岐阜イノベーション工房2019シンポジウム

REPORT|岐阜イノベーション工房2019 シンポジウム「IoTの“辺境(フロンティア)”」

岐阜イノベーション工房とは

「イノベーションの創出に挑戦するための風土を岐阜県内に醸成すること」を目的に、情報科学芸術大学院大学[IAMAS]が2018年度より主催する取り組みです。

IoT、AI、デジタル設計・製造などの本質を手を動かしながら学び、課題に取り組む中で手法を学びます。さらに、その経験を活かして自分たちが所属している組織などで実際の課題を設定して取り組みます。今回のシンポジウムでは、この岐阜イノベーション工房への参加募集も案内されていました。

シンポジウムの目的と内容

今回のシンポジウムのテーマは「IoTの“辺境(フロンティア)”」でした。シンポジウムの目的は抜粋・引用します。

IoTの本質は、「物事(things)をインターネットのようにつなぐことにより価値を創出すること」です。代表的な事例は製造業における作業効率改善ですが、これはIoTの第一段階に過ぎず、その他の分野におけるIoTの可能性はまだ探索の段階にあります。本シンポジウムでは、IoTの“辺境”(フロンティア)を開拓しようとしている人々から、それぞれの取り組みにくわえて、その背後にある視点や考え方、課題について理解を深めます。このシンポジウムに参加し、積極的に学ぶことにより、既に誰かによってつくられた成功事例の枠組みにとらわれることなく、物事の新しいつなぎ方を見つけるきっかけを得られるかもしれません。

このような目的のもと、以下、第1部~第3部の内容でシンポジウムが開催されました。このnoteでは、とくに第2部を中心にレポートします。

第1部:基調講演「イノベーションをマネジメントする」
第2部:話題提供と議論
    スマートフットウェア「Orphe(オルフェ)」
    アート × ブロックチェーン「startbahn(スタートバーン)」
    ディスカッション
第3部:岐阜イノベーション工房2019の紹介

第1部:「イノベーションをマネジメントする」

情報科学芸術大学院大学[IAMAS]教授の小林茂さんから、
 ・なぜ、新規事業をやる必要があるのか
 ・イノベーションを多くの人ができるような国際的な動き
 ・どういう風に実行していけばいいのか
について話がありました。内容については小林さんが公開されていますので、そちらをご参照ください。

 第2部:話題提供と議論

まず最初に、IAMAS 小林茂さんから本セッションの目的について話があり、そのあとにno new folk studio 菊川さん、スタートバーン 施井さんから話題提供、最後にディスカッションがありました。

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本セッションの目的

小林茂 / 情報科学芸術大学院大学[IAMAS]教授

第2部は「IoTの“辺境(フロンティア)”」というタイトルでセッションをします。このセッションの目的は「IoTを再定義する」ことです。

IoTという用語は新聞などメディアで流行語(バズワード)として取りあげられていますが、まだまだ指している範囲が狭いと感じています。IoTの変遷をたどってみたうえで、違ったところにいけないかと考えています。

【IoT の変遷】
1999 あらゆるものにRFIDタグをつけて管理する(Kevin Ashtonら)
2002 スマートなモノのための情報インフラ(Kary Främlingら)
2008 -2009 人の数よりもデバイスの数が多くインターネットにつながる
2011 機械・装置・センサー・人を相互につなぐ(Industrie 4 .0)
2014 全ての産業で資産と業務をつなぎ最適化(Industrial Internet)

「IoT」は家電量販店に行ったら売っているものかというとそうでもありません。それ自体が技術なのではなく、考え方であり、さまざまな技術を編みあげてその考え方を実現していくことが求められます。

自分たちがどんなビジネスをしたいのか、この世界をどうしていきたいのか、というような哲学があったうえで、その考え方を実現するものだとすると、IoTの定義がこういうのでいいのだろうか、というところに疑問をもっていました。

みなさんに了解してもらえるかは分からないですが、今日はIoTをこういう風にとらえてみたいと思います。

物事(things)をインターネットのようにつないで価値を創出する

「Things」はカタカタでモノと呼ばれたりしますが、日本語に訳すと「物事」が一番近い意味になります。「インターネットのようにつないで」というのは、どこかに中心がある中央集権型ではなく、すごく高いお金がかかるわけでもなく、有機的につながっていく。そして、ただつながればいいというわけではなく、そこから価値が次々と創出されていくことを起こしていけないか、というのが今回の提案です。

話題提供者の菊川さんも施井さんも、一般的なIoTのシンポジウムだとあまり登場しないタイプの方ですが、スタートアップとして新規事業に全力投入している企業として最先端を走っているので、2人から出てくるキーワードがみなさんの活動と結びついて新しい結合が生まれてくると思っています。

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話題提供①
スマートフットウェア「Orphe(オルフェ)」

菊川裕也 / 株式会社no new folk studio 代表取締役

「辺境」というお題をいただいても凄く嬉しく、いいテーマをもらったなと感じています。no new folk studio(ノー ニュー フォークスタジオ)という会社名で、「フォーク」の部分が辺境と近い意味を持っていると思っています。もともとフォークミュージックをやっていて、No Waveという音楽のジャンルに影響を受け、革新し続けること否定し続けることと、だけど人間を肯定しつづける態度の両方を忘れたくないという意味があり、そこが「辺境から物事を提案していくこと」につながると思っています。

会社の紹介を少しすると、2014年から4年半ほどやっていて、スマートフットウェアという製品をつくっています。簡単に言うと「靴の中にセンサーやコンピューターをいれる技術の研究開発と、そこで製品をつくって販売する」ということをやっています。著名な株主としては孫泰蔵さんや為末大さんが協力してくださっています。

スタートアップ企業なので、既存事業があって辺境をしているというよりは、自分たちがいま辺境に存在している状態です。業務内容を「IoT×靴×AI」と説明していて、回路設計のエンジニア、組込みのプログラムをかくエンジニア、靴の設計者、量産管理をする人、靴から得られたデータを解析する人、アプリをつくる人、サーバー側をつくる人がいます。普通に考えるとかなり違った領域の会社がやるべきことを1つの会社の中で少人数(約10人)でやっています。

もちろん自分たちだけでできることは知れている部分があるので、工場の人たちと連携したり、メーカーと連携したりして、スマートフットウェアのイノベーションを起こそうとしています。

極論を言うと「靴にセンサーを入れること」は誰かが思いつくことだと思います。ただ、それでもやりきっている人がいない中でやり続けると、こういう未来があるほうがいいじゃないかという提案ができるところが楽しくやりがいがある部分と感じながらやっています。

この話題提供のなかで、いろいろ話して何が言いたいか分からなくなりそうだなと思うので先にまとめておきました。辺境というワードを聴いて思ったことは、

・大企業/メインストリームは、有利なところや力があるが、流れのなかで個人の意見や趣向を反映させることは難しい → 市場規模の予測できることしかできない
・辺境からのアプローチは個人の意思に依存する部分が強い → だからこそ今までにない組合せや事業領域を見つけ価値を創出することができる

たとえば、「1000億円の事業規模が見えなかったらちょっと投資は難しい」みたいな話がありますが、とくにIoTでデータを活用するような事業の場合、データが流通されないと価値が見えてこないものもある。そのときに市場規模の予測が立たないので止まるということもあります。

スタートアップの場合、自分たちが未来をつくる想いや、個人がやりたいかどうかで決めれるような裁量があったりするので、だからこそ、ありそうでなかったことや、やるべきだったこと、予測ができなかったので誰もやれなかった事業を創出できることが価値だと感じています。

今日のあらすじとしては、以下のとおりです。
 ・スマートフットウェア「Orphe」がどうやってできたか
 ・ランニングやウォーキングのデータを取る靴
 ・データ活用

スマートフットウェアはどうやってできたのか

世界で初めてスマートフォンにつながった「スマートLEDシューズ」という言い方をしています。ソールの部分に約50個(両足で100個)のLEDが入っていてコンピューター制御で綺麗に光ります。さらに、9軸モーションセンサーが入っていて、足の動きを検知して音を出したり、光が変わったり、いろいろとインタラクションや操作ができます。プロジェクションマッピングのコントローラーとして靴を使ったり、足から得られるデータがコンピューターにつながってパフォーマンスを拡張することができる「オープンでインタラクティブなスマートシューズ」というコンセプトで出したものです。

首都大学東京大学院のころに、音楽をやっていたこともあって、新しい楽器をデザインすることに興味がありました。当時つくっていたのは「Pocopoco(ぽこぽこ)」と呼ばれる楽器です。シーケンサーという電子楽器で、絵を描くように曲をつくることができます。光と音と動きを組み合せたマルチモーダルな音楽をやるように、新しい楽器をつくりながら新しい音楽をつくるみたいなことに興味がありました。

博士課程のときに関わったプロジェクトで、かなり影響を受けたものがあります。サントリーさんのウイスキー「響(ひびき)」のWEBプロモーションのためにつくられたもので、「響グラス」といって、ウイスキーグラスの中にセンサーやコンピューターをいれて、飲んでる人の動きをセンシングできるようにしています。そのグラスが楽器になっていて、Barで飲んでいる人の動きに応じて、Barの音楽や映像が変わっていき、最終的に飲んでいる行為が合奏になるような仕組みをつくりました。

このプロジェクトを通して自分のなかで大きな気づきがあって、それまでは新しい楽器をつくることを重視していましたが、ウイスキーグラスが楽器になると「ウイスキーを飲む」という行為だけで、弾き方を教えなくても誰でも弾けるところに面白さを感じました。

このころから、日用品が楽器のインタフェースになることであらゆる人を演奏者にできるところが面白いなと思って、そこから日用品を楽器にしたいなと思うようになりました。自分がもともと得意としていた音や光や動き、これらを表現するための日常的なプロダクトとして、靴はいいかもと考えるようになったわけです。

靴はフラメンコやタップなど楽器としてすでに使われているので、最初のコンセプトはシンプルでした。既存の靴の中にセンサーを入れ、タップみたいな動きをしたときに音が出るものを試作としてつくりました。このころはビジネスのことは考えておらず、研究室のなかでプロトタイピングしていた感じです。

地面に足が着いたときだけじゃなくて、空中の動きも加わると面白いなのかなということを考えたり、上半身も組み合せてパフォーマンスをしてみたりして、楽器としての楽しさをいろいろ試してる時期がありました。

だんだんと「これ面白いじゃん」と言ってもらえるようになって、この時期の2014年にOgaki Mini Maker Faire(大垣ミニメイカーフェア)に参加したりして、そんなことしてたら注目していただいた機会があったりして、ABBA Lab(アバラボ) の小笠原さんに出資していただくことになって「世の中に出てみんなが使えるものにしたい」ことから会社をつくりました。

最初のメンバーは隣の研究室の人や後輩といった感じで、運が良かったのはDMM.comさんが「DMM.make」という「ものづくり工房つきのシェアオフィス」をつくってくださったこともあり、効率的にプロトタイピングができたことがあります。さらに秋葉原は浅草が近いので靴職人の人たちと一緒に試作をつくることもできました。

そこから2015年にクラウドファンディングで1200万円ほど資金が集まってプロトタイプから製品化へと進んでいきました。

単価は高かったですが、伊勢丹さんなどいろんなところに興味を持ってもらって製品が売れてきたり、モノ自体が変わっていたので、いろんなアーティストの人が声をかけてくれたり、有名な人たちが履いてくれたりして、パフォーマンスを手伝いながら、Orpheという靴の使い方を探ったり広報したりしていました。

そのような流れで、スマホにつながる靴の広がりがいろいろできた時期がありました。

ですが、実際にやりたかったのは日用品がインタフェースになることで誰でも表現の世界に入れるっていうところやりたいと思っていたので、プロのパフォーマーのためのものになっていくことに矛盾を感じていたりして、どうやったら日用品が表現のインタフェースになれるのかを悩んでいるところでもあります。

ランニングやウォーキングのデータを取る靴

そこで日常の中での価値づけみたいなことを考えていて、当時の自動運転やパーソナルモビリティのことが盛りあがっているときに、靴を履いて歩くという行為が減ってくるのかなと考えていて、「歩く」「走る」が便利になればなるほど必要がなくなってくることは分かっているんですが、一方で、国土交通省が出しているデータで、みんなが1歩あるくことで削減できる医療費があります。みんなが1500歩とか歩くようにすると年間35,000円も医療費を削減できる。それだけの価値があることは分かっています。
歩くことの価値づけをもう一度できないかなと考えました。

センシングできる靴はそれまでにも発表されていましたが、まだ望んでる社会になってないのはなぜだろうと考えたときに、センサーのデータがどういうもので、それが他の人にも活用できる たとえばある靴メーカーがスマートシューズをつくったとして、そこで得られたデータというのが他の人たちも活用できる仕組みができれば、歩くことの価値づけをもう一度できるのではと考えました。

そこで開発したのが「ORPHE TRACK(オルフェトラック)」です。靴の部分はスポーツができるようなスニーカーになっていますが、インソールをめくるとセンサーモジュールを抜き差しできるようになっていて、そこにオルフェコアというセンサーが入っています。ORPHE CORE(オルフェコア)のセンサーは加速度とか角速度が取れるようになっていて、歩幅とか速度とか足がどれくらい上がったかとか、着地のときに衝撃が何Kgだったかが1歩1歩記録できるようになっています。

歩数であればスマホで取れるようになっていますが、1歩1歩の歩幅とか速度とか衝撃が取れるものはなかなかありません。いろいろな市場に活用できますが、いまはランナーにフォーカスしています。30%以上の人が膝に痛みを抱えているという悩みがあったりして、そこで着眼されているのが、着地のときの衝撃の測り方(着地法)です。着地は体重の約5倍の衝撃がかかり続けるので、着地の角度が変わるだけでも最終的に蓄積される痛みが変わってきます。

これまではモーションキャプチャーとフォースプレートという器具を使えばランニングフォームを取ることはできましたが、研究室や大がかりな施設がないとできません。トップアスリートならたまにできるけど毎日はできないし、一般の人だとさらにやる機会はありません。こうした理由から、モーションキャプチャーとフォースプレートから得られるデータとORPHE TRACKのセンサーから得られるデータの相関を調べて、スピードや歩幅やひねりや着地の角度などで98%の精度でとらえられるアルゴリズムを開発しました。

いまはスマホのアプリもつくっていて、何ができるかというと、ORPHE TRACKを履いて歩いたり走ったりすると、コースのなかで自分の走りがどう変わっていったかが視覚化されて確認することができます。

そのほかにも、ランニングマシンを走っているときに仮想空間を走っているような感覚を体験でき、いい走り方をすると次のステージにいけるといったゲーミフィケーションのなかでランニングフォームを学べるアプリも開発しています。

これらは我々だけですべてやろうとしているというよりは、パートナーシップのなかでランニングシューズをつくろうとしていて、アシックスさんと協働して開発しているものもあります。この7月から販売開始で、いい走り方を体験してもらうサービスを開始します。

データはどのように活用するのか?

みんなが歩いたり走ったりするデータがサーバーにたまるようになっていて、これを活用したいと考えています。そこでいろいろな人に相談したところ、三菱UFJ信託銀行さんが情報信託プラットフォームといういわゆる情報銀行のサービスを企画しています。これは、みんなが持っている個人のデータをプラットフォームに信託しておくと、活用されたときに対価が自分に返ってくるような仕組みです。

たとえばFacebookがパーソナルデータをたくさん持っていて利益をあげていても個人に直接お金をもらえるということはないと思いますが、情報銀行であれば使われたら使われた分だけ利益が返ってくるようなことをされようとしています。そこでORPHE TRACKの足のデータを活用してもらうことになって、昨年は1000足をアシックスさんと開発して、実証実験に参加した人に履いてもらい、1500万歩くらいの足のデータをとりました。

将来的には、保険事業者や製薬会社やフィットネス関係者が、そのデータを参照して、歩いた人自身に対価を支払うことができる仕組みをつくろうとしています。歩けば歩くほど、走れば走るほど報酬をもらえるような社会をつくろうとしています。


いまはランナーにフォーカスしていますが、このノウハウはスポーツやリハビリや見守りなどに使えると思っているので、スニーカーの型だけではなくいろんな靴に展開していくことを考えて企画しています。

さいごに

既存事業があるわけではなく、0からハードウェアスタートアップでやっています。もともとの話しの流れとしては、電子部品が小型化・低価格化していって、モノのインターネットが誰でも試せるようになってきて、ハードウェアを製品化するための障壁というのがたとえば深圳を小さい会社でも使えるような環境が出きてきたことによってスタートアップでもハードウェアをつくれるようにきました。

ですが実際は、ハードウェアスタートアップってなかなか儲からないよね、というのがベンチャーキャピタルの人たちにもよく言われることです。巨額の投資で資金調達に成功した人たちでもなかなか製品を出せずに失敗したり、出したとしても全然儲からなかったりすることがたくさん起こったため、最近ではなかなか簡単じゃないよね」というのがハードウェアスタートアップの現況です。

やっていて思うのは、スタートアップの世界は、つくれるもの(プロダクト)と市場(マーケット)の両方がフィットする領域を達成することが重要とされていますが、ハードウェアスタートアップの場合、そもそもハードウェアでクオリティの高いものを安くつくる仕組みはかなりありますが、それを使ってもなかなかいいものができないということがあります。

あとソフトウェアだけ、たとえばアプリだけであれば、iOSやAndroidのプラットフォームにのれば、いきなり世界中に発信してマネタイズすることができるという優れたプラットフォームがあります。それに対して、IoTのハードウェアの場合、各国の法律や規制にそれぞれ対処しなければいけないし税金もかかり、必要とされるノウハウが多いです。

一番あるあるですが、IoTプロダクトはデータが集まらないと何も言えないという性質がありますが、スケールしないと最初はコストが高くて買ってもらえない問題があって、でも最初買ってもらわないとそもそも価値が出ないという、にわとりとタマゴが起こりやすいです。

それでも悪いことばかりじゃないと思っていて、いまのCOO(最高執行責任者)はアプリのマーケティングをしていたけれども、うちの会社にきて、やることが難しいからこそ、大海原があるというか、たとえばいまランナー向けにやっているんですが、登山靴つくりませんかとか安全靴つくりませんかとか子どもようつくりませんかとか、いろんな声をかけてもらえています。

日本にこういうことができる会社としてプレゼンスを出せるから、ある種につきぬけたときに横展開できる領域の広さは大きいです。あと靴に特化していて、医療関係の人に声をかけてもらったりとか、安全靴(工事現場)、全然違う事業領域の人に声をかけてもらっていきなり突き抜けるときがあって、そういうユニークなプロダクトからしかできない突然の協業みたいなパターンがあるので、今までにあるものを作っていたらなかったことだと思います。

あと日本の人たちの優しさもあります。新しいものをつくっていることに対して、ポジティブに応援してくれる人は多いと感じています。

大きいの流れのなかだとイノベーションというのは起こしにくいので、僕自身は辺境から攻めるというのは面白いと思っています。偏執的に好きでやり続けられることじゃないと世界とは勝負できないし、最終的には好きな人たちの勝負になってくるので。自分が命かけれるところに偏執的に行くしかないかなと感じています。突き抜けたプロダクトをつくれば、それは最初は辺境かもしれないですけど、いろんな事業領域を超えてひろがっていくんじゃないかなと思っています。

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話題提供②
アート × ブロックチェーン「startbahn」

施井泰平 / スタートバーン株式会社 代表取締役

事業概要の前に、ブロックチェーンを説明するときに、ブロックチェーン以外のところでVRの世界の話しをしています。この辺の話しを最初にすると、ブロックチェーンの話もわかりやすくなると思っています。

海外のプロダクトで、iPhoneのカメラを使ってスキャニングするアプリの使用動画です。簡単にアプリを使って高精度のスキャニングができるものです。かなり現実と見紛うものができるようになっています。

僕のなかで想定していたのは、もう少し時代が後になってこういうスキャニング技術が出てきてよりVRの世界が近づくと考えていましたが、そんなことを考えていた最中にこのプロダクトがバズって、思った以上に早くVRの時代がくるんじゃないかなと思いました。

VRをいま体験すると、高解像度のテレビに比べると解像度が低かったりしますが、それは目が知覚するスピードに反応できるCPUを考慮すると、それくらいが今は限界だからです。実際の現実と見紛うほどのVRができるまでには、360度9Kくらいの解像度があるとできると言われていて、12~13年後には購入できるようになると言われています。

そういう時代になってくると、どちらが本物でどちらがデジタルの物かがわからなくなる時代になるといっても過言ではありません。こういった話はGoogleのレイ・カーツワイルが予言していたり、定量的に未来の予測をしていたりしています。Facebookのマーク・ザッカバーグもVR企業のOculus(オキュラス)を買収して10年後にマネタイズすることを発表しています。

こういった大前提があった状態で、これからのブロックチェーンの話をしたいと思います。

ブロックチェーンによるアートのインフラづくり

もともと僕自体が現代美術家で、活動し始めて18年になります。いま東京大学のなかにオフィスがありまして、30人弱のスタッフで運営していて、ブロックチェーンのエンジニアだけでなく、コミュニケーションのエンジニア、アート部門のスタッフなど、少し変則的なスタートアップの会社です。

2018年7月にプレスリリースを出して世の中に問うフェーズがあり、2019年3月に資金調達(シリーズA)を終え、実務部隊をそろえて社会実装していきましょう・ビジネスにしていきましょうというフェーズになっています。

これまでの夢物語を話すだけでなく、今年の秋口ぐらいまでには社会実装を進めていく必要があります。ここまで来るには長い時間がかかっていまして、もともとは2006年にトークイベントで「いまのアートのインフラって、全然ちゃんとなってないよね。アートっていまルネサンス期以上の勃興が起きてもおかしくないのに、インフラがなってないから悪循環しているよね」みたいな話をしていました。

当時のトークイベント自体は盛り上がったんですけど、まだpixiv(ピクシブ)やニコニコ動画ができていないような時代だったので、「インターネットやWEBサービスがアートのコンテンツを変える」といったことをイメージできる人が少ない時代でした。

機関投資家と話をしてもなかなかいい反応が得られなかったので、当時はひとまず日本とアメリカで特許を取ったわけです。思い返すと、これがブロックチェーンの時代を先行していたところがあって、そういった偶然も重なり、いまアートとブロックチェーンの領域では先行している立ち位置にいます。

現状としては、テストネット上にこれから紹介するようなプロダクトが公開されている状態で、秋には世界配信を始めます。

ブロックチェーンそのものや、仮想通貨との違いの話しになると2~3時間では終わらないので、そのあたりは割愛します。

一言だけいうと、仮想通貨のベースになっているテクノロジーは、仮想通貨以外にも活用できるということです。むしろ、仮想通貨以外の、そちら領域にかなり革命的なことができると言われています。そのテクノロジーを使ってアートのインフラをつくっていこうというプロジェクトです。

アートの市場について

ブロックチェーンの説明の前に、アート業界でよく分からないこともあると思いますので簡単にご紹介します。アートの市場は、一般的な市場と比べて変わっているところは「二次流通市場のほうが比較的盛りあがる」です。大抵の場合は「新品が高くて、中古(人の手に渡ればわたる)ほど価値が下がる」のが通常の市場ですが、アートの場合は二次流通市場のほうが比較的盛りあがって、ニュースになっているのはほぼ二次流通市場です。

なのでタレントでもない新人が目玉の新人デビューみたいなことはほぼありえないのがアート市場です。むしろ普遍的な価値をずっと社会に問うていって時代を経て残っていったものが価値になっていく側面があります。

株式市場と近いところもあるかと思います。つまり、スタートアップだとデューデリジェンス(投資をするにあったっての価値調査)が難しいですが、市場開放されてIPO(新規上場)後だと株の売買が安定して価値が認められやすい。そういうような世界があります。

1つの事例として、ジャクソン・ポロックの226億円で2015年に落札された作品は、もともと1948年に150万円で売られたものです。70年で実に1万倍の価値があがっています。こういったことがアートの世界では起きます。

こういったことはレアケースで、二次流通市場に乗らなかったり、価値があがらないこともあります。ただし、ほとんどの場合、二次流通の管理がちゃんとできていない・難しいということです。

たとえば、数億円の作品でエディション作品(同じものが世界に3つあるなど限定販売)で売られている作品です。「世界で3つしかありません」という証明書がありますが、この証明書自体がギャラリーが発行していたり、アーティストが発行していたり、それぞれ勝手にデザインして発行しているもので、この証明書自体を本物であると第三者によって証明できないこともあります。

あと、流通の過程で証明書が他のものに入れ替わっていても、それを証明することが難しいとか、一般の市場に比べると不思議な側面が出てきます。むしろめちゃくちゃ脆弱な側面があるのがアートの市場です。

アートとブロックチェーンの相性の良さ

このように作品の証明書を共通のプロトコルをつくって登記することができれば、それだけでもかなり需要があると言われています。世界共通の規格をつくってブロックチェーンで共有するだけでも需要があるところを、さらにブロックチェーンを使えば、単に証明書が管理されるだけでなく、マーケットを拡大する可能性が秘められているということでアートの業界では注目されています。

e-コマースとかインターネットとかあらゆるものでアート業界は「全員がラストペンギン」と言われていて(※)、ファーストペンギンは一人もいないと言っている人もいます。そんな世界にも関わらず、昨年の11月に『美術手帖』でブロックチェーン特集がされたりと、他の業界と先んじて進めていることもあります。

※注釈
「ファーストペンギン」というのは、ビジネスの世界などで言われている言葉で、
「危険な海に最初に飛び込むペンギン」を指す。
それに対して、何もできないで取り残される者を「ラスト・ペンギン」と呼ぶ。

なぜそこまで注目されているかというと、大きく分けると3つの可能性が言われています。

1つは「プロブナンス(来歴)の管理がしやすくなること」。これは後で詳しく説明します。

もう1つは「アートの分割所有ができることで、アート投資の民主化ができる」。アートの作品が今まで1億円とか10億円の作品が売られているイメージだったんですがそれを何百分割することがブロックチェーン上で可能になっていきます。ブロックチェーンがなくても実現可能ですが管理しやすくなりるので手頃な金額から投資ができるようになり、ひいてはアートの投資の民主化につながると考えられています。

さいごは「デジタルアートの販売管理」です。簡単にコピペができるのでデジタル画像には値段がつけにくかったのですが、それも所有権者を明確にしたり販売管理ができると言われています。

注目されている言われているだけじゃなく、すでに事例もあります。
シンガポールの、Maecenasというプロジェクトでは、アンディーウォーホルの作品を51%以上持っている人が所有権を持つというルールの基、残りの49%中31%を販売して、最終的には100人ほどで合計2億円の投資が集まりました。このことは昨年の7月に世界的なニュースになっています。

このあとにも、すでに6~10の大きなプロジェクトが動いていて、日本の中でもSMADONAやARTGATEなどいくつかのスタートアップが参入しています。

他にもcryptokittiesの画像。この画像の所有権が1300万円で落札されたというのが去年のニュースになっています。

というように、アートとブロックチェーンは、インフラの部分では相性がよくいろいろな場面で活性化につながると言われています。

アート・ブロックチェーン・ネットワーク構想

世界で30くらい、アートとブロックチェーンのプロジェクトが起こっていると言われています。そんな時代に僕らがこれから何をしていくかというと、世の中に多くのサービスが出ては消えるというアートの世界で、どうにかブロックチェーンを使うことで、アートのインフラを整えて解決できないかなと考え、アートブロックチェーンネットワーク [ABN] という構想をつくりました。

一言であらわすと、世界中のあらゆるアートに関連するサービスをブロックチェーンでつなげるプロジェクトです。

画像2

ピンク色の部分がブロックチェーンの技術が使われているところで、イーサリアムというプロトコルを使っています。そこに繋がる形で左上に僕らのプラットフォームである「startbahn」があります。

ABNも僕たちが構想しているので「startbahn」と同一視されがちですが、ABNはもっとパブリックなインフラで、たとえスタートバーンという会社がつぶれたとしても200~300年と自動的にずっと動き続けることを想定して設計されています。

ブロックチェーンの話に「脱・中心的であるべき」という話と「自分たちが中心になってある程度マネジメントしないといけない」というバランスの話がでてきます。今の段階では僕らが実装して公開してメンテナンスして、いろんな人に入ってもらうことをやっていますが、2~3年かけて徐々に中心からはずれていって、関わっているみんなでマネジメントしていく方向にシフトしていきます。

アートのe-コマースとかオークションサービスだけでなく、保険サービスや真贋鑑定サービスなど、これまでにもあるアナログなサービスや、今から出てくるであろうAIによる自動化サービスもすべて、あらゆるサービスが繋がっていくことを想定しています。なかには証券化や信託化のサービスもつながっていくと思われます。

対象にしているアート作品は、リアルなアートも、VRやデジタルアートも対象にしています。さきほど世界中でもアートとブロックチェーンのプロジェクトが多く生まれているという話をしましたが、それらがABNにつながることも考えています。

アート・ブロックチェーン・ネットワークの使い方

これがどういう風に使われるかというと、証明書が基本になっていて、全てのサービスから独自の証明書を出すことができます。ユーザーから見たときは、オークションから出てきた作品はオークションハウスが独自でデザインして証明書を発行しているように見えるけど、実際は他のサービスとも連携されたつながりがある、といった感じです。

どこかのe-コマースで購入したものを、他のギャラリーで使って、そこのギャラリーで二次販売されて、それを買った人が他のオークションハウスで使うといったことが可能になり、その都度、その来歴が自動的に記録されていきます。

それがアートの売買だけでなく、展覧会の履歴や修復履歴など、作品の評価や信頼に関わる情報が自動的に記録されていきます。作品の諸情報や、真贋鑑定に使われるメタデータとかも入れることができるようになっています。

さらにその作品の証明書が200~300年と使われ続けることを想定したときに、2次販売、3次販売されていったときの流通を管理できるようになっています。

もともとの証明書を登録する人(アーティスト本人やマネジメントの人)が作品に対するリージョンコントロール(たとえば、数年間は日本でしか売れませんなど)を入れれたり、著作権管理も通常は著作者本人に権利があるけれども部分的に販売時に譲渡することも、そのあとの著作権運用もブロックチェーン上で管理できるようになっています。希望者には作者への還元金の設定もでき、2次販売・3次販売されるたびに著作者へお金が還元されるような仕組みもあります。

あとは2次創作にも使えます。キャラクターのコンテンツが2次創作されたときに、それが販売されたときの一部が作者に還元されることがコントロールできるようになります。

証明書とプラットフォームのルールセットの照合で、いろんな来歴が自動的に残ったりとか、契約を実行するインフラで、これを使っていろんなことをやっていきましょうというのが進んでいることです。

スタートバーンのビジネス展開

こんな公共的なことをしていて、「どうやってビジネスしてるんですか?」とよく聞かれます。ということで先に説明しておきます。

自分たちのプラットフォーム(startbahn)をつくっているので、ここで1つビジネスをやっています。ここで売買があったら金額は未確定ですが10%とか15%とかの手数料をもらいます。

2つ目は共同開発事業です。ABNに興味があるが自社で開発する技術者がいないという会社や、アイデアの成功率を高めたい会社から要望があったときに共同開発という形で行っています。

いまは工芸家のネットワークを作って発信することを丹青社さんとやっていまして、ここでは人間国宝になるような工芸家とか工芸とアートの中間領域にあるような人を世界に発信するプロジェクトをやっています。こういったものを技術提供するだけでなく、実際に一緒にブロックチェーンの世界に浸透することも企てながら構築していくことがビジネスになっています。

あとはやっていくなかで出てきた要望でASP事業というのがあります。自社にはエンジニアはいるけどブロックチェーンはわからない、セキュリティのリスクを恐れるので鍵の管理はやってもらいたい、接続を簡易的にしてほしいという要望に応えるために、既存のアート販売サービスとかをやっている業者さんがABNにつながる部分を提供する事業です。

たとえば、ヤフオクさんとかピクシブさんとかBaseさんとか、そういったサービスが入ってくると、どこからでも窓口になってABNにつながることができる。1回ピクシブで投稿したものが、最終的にニューヨークのクリスティーズのオークションで販売される、それが自動的に履歴に残るとか、それが途中で分割所有されるとか、そういったことが将来的に実現できるようになるためのインフラです。

現状では昨年の4月にコンセプトを発表してから、20~30社くらいからお声がけいただきまして、いろんなところとPoCを進めています。みなさんからのヒアリングをもとに、今年の秋くらいに最初の製品を世界配信することになっています。

ABNというインフラは既存市場を破壊するのか?

作品を買っているコレクターの人が、いまの業界にとってディスラプティブ(破壊的)じゃないか、業界の反応はどうなんだといった話が聴かれます。

それにお答えするついでに、これから何をしていくかをお伝えしたいと思います。

現状では、アート作品は証明書の管理ができていない・脆弱であるという話をしました。脆弱であることで何が起きているかというと「偽物が流通しないように、なるべく見知った人にしか売りたくない、見知った人からしか買いたくない」ということが起きていて、どんどん業界が閉鎖的になっています。

ブロックチェーンは「トラストレス(信用不要)」という言葉があって、相手が信頼できる・できないにかかわらず、ちゃんと取引ができるというところがブロックチェーンの良いところの1つです。「この人は有名なコレクターだから、この人が買ったら本物に違いない」みたいに閉鎖的になっていたものを、有名なコレクターじゃなくとも本物に近い可能性を継承することで広げていくことができます。

また、他にも可能性を探っています。例えば、現状コレクターは作品を投資財として使う場合、その作品を買ってから売られるまではお金が入らない、という仕組みです。言うならばキャピタルゲインしか得られないのがアートの作品のコレクションの財としての特徴です。

いま僕らの用意しているアートブロックチェーンネットワークでは、売却しなくても、持ってるだけで利回り5%が得られるインカムゲインみたいな仕組みを考えています。利回り5%が実現すれば一般の金融資産と同じように所有でき、部屋に飾る物としてもいいし買えるかな、といったことが広がります。

もともとコレクターは買ったものを公開したほうが価値はあがるのに、公開すれば傷ついてしまったり価値を損ねる可能性があるという、相反するジレンマがあるので倉庫に保管しがちだったりします。それを高精度の3次元データにして世界に公開していくこともやっていこうとも考えています。

そんな感じで、今までの証明書が単純に共有されるだけでなくブロックチェーンならではの機能を付け加えたりして、今の市場の破壊じゃなくて、コレクターにとっての購入のインセンティブを拡張するかたちで購入者層を拡大したり、よい循環につなげていくような考えでいます。

オラクル問題

最後に、「オラクル問題(※)」もよく聞かれるので話します。

※注釈 「オラクル問題」
ブロックチェーンの中に、チェーン外の情報を取り入れるとき、
その情報の正しさをどう担保するのかという問題です。

ブロックチェーンの情報とリアルの情報をどう紐づけるんだという話は95%聴かれる質問です。これはIoTの問題にも関わってくるかなと思います。これはブロックチェーンを考えるうえで、アートに限らず全てのプロジェクトにつきまとう問題だと思っています。

この問題が付きまとわないのは「仮想通貨」と言われています。仮想通貨はオンチェーンといって、ブロックチェーンの内部ですべてのやりとりが行われるものです。

しかし実際には仮想通貨の取引業者とかの情報漏洩の問題もありましたが、あれは仮想通貨のブロックチェーン上で情報漏洩が起きているのではなくて、「つながり」の部分、つまりWEBアプリケーションの部分で情報漏洩が起きたりしています。そういう意味では、そこにもオラクル問題があります。

よくある誤解としては、「デジタルアートはオラクル問題がない」と言われますが、オンチェーンで完結するもの以外は同じような問題があります。たとえばデジタルアートを登録しようとしたときに途中で通信が傍受され変更されてしまうと、登録情報が変わる可能性があります。

リアルでもデジタルでも情報を登録する人が間違える可能性もあるし、リアルアートの場合、登録した後に買った人が売ったときに途中ですげ変えている可能性もあります。いろんな場所でオラクル問題が発生する可能性はあるので、基本的に、これは100%解決可能という風に思わないほうがいいと僕は思っています。

その代わり、何が有効かというと、基本的に僕らはこのブロックチェーンネットワークではドライな情報を自動的に記述していくことをしようとしています。

たとえば「ピカソの絵」があったとします。来歴を見て、一番最初に登録されたのが100円ショップだとしたら、たぶん誰が見ても「これが本物のピカソだ」とは思わないでしょう。一方で、一番最初に登録されたところが世界的に有名なギャラリーだったならば本物の可能性が高いんじゃないかなと類推すると思います。

ただし、それが本物の可能性が高いと類推することも、その作品に対する評価も時代が変わることもあります。たしかに最初に登録したところが超有名なギャラリーだったとしても、たとえばその5年後にその有名なギャラリーが大不正疑惑で世界的なニュースになり、実はそこのギャラリーは5年間全部不正で偽物を登録してましたというニュースがあった後だと、それまでは信頼における来歴だったものが、10年後には「あー、あそこのギャラリーから登録されてるものだったら、偽物の可能性が高いよね」と、情報自体は同じなのに、情報を判断する我々の考え方が変わることが起きます。

これまでの250年間も、アートの世界というのは作品の証明書と作品の間の紐づけがどうなっているかをずっとやってきています。

たとえばレンブラントの絵が納屋にあって、レンブラントの絵じゃないと思っていて5万円くらいのものと思っていたら、実はレンブラントの絵で300億円の価値がありました。みたいなことがニュースに出ています。

つまりそれは何かと言うと、レンブラントの絵に食べたら栄養になるみたいな絶対的な価値がないということでもあります。それが本物であることを誰かが証明して初めて価値があるものになる、だからこそ、ドライな情報を淡々と記述していくことは基本的には有用です。そういったことをあくまで客観視してより精度の高い価値につながる情報を記述していこうと思っています。

とはいえこれだけでは心もとないので、スキャニング技術による赤外線デバイスで取得したデータをAIで解析するみたいな工学的なアプローチも進めています。

筆者追記(2021年3月11日)
参考:ブロックチェーンとアートに関連するマーケット
https://niftygateway.com/marketplace
https://rarible.com/
https://foundation.app/artworks
https://opensea.io

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ディスカッション

小林茂 × 菊川裕也 × 施井泰平

菊川(以下、菊):
これから技術が進歩していったら、見えているものとしては仮想と現実とほぼ区別がつかなくなるという話がありましたが、「ユニークな1つのものである」「それがオリジン(起源)である」というの価値をみんなどんな風に捉えていくのかと疑問に思います。体験が変わってきたら、価値観自体も変わってきそうだなと思っていて、アート自体のスタンスも変わってきそうで、そのあたりをどう考えていますか?

施井(以下、施):
美術史を見ていると面白いことが起きていて、アートってマイナーなジャンルだと思うんですけど、いろんなイノベーションが起きていて、とくに資本主義とのはざまのイノベーションが起きています。作品を数千万円で買っても、その作品をつくるレシピだけをやりとりするとか、そういったことが60年代から行われていています。

アンディ・ウォーホルの作品も、当時のシルクスクリーンは今だとインクジェットプリンターみたいな扱いだったので一番安くて一番作家性が出ないものとして使っていたのが、いまはすごく価値を持っています。

一方で現代では、アンドレアス・グルスキーという写真家で、写真1枚で3億円とかもしますが、Photoshopで加工されてるいくらでも量産できるような作品で、すでにアート市場では数億円ついているものもあります。

そう考えると、いまの映像作品を買った人もUSBのスティックもらうだけということも起きているので、その延長線上にはデジタルコンテンツとか概念とか、モノではないモノが、モノと同じくらい価値があるようになってもおかしくないかなと思います。

すでにゲームのガチャとかに何十万も払ってレアなものが出てきて価値を見いだすこともあるかなと思います。IoTとは関係ないかもしれませんが(笑)

IoTって「モノのインターネット」ですけど、ブロックチェーンの技術者と話していると、ブロックチェーンって何かと言ったときに「デジタルの世界に実存をあたえる」という表現をしていました。

たとえば、ゲームだと、ドラゴンクエストⅠで伝説の剣を取得しても、1回ゲームが終わっちゃったらその伝説の剣は消えるし、誰が伝説の剣をとろうが同じです。

だけど、ブロックチェーンの世界が浸透していくと「誰が、いつの時代に、取った伝説の剣か」みたいなのがデジタルワールドでずっと残り続けるみたいなことが起きます。「有名なe-スポーツのプレイヤーが履いた靴が、サッカーゲームのウィニングイレブンの大会で履いた靴だ」といった情報が、デジタルワールドに実存をあたえていて、100年後にやりとりされるみたいなことが起きます。

ブロックチェーンはそういったことも支えるテクノロジーで、それって新たなIoT、違う次元の話になってきますけど、テクノロジーとモノをつなげるという意味では似ているのかなと思いました。

小林(以下、小):
デジタルゲームの話だと、僕はまだしつこく『Pokémon GO』をやっていて、いかに課金せずにレベル40まで到達するかというのやっています。だいぶきついけど頑張っているのですが、もしNianticがやめちゃったら僕の努力はなんだったんだということになると思います。スタートバーンも「この会社がなくなったらどうなるんだろう」と思っていましたが、ブロックチェーン上にあると誰かが必ず引き継いでくれる可能性が高い。そうしたデジタルワールドの持続可能性にあらためて可能性を感じました。

菊:
今は情報が「あるか・ないか」ではなくて「検索可能性が高いか・低いか」のほうが重要になってきていて、交換する手段などその価値を維持し続けられることが必要なのかもしれませんね。

小:
ORPHE TRACKを履いて走ったアスリートのデータを比較したときに、たとえば「為末さんが走ったときのデータは価値が違う」といったことが起きたりするんですか?

菊:
それはありますよね。情報銀行も民主的なツールとしてやろうとしていますが、パーソナルデータを集めるときにどうしても「価値のある」パーソナルデータと「ない」データが出てくる可能性があると思います。

たとえば製薬会社さんがデータを欲しいというときに、レアなケースのデータだったらお金をかけてでも集める価値があって、今までに検証したことのあるタイプの人のデータについては全く価値を感じていない、みたいなことがありえます。

とくにデータは「ある人の、あるタイミング」にとってはすごい価値があるけど、ほとんどの場合で価値はないということが多いです。まさに為末さんだったら学びたいという人は多くいることに対して、一般的なアスリートだと値がつかないというのがあり得るので、そこの問題はナイーブに考えないといけないと思います。

施:
ホンダのCM「Sound of Honda/Ayrton Senna 1989」で、アイルトン・セナが走った軌跡をサーキットの各所にスピーカーを置いてセナが走ったかのように音声を再現するのがありました。そういう意味では誰かのマラソンのときの伝説の走りを何度も感じるみたいな新しいエンタテイメントがあったも面白いなと思いました。

VRとか見ていると、すべての情報を再現することを目指すけど、靴のデータだけというのは喚起力があって想像も膨らむのでそこをうまくやっていくといいと思います。

菊:
靴でやってていいなと思うのは、みんなが履いているので、それぞれ自分に照らし合わせて考えることができます。ランナーに向けてやっていると言っても、ランナーじゃないスポーツをやっている人が「僕はこう使いたい」と言ってくれたり、リハビリをやっている人が「ここのデータを取りたいんだ」とか熱をもってやってきてくれるのも、靴という具体的なテーマが共通だからかなとそこに強みは感じます。

小:
加速度のデータとか「生データを見せられてもわからない」みたいなことがあると思いますが、トップアスリートもふくめていろいろなデータを集めてみて、どういう風に活用していく予定ですか?

菊:
生データをそのまま見せても多くの人にとっては価値がないもので、ORPHEで光る靴をやっていたときもモーションデータを取ることはできました。けれどその解析がなかったので、ダンサーの動きの生データを見て、それをマネタイズするのはすごい難しいなと思いました。

いまは全く逆というか、「これを見るだけでも価値がある」と感じてくれるものにフォーカスして解析していくことで、話題提供で話した「着地の衝撃」や「角度」みたいなものはランナーだったら大体気にしているので、それを確認できることだけでも、ある程度お金を出して見たいと言ってくれていました。それを聴いてから解析するアルゴリズムをつくる、といった順番でやっています。同じデータでも、それをどう加工して見せるかで全然話が変わってくることは実感しています。

小:
その「必要とするデータ」には、どうやってたどりついたんですか?

菊:
ヒアリングをふくめたリサーチですね。僕の場合ラッキーなのは、光る靴のときにいろんな人に見ていただいたので、声をかけてもらったり、アシックスさんとやりとりをして「こういうデータが集まってきたら、次世代の靴が作れるんじゃないか」みたいなディスカッションのなかでイメージをかためていけました。

いろんな人の意見を聴いたなかで、一番フィージビリティ高そうなところにしぼっている感じですね。

小:
施井さんの場合、どうやって発想にたどり着いたんですか?

施:
2006年にスタートバーンの最初のプロトタイプについてトークイベントをして、そのときに実は2つの作品をつくっていました。

1つは「自分の作品をボケてに出したら、どういう批評がつくか」みたいな実験をしていて、本棚の作品で背表紙だけを同じ幅の発泡スチロールにはさんでいって、前から見ると本物の本棚のように見えて横から見ると薄いみたいな作品です。

もう1つは、2001年にインターネットの時代のアートみたいなことをやっていて、森美術館ができたときに展示をして、そのときに自分のパソコンも閲覧できるように展示したんですけど、入場者数がすごく多かったにも関わらず僕のパソコン見た人が13人とかしかいなくて「このアプローチ違うな」という風に思いました。

そのときに2つ浮かんだのが「パソコンとか使わずにテクノロジーを喚起する作品をギャラリーでつくること」、もう1つは「テクノロジーを使ってそもそもインフラをつくる」その2つのラインしかないなと思っていました。美術館にパソコンを置くというのはちょっと違うかなと思ったのが2006年です。

2006年に本棚はすぐ作れたんですけど、インフラをつくるというのはそこから13年かかった感じで、そこが一番の分岐です。

WEBサービスを最初はやろうと思っていました。インターネットの時代って何かっていったときに、ニコニコ動画とかTwitterとかその辺にいる高校生が一躍世界的なスターになるみたいなボトムアップのダイナミズムがインターネットにあるのに、アートの世界ではそれが全然ないなと感じていました。

ギャラリーに何年も通って、所属作家になって初めて作品を見てもらえるみたいな世界で、それはちょっと違うなと思ったときに、ボトム層の人たちを盛りあげないといけないと考えました。

ボトム層を盛りあげるためにはどうしたらいいかを考えると、価格のマッチングができないといけない。価格のマッチングをしないといけないということは価格を下げないといけない。でも値段を下げるとみんな抵抗するから、2次販売、3次販売したときに元のアーティストに還元機能をつくれば値段を下げてもプライドが傷つかないんじゃないかというのが最初の発想でした。

それをWEBサービスで実装したら「ここで買ったものを他で売られたらどうするんだ。たとえば、スタートバーンで買ったものをヤフオクで売られたら2次販売を追えないじゃん。」と聴かれて、それで困ってたときにブロックチェーンができて、ブロックチェーンがあったらいろんなサービスをつなげられて、来歴も追えるし、還元金も戻るよね、といった流れです。

施:
アーティストとして活動していて、その延長線上で起業して、資金調達をすることをやっていると思いますが、社会の仕組みとの摩擦みたいなものがあるときに、それをどう考えていますか? 僕自身は社会に揉まれることで嬉しい部分のほうが大きい気がして自分だけの作品をやっているときよりもいいなと感じていますが、どうですか?


菊:
ポジティブにとらえています。デプロイ(展開)を意識していて、昔のアーティストもその時代その時代の手段を使っていただけで、いまに生きていたら違ったことをやっていただろうと思うし、今しかできないことってめちゃくちゃあるという点で、僕たちは恵まれた時代にいますよね。

これまでだったら概念を届けることしかできなかったのが、今だとうまくやれば実現することができるから、それこそがアートだろうと思っている部分もあります。

僕たちで言うと、ランニングを解析してグラフを見せるだけだったら、それは表現というには実利的すぎるかもしれないですけど、データがたまってきて、どういうフィードバックを得られたらこの人は変わっていけるのか、みたいな行動変容のところに踏み込んで、たとえば音だったり、光だったり、表現を通じて行動変容していくというのは今じゃないとできない(データがないとできない)表現だと思っていてます。

きちんと今考えていることをやるためには深堀をする必要があって、一朝一夕なメディアアートっぽいアプローチをするのがやりたくないなと思っているところもあります。ある程度、深く掘ってからじゃないと出せないという意味で、いまは我慢の時期かなと思っています。諦めているわけではなく、むしろ今までできなかった大きな可能性にチャレンジするための準備期間と感じています。

施:
ブロックチェーンに参入した理由も、投資を受けるとかファイナンスの概念ってイノベーションと相性がいいと感じていて、社会にまだ受けいれられていないものに先に投資をして最終的に社会的に適用して大きな利益を得る仕組みだと思うんです。

ブロックチェーンに参入する前は反応が悪かったんですけど、ブロックチェーンが入った瞬間に反応がよくなって、結果的にその動きによって社会の波というかバズワードがあるおかげで人が見てくれる、問うてくれるところで自分たちがアウトプットする繰り返しのなかで加速したところがあります。イノベーションをする上では、ファイナンスとか有用かなと思いました。

菊:
クリプトカレンシー(暗号通貨)は、投機的なスケベ根性みたいなものと、デセンタライゼーション(脱中心化)みたいな社会的な民衆のためのアクションが両方あるのが時代を象徴している気がします。

施:
そのあたりはまだリテラシーが充分に高まっていないかなとは思いますが、5年くらいたてば、クリプトカレンシーの話とブロックチェーンの話が気持ちよく融合して社会の実装につながるのかなと思っています。いまはICO(イニシャルコインオファリング)とか仮想通貨の印象が悪すぎてちょっと言えない部分もありますけど。

最終的に、ブロックチェーンの強みは貨幣と裏表の関係にあるのがあって、社会的なプロジェクトがありつつ、同時に社会実装というのも進む性質があるのは面白いなと思います。

菊:
「ビットコインは悪っぽいけど、ブロックチェーンという技術は正しいんです」ていうのもいまいち共感できていなくて、ビットコインがうまくいっているのはインセンティブの設定が非常に優れているからで、結局それを誰が計算するのかというインセンティブを与えてあげないとチェーンの運用もできないわけじゃないですか。ということは、最終的にそのスケベ根性みたいなものは切り離せないんじゃないかというのが僕の考えですね。それも含めて人間というか。

小:
そうですよね。社会と切り離されたところで成り立たないし、インフラから変えることでつながっていなかったものがつながっていくみたいなことも起きえます。

そこにみんなのインセンティブがないと単に「へー、いいですね」で終わってしまうので、ABNのように設計されているところが非常にすごいなと思いますね。今までは分断されていたことが、今だったらつながるかもという期待があって、それをインセンティブをもって設計できて実装できるような変化が起きていることを実感します。

施:
GAFA(Google/Apple/Facebook/Amazon)の問題って情報を牛耳っていることが問題視されていますけど、そこにきてブロックチェーンのムーブメントがきていて、プラットフォームの時代は終焉をむかえていて、八百万の神的な世界になるのではないかと考えています。

つまり、プラットフォームは残りつつお互いで支えあうみたいなところがあったりとか、アートで言うならば、自分の作品は自分が管理するものなんですが、WEB2.0の時代はプラットフォーマーの時代だったので、著作権管理団体みたいなのが管理をたまたましてくれている状態でした。

それに対してブロックチェーンって「個」が著作権を直接管理できます。そういう話になると必ず、中抜き業者いらなくなるんじゃないか、みたいな話はでてきます。たとえばアートの世界だと「ギャラリーはいらなくなるのでは」とか。

それは逆だと思っていて、来歴が重要になってくると、どういうプラットフォーマーが中に入ってくるかで価値づけする必要があるので、本来あるべき形になるんじゃないかと感じています。俯瞰してみると、テクノロジーは進化していて「これは違うよね、こっちがいいよね」を繰り返していて、いい意味で完成に近づいていっているんじゃないかなとブロックチェーンをやっていると感じます。

小:
オラクル問題を聴いて思いましたが「不正」の問題もありそうですね。たとえば、歩けばお金がもらえるみたいな仕組みのときに、昔の単純な万歩計のように振ってだますようなことは、ORPHE TRACKではできなさそうですね。

菊:
歩容認証(ほようにんしょう)という技術があって、歩き方の特徴というは恣意的になかなか変えられないんです。数歩あるいてしまえば、その人ということがある程度証明できる技術です。

ただ、加速度をずっとトラッキングするのは今までなかったので、そこは基礎研究から始めないといけないですが、原理的はできると言われています。

施:
それってキーレスエントリーとかに向いてますよね。歩紋(ほもん)とは違うんですかね。 ソニーの『ESP研究室(エスパー研)』で、犬がどうやって飼い主を見分けているかで、鼻が利くから説があるけど、実際匂いとかなくしても飼い主と判断できていて、検証すると「歩紋」というのがあって、歩くときに指紋のような波の固有性があってそれを察知しているみたいな話があった気がします。

菊:
靴は履いていないときもあるので、すべてのソリューションには使えないと思いますが、靴の強みは着用感(靴以外の装置の感覚)がないところかなと思います。

玄関に置くので充電もされるし、データを取れる仕組みをつくっていて、「IoT機器」と思うと充電しないといけないし、スマホでデータを吸い出したりしないといけないから、ウェアラブルの離脱率が高い問題がありましたが「玄関にある靴、それを履く」だけでユーザー側の生活は何も変わりません。それができる靴は強いなと感じています。

小:
ここ20年くらいで出てきたデバイスのなかで、スマートフォンくらいですよね、毎日充電することをみんながしょうがないからやっているのは。便利さのほうが勝ってるからやっているんですが、大抵のウェアラブルのデバイスってそこが壁になっちゃって1週間で使うのを止めることは起きていますよね。装着するのを忘れて、データとれないんだったらもういいや、となったりもする。たしかに靴だと履き忘れることは少なそうですよね。

菊:
「その靴を履くか」といった問題は残ります。いろんなシリーズを出して、常にどれかを履き続けられるアプローチを進めています。

施:
ウェアラブルを買っては使わなくなることが多々あって、Suicaとかも失くしがちだったんですけどiPhoneに入れられるようになって失くさなくなりました。

最近充電マットみたいなものがあって、充電マット買ってもその充電マットに置き忘れることがあります。そういう人多いと思うんですよ。でも僕ですら玄関に靴は脱いでますからね。

菊:
靴を履く行為は習慣になっているから意識しなくてもいい行動らしく、徘徊する老人の人も、基本的に同じ靴で徘徊するとも言われています。

小:
「スマートフットウェア」というとすごく新しい概念のように聞こえるのですが、「靴」と言われると昔から履いているものとして無理のなさ、「ブロックチェーン」でいうとイーサリウムとかトラストレスが中心になる概念かと思いますが、気にすることがないところが成功につながっている気がしますよね。

小:
参加者からの質問です。地方都市からでもイノベーションは起きますか?あるいは地方だからこそできるイノベーションはありますか?

施:
尊敬する人に山口覚(さとる)さんという方がいらっしゃって、地域活性化をやる人が多いなかで、その人が言っているのは「最終的に東京に発信するような地域活性化が多くて、本当の脱・中心は起きていない」ということを言っています。

僕がアートとテクノロジーの会社をやるといったら必ず言われるのが「アメリカやイギリスでやったほうがいい」です。自分の住んでる場所をユートピアにするというか、ここでなかったら生まれ得ないものというものは必ずあるので、東京からどうのとかニューヨークからどうのとかいう発想よりは、世界における日本だったり、日本における地方だったり、その地方の人にもメンタリティがいるかなと思っています。一方で、踏襲制とか法的な問題とかそういった地方が優遇されるような制度が必要というのはあると思います。

菊:
メンタリティ(意識)の問題は大きいですよね。その人が意識を持つかどうかで、コミュニティが意識を形成していることに影響力が大きいのかなと思います。1個いえるのは、東京もすでに中心ではないですよね。スポーツのデータ化1つにしても最先端じゃないし、東京が新しいプロダクトをつくる点で優位ということはないと感じています。

僕らで言うと、東京オリンピック・パラリンピックはチャンスだととらえていて、そこに対してみんながコミットする意識があるからそこでモメンタムを起こす(勢いをつくる)ことを意識しています。

その土地がもちうるモメンタムみたいなものをとらえて、そこで仲間を集めて流れをつくっていくことを考えれば、どこでもチャンスはあるはずじゃないかなと思います。

第3部:岐阜イノベーション工房2019の紹介

岐阜イノベーション工房は、アート、デザイン、工学、社会学など、多様な分野の教員と学生が切磋琢磨するIAMASという環境で醸成された手法の中で、イノベーション創出に有効だと考えられるものを短期集中で学ぶプログラムです。

IoT、AI、デジタル設計・製造のハンズオン体験により新規事業創出に生かすための「基礎演習プログラム」、イノベーション創出に必要な手法や流れを学ぶ「演習プログラム」、学んだ考え方や方法論をそれぞれの組織等に持ち帰り実際の課題に取り組む「実習プログラム」、そして期間中の成果を報告する公開の「成果報告会」と、基礎から実践まで充実しています。

このプログラムに参加し、真剣に取り組むことは、イノベーション創出に取り組む風土を醸成するきっかけになるでしょう。今年度の募集は締切となっていますが、今後もぜひチェックください!

 

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