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共助と公助のジレンマ |GoodMorningゼミ #1 『わたしはダニエル・ブレイク』

こんにちは、GoodMorningの齊藤です🙋
今回のnoteでは、チーム内で社会課題についての学びを深めるためにスタートした読書会「GoodMorningゼミ」の様子をお届けします!

まずは、この度の豪雨災害でお亡くなりになられた方のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の皆さまにお悔やみを申し上げます。また、被害に遭われた地域の皆さまの安全と一日も早い復旧を心よりお祈り申し上げます。

👇 被災地の方々を支援するため緊急災害支援金の募集をしています。

月イチ読書会 「GoodMorningゼミ」 が始動

GoodMorningは、メンバーそれぞれが社会課題に関心を持っているチームですが、それぞれ専門領域や、興味のある分野は少しずつ異なります。
様々な視点から、一つのテーマについて対話することで、社会課題への学びのみならず、お互いについても深めていく時間になれば、との思いで月一回、読書会を開催することになりました。

読書会なので、もちろん予習課題があります。
今回の課題図書(映画)は、社会問題をテーマにした作品を多く手掛ける監督、ケン・ローチの作品で、2016年のカンヌ国際映画祭ではパルムドールを受賞している『わたしはダニエル・ブレイク』

心臓病を患ったダニエル・ブレイクが、障害年金を求めて制度の狭間で困窮する姿を描くことで、イギリスの貧困、社会保障、差別の現状に焦点を当てたドラマ作品です。
イギリスのニューカッスルという街のお話ですが、わたしたちの身の回りの状況とも重なる場面がたくさんあり、「決して遠いイギリスの町の話だけではなく、日本も海外も同じような課題を抱えているんだな」という声がさまざまな場面で上がりました。

読書会中のルールは、たった一つ、他人の意見を否定しないこと。
立場に関わらず、みんなが自由に意見を述べていく場になりました。


共助・公助、それぞれの可能性と限界

ネタバレを避けつつ、映画を踏まえて議論が白熱した話題をご紹介します!

多くのメンバーが印象的と語っていたのが、役所などの公的機関による対応と対比して描かれた、困窮する人同士の助け合いや、フードバンクなどの民間の取り組み。公的支援と民間事業のもつ、それぞれの限界が話題に上がりました。

公的支援では、対象者を決めるための明確な線引きがどうしても必要であるため、そこからこぼれ落ちてしまう人が出てきます。
特に、指定されている条件をギリギリ達成できなかった人々は、支援対象者と同じように困窮しているにも関わらず、支援を受けられない可能性が高く、映画の主人公のダニエル・ブレイクは、まさにこの条件の狭間に陥ってしまい、適切な支援を受けられない状態に陥ってしまいます。

メンバーの身の回りでも、例えば、福島の避難区域の周辺で、「ほんの少しだけ避難区域の外側だったために、避難するための支援が受けられなかったが、多くの住人が避難してしまい生活が難しい」という問題に直面した方がいらっしゃったそうです。

限りある財源で、公平かつ安定的に支援をするためには、どこかに線引きをする必要はあります。しかし、その制度上の条件によって本当に困窮している人が支援を受けられなくなることは、あってはならないことです。

しかし、民間によってできることの規模・多様性にも限界があります。
民間事業には、民間で行っているからこそ、IT化の推進など、より効果的・効率的に進められるのではないかという意見も出た一方、映画の中で、多くのメンバーが印象的だったと語っていたシーンがありました。
生活に困窮したシングルマザーのケイティが、食料の配給を得るためにフードバンクを訪れる場面です。そこでは、優しく丁寧に案内をしてくれるスタッフから、食料や日用品を必要な分だけもらうことができますが、寄付される物資にはムラがあるため、ケイティは生理用ナプキンをもらうことができませんでした。
公的な支援と異なり、個人の支援などによって成り立っている民間事業は、必ずしも安定した支援を継続的に行うことができるわけではない、ということが示されている場面でした。

このように、公的支援も民間事業にも限界があり、支援の手が届かない人が出てしまうことを再認識しました。


「クラウドファンディング」のジレンマ

クラウドファンディングも例外ではありません。

クラウドファンディングは、あくまで「民間事業」であり、公的支援のように、公平に安定した支援を行うサービスではありません。しかし一方で新型コロナウイルスや災害の発生時などの有事の際には、被災地の方などに緊急的な資金需要のために利用していただくことも多いという一面も持っています。

GoodMorningは、「共助」や「公助」の豊かな社会をつくっていくことを目指していますが、公的支援のように全ての人を等しく安定的に支援するセーフティネットをつくることはできません。クラウドファンディングは、福祉などの公的支援に代わるものではないと考えているからです。しかし、資金を必要としている方は、なるべく多くサポートしたい。ビジョン「誰の痛みも無視されない社会に」の実現のためには、誰のことも見捨てたくない。そのジレンマをどのように考えていくべきか、議論が盛り上がりました。

また、ビジネスとして課題解決を行う場合、限られたリソースのなかで「すべて」の課題を解決することはできず、どうしても優先度を付けなくてはならない場面があります。そのため、「自分たちも誰かを切り捨てているかもしれない」と語るメンバーもいました。


福祉と自己責任論

また、映画では生活保護やフードバンクを利用する人々が強い風当たりを受ける姿も描かれており、福祉を受け取ることへの偏見や自己責任論が、支援へのアクセスを阻んでしまう問題についても話題に上がりました。
現在多くの方が直面している、新型コロナウイルスでの経済的損失についても、「自己責任」といった言葉を目にすることは珍しくありません。だれも予測ができなかった災害にも関わらず、「困窮しているのは自己責任だ」という発言が起こってしまう背景についても、議論が白熱しました。

『わたしはダニエル・ブレイク』は、障害者差別や貧困の問題など、特定の社会課題についての現状を考えるだけではなく、様々な社会課題の根底にある構造的な問題について考えることができる作品でした。
今回議論に上がらなかった様々な課題についても、同様の視点から考えることでその背景にある、より大きな問題について考える助けになると感じました。


業務外での対話の重要性

最後に、読書会を終えての感想・改善点について話し、多くのメンバーから、「業務以外の話ができたのが新鮮だった」という声が上がりました。
GoodMorningでは2月中旬からリモートワーク体制を採っており、5月からメンバーが増えましたが、まだ一度も対面で集まることなく業務を進めています。

日頃の何気ないやり取りや雑談が減りがちななか、一つの話題に関して深く対話をすることで、改めてお互いのことを知るきっかけとなりました。

また、いろいろな興味関心・専門からの視点で1つの映画を見ることで、
それぞれが新しい気づきを得られ、対話をしていく中で、映画から感じたことを言語化できるという効果もありました。

「これからも頻繁に開催していきたい」という声が数多く上がったため、
今後も月一回程の頻度で開催していく予定です。
また課題図書や、内容についてお届けできればと思っています。

お楽しみに!

ぜひみなさまも、『わたしはダニエル・ブレイク』を見て、
身近な方と意見や感想を交換してみてくださいね。

また障害者支援や雇用の問題に関心を持たれた方は
現在実施中のこちらのプロジェクトもチェックしてみてください👇

ではでは!


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