策はYouTube番組で展開されているため、製品の購入などは必要なく、誰でも視聴することができます。
ただ番組の露出はまだまだ少なく、現状は下記いずれかからの視聴流入となっていると考えられます。
① プロジェクトローンチ時のリリース
② キットカット公式ウェブページ「#キットずっとプロジェクト」、またはキットカットのSNS
③ YouTube内での検索、またはレコメンド
プロモーションが少ないためか、2021年6月10日現在で「#キットずっとプロジェクト」29本の動画の総視聴回数は52,488回、うち半分ほどを露出が多かった第1回目の動画が占めます。
第1回の動画の視聴回数を除くと平均視聴回数は1動画あたり1,000回程度。
ソーシャルメディア上での「キットずっと」というワードのクチコミ合計数は70件(2020年8月1日~2021年6月10日、ブームリサーチ調べ)で、番組の波及効果は現状そこまでは高くないといえます。
4. 施策のポイント
目的とターゲットを踏まえて、今回の施策におけるコミュニケーションのポイントを考察してみます。
\ここがポイント/
等身大で正直なコメント:
各動画では、ホストの長谷川ミラさんだけでなくネスレの社員がどんな想いで取り組んでいるのか、正直に現在地を紹介しています。
わからないこと、困っていることをストレートに伝えることで上から目線の番組にならず、「ネスレと一緒に学び、取り組む」という当初のキャンペーンメッセージが伝わるドキュメンタリーとなっています。
ネットワークの活用:
サステナビリティ活動に取り組み、人脈・人望のある長谷川ミラさん自身が取材先を選びインタビューすることでインタビューされる側も正直なコメントができるだけでなく、長谷川ミラさんが自ら撮影することで企業要素のない(つくられた感のない)番組構成となっています。
他の番組にはない取材先というオリジナリティ、そして取材交渉も含めて(おそらく)制作コストを抑えられているという点も忘れてはいけません。その結果企業も無理なく継続的に生活者への啓蒙とネスレからのメッセージ発信につながっていると言えます。
そう考えると、コンテンツづくりにおいてはホストの選定が重要となる可能性が高いです。
環境・社会問題について知るだけでなく、Z世代のサステナビリティ活動を応援するような取り組みでもあっただけに、個人的には露出の少なさはキャンペーンとして少し残念に感じました。
5. あとがき
企業による啓蒙活動は近年、他のブランドでも見られる取り組みです。
それぞれのブランドがサステナブル活動への取り組みを通して得た知見を顧客に還元することで、「一緒に解決に取り組む」空気を作り出していることが特徴といえます。
WELEDA
100周年を記念し、これまで原料調達やパッケージ調達を通して解決に取り組んできた環境・社会問題について分かりやすくイラスト化したコンテンツ「YOU ARE NATURE.CONNECT 」を展開。
H&M
「つながる、たのしむ、サステナブルファッション」をテーマに、ファッションとサステナビリティについて楽しみながら学べるよう、「ファッション・コンテンツ」「クイズ・コンテンツ」などをとり入れた特別サイトを期間限定で開設。
今後企業が教育・啓もう活動に取り組む際は、ブランドならではの伝え方が実現できるプラットフォーム、ホスト(やイラストなどのリソース)の選定が重要となりそうです。
参考
キットカット 「#キットずっと」プロジェクトサイト:https://nestle.jp/brand/kit/kitzutto/
(2021/6/10)
キットカット公式YouTubeチャンネル #キットずっと プロジェクト 再生リスト:https://www.youtube.com/playlist?list=PLJuGTbAeRg5R03ANFMj-965VHlo8uqGtJ
(2021/6/10)
ネスレ サステナビリティについて:https://www.nestle.com/randd/sustainability
(2021/6/10)
ネスレ日本株式会社 プレスリリース:https://www.nestle.co.jp/sites/g/files/pydnoa331/files/2020-10/20200930_kitkat_1.pdf
(2021/6/10)
朝日新聞 2019/8/1 「キットカット、紙包装に プラスチック年380トン削減」:https://www.asahi.com/articles/ASM8144JVM81PLFA006.html
(2021/6/10)
The Sankei News 2020/4/21「『これからはサスティナブル時代。未来の日本は私たちが変える。』#キットずっと プロジェクト公式YouTubeチャンネル ホストにモデル・長谷川ミラを起用」:https://www.sankei.com/economy/news/200421/prl2004210004-n1.html
(2021/6/10)
PR Times 2021/6/5 「ヴェレダがSPECIAL COLLABORATION施策を始動」:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000101.000008079.html (2021/6/10)
通販通信 2021/6/8「H&M、サステナブルファッションの特設サイト「Always Be Conscious」開設」:https://www.tsuhannews.jp/shopblogs/detail/66889 (2021/6/10)
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