日本版『マイ・インターン』?? (元プーマ社長がベンチャーでインターンをするその理由)

プーマジャパン社長やアディダスジャパン副社長などの外資系アパレル企業TOPを経験した平内優氏が、野々宮秀樹氏がスタートしたソーシャルグッドベンチャー『GOOD GOOD 株式会社』にシニア・インターンとして参画。経営者OBのベンチャー参画方法として一般的な顧問や相談役ではなく、なぜインターンなのか?

「利益」の変化に気づいた2人

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(▲左:平内氏 / 右:野々宮氏)

-2016年8月- その夜ふたりは、久しぶりに関西で焼肉を食べていました。突然、野々宮が

 「第一歩目から社会をよくする事業をやろうと思う」

と言い出しました。配当受益権の流動化など、資本や利益を扱うことに慣れた彼の経歴からは、少し意外な発言でした。

ふたりの関係性は、平内がプーマジャパンの代表取締役社長を退任した後に、元SONYの出井伸之が創業したクオンタムリープ社の代表に就任。その際に、出井の紹介で知り合う。平内の退任後、同社の外部顧問であった野々宮が、出井と共にクオンタムリープ共同社長に就いた。クオンタムリープ社の先輩社長と後輩社長という間柄です。

平内「唐突にソーシャルビジネスに取り組みたいと熱弁する野々宮さんの顔を見ながら、もしかしたら身体に何か重大な問題が起きたのかも、と思ったよ(笑)」

野々宮はその頃、それまで仕事の中心としていた東京から離れ、地元関西を拠点に20歳前後のメンバーらと共に海外向けメディアの立ち上げを進めていて、毎日のように彼らの新しい感性を大量に浴びている時期でした。

そうした日々の中で、世の中の感性の大きな変化を感じ、市場から共感を得ることの意味を考え直すようになっていたのです。そして、社会貢献が持つ力を再認識するようになっていたのでした。

しかし、実はそれまで野々宮は社会起業やソーシャルビジネスには否定的な立場を取っていました。

野々宮「ビジネスは社会貢献が当然で、それをわざわざキーワードにして喧伝することに違和感がありました。まずは稼ぐ力を身に付けるのが先だろ。それまではそう考えていました(笑)」

約半年間、それまでビジネスではあまり深い接点を持っていなかったビヨンド・ザ・インターネット世代の彼らと毎日のように時間をともにする中で、インターネットやSNSが世の中に及ぼしたインパクトを実感するようになり、“かっこよさ”の意味が大きく変容していることを自身の価値観の変化を伴って実感するようになっていました。

事実、野々宮はその頃、同じ服ばかりを着るようになり、彼の価値観がの変換期だったのだと周囲は語ります。

野々宮「その時期、世の中の利益の優先順位が、個人利益から社会利益にシフトしていっていると強く感じました。あの夜、平内さんの感覚と比べてみたかったんです」

一方その頃、平内は自身の子どもたちが20歳前後になっており、これまでの企業経営で部下に感じていた世代間の感覚の差だけでは説明がつかない価値観の変化を、自らの子どもたちに感じていました。

それは、平内にとって自分の世代の若い頃とは生きている目的が変わってきているような感覚でした。


平内「野々宮さんが話している内容には最初は一部懐疑的でしたが、じっくりと聞いているうちに子どもたちの意志や行動の多くに合点がいくようになったんです」

そうしてふたりは、全く異なる経緯で感じていた世の中の価値観の大きなシフトを、期せずして突き合わせることになったのです。

人生初の「インターン」という肩書

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(▲外国人・学生・シニア の各インターン)

野々宮は、第一歩目から社会を改善することを目的とした事業でありながら貪欲に事業収益を求めていくような形態を模索しました。

野々宮「変わらず優先順位は事業収益が上なんです、ただ、目的を達成する順番は社会貢献を劣後させないようなバランスを求めていました。いっぱい稼いで人の役にたてればいいんじゃないですか?でも、いっぱい稼ぐと同時に役に立てれば最高だよね!って」

とはいえ野々宮は、ソーシャルグッドベンチャーを起業するにあたり、社会貢献を優先するばかりに小さなことにだけ注力していると、大したインパクトが得られず本質的には社会貢献にならずに終わってしまうことを危惧したのです。

そこで事業の立ち上げに際し、より大きなインパクトが期待できる既存商社などの他社との、共同事業方式で複数プロジェクトを進行させるモデルを採用しました。

野々宮はすぐさま平内に協力を要請し、ふたりで平内の関わり方を考えることにしました。そうして、一般的に大企業経営経験者がベンチャーに関与する場合に就任する「顧問」や「相談役」ではなく、シニアとしての役割を果たしながらも、新世代の価値観を平内自身が学び感じ取れ、活かせる環境を重視することにしたのです。


結果、導き出されたポジションが【 インターン 】が最適解という結論になりました。


野々宮「平内さん自身が、自らの子ども世代から多くを吸収して元来の経営力をもって多くの企業に影響を与えたり、自ら新たに事業を開始する可能性を考えると、より多くの感性を吸収しやすいポジションが最適だと考えました」


平内「平均年齢が20代、学生インターンも参加している若い会社で、経営陣も含めた皆が遠慮なく接することができ、自分も新しいことを学ぶ環境なので、インターンっていうのは面白いな!と考えました」


その日以来、外国人インターンや学生インターンと、“新人”シニアインターンとは、共に机を並べることになったのです。


相乗効果Driven

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(▲あらゆる年代が参画するGOOD GOOD経営陣)

以後、通常では机を並べてインターンシッププログラムに取り組むことのない顔ぶれが、GOODGOODのオフィスに並ぶようになり、学生インターン、経営陣、平内それぞれに相乗効果が現れはじめました。

ほどなくして、映画「マイ・インターン」さながら、最初はどう接していいものかと遠慮気味だった学生インターンたちが、平内に対して仕事のみならず就活をはじめとしたさまざまな相談を持ちかけるようになりました。

また平内は、まさに親子ほど歳の離れた“インターン仲間”と同列に接することで、自身の常識や価値観によるフィードバックやアドバイスをしながら、彼らのそれとを日常的に比較することができるようになりました。

平内「与えるだけではなく、最新の常識や感性を吸収することができる環境は学びが多く、これからの自分の人生をワクワクさせるような要素にも出会えるよね」

野々宮「すぐ横に経営者OBが居るインターンシッププログラム。僕から見ても羨ましい環境ですよ」

一方、経営陣にとっても、平内と日々気軽に接することができる環境はメリットをもたらしました。平内に対してフラットな関係でさまざまな相談が可能になったのです。

野々宮「まるで壁打ちのように、日常的に平内さんに思っていることや考えていることを話していると、いつの間にかするべきことや方向性が定まってくることを何度も経験しました」

平内は、そんな経営陣の話を聴きながら、自律的に自身のネットワークや経験を活かして、気負わずに必要な各リソースを GOODGOODに投入できるようになりました。

インターンとして気負わず進められることで柔軟性が生まれ、結果として競争力のある提案となる場合も多く、実際に平内が新たに身につけた感覚により老舗商社の理解を得て、共同事業に発展したケースも存在します。

シニア・リセット = チャーミング

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(▲シニアのチャーミングさは武器になる。)

社会人生活が長くなり、年齢や経験を重ねてくると次第にエラくなっていった、かつてのビジネス環境。

しかし今の時代は、そんなことよりも柔軟な思考と、経験に裏打ちされた強力な実行力をもって、いかに社会や組織に貢献できるかが問われます。

野々宮「インターネットネイティヴ世代はDNAが書き換わったくらいの進化を感じます。さらにスマホネイティヴな彼らが時代を作りはじめている今、ITビジネス云々ではなく、人の生き方や生きる目的そのものが変わってきているんです。僕ら経営者はこれをいち早く実感して、新たなビジネスモデルを創り出していく必要があります。大きな変化を受容したシニアは強力な援軍になりますよ」


平内「自分たちの世代はまだまだ先が長いので、これまでの価値観や経験に固執するのではなく、新しい価値観にこれまでの経験をアジャストさせていくことで人生をより楽しめるのではないでしょうか」


定年。それはビジネスシニアが、自ら立場をリセットして今の時代と向き合ってみる良い機会かもしれません。そして、“今の時代”はそれを容易に受け入れる環境にあります。

一般的な定年を迎え、まだまだビジネスに関わっていこうと考えるとき、闇雲に自身の経験を連続的に活かそうとするのではなく、まず、大きく変容した社会の価値観を理解してから自身の活躍できる場所を探すということであれば、シニア・インターンというビジネスとの関わり方は、その後の可能性を膨らます上でも最適なポジションや過程なのかもしれません。

野々宮「今の若い人はビックリするくらいに賢くなっています。それを真に理解し受容したビジネスシニアには形態を問わず社会を動かしていく可能性を感じます。また、そういった人には皆、同様にチャーミングさを感じます」

真剣な人が一瞬緩んだ瞬間、チャーミングな空気が生まれます。人生のアクセルを一瞬緩めたチャーミングなシニアと共に、まったく新しい世界をーー。

『本物はいつもチャーミングだ。』―― GOODGOOD & Go.

平内優  1957年生まれ 
・ソニー株式会社 入社
・アディダスジャパン株式会社 副社長
・株式会社ユニクロ 執行役員
・プーマジャパン株式会社 代表取締役社長
・クオンタムリープ株式会社 代表取締役社長
・VAIO株式会社 執行役員
・GOODGOOD&Co. インターン (Mar.2017現在)

野々宮秀樹 
・弁護士法人ボストン法律経済事務所 事務局長
・クオンタムリープ株式会社 共同社長
・S-TEAM LLC.代表社員
・GOODGOOD&Co. 代表取締役 

GOODGOOD&Go. (GOODGOOD株式会社)
事業開発&事業配当受益権流動化を専門にしていた野々宮秀樹が、資本の在り方の一部を、金融資本から文化資本等の多様なへ変換してするために始めた事業会社。長期保有株主らと共に、物事を"Slow"に捉え、最先端"テクノロジー"を駆使して、"SocialGood"に取り組み直すことでイノベーションの余地が大きく生まれる事業領域に取り組んでいる。
まずは、大好きなお肉の世界から。
 -GOODGOODMEAT-

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※本記事は2017年より2020年まで、あるインターネット媒体に掲載されていた内容と同一です。媒体社の業態変更に伴い掲載が中止されましたが媒体社の許可のもと、同一内容を本媒体に転載しているものです。(平内はその後、GOODGOOD社に長期保有株主として資本参加)

【GOODGOODが2016年の創業時より継続使用する企業メッセージ】

人間の持つ夢や想像力を信じ、
それらを具現化する努力を懸命に続け、
チカラを抜いたその瞬間に生まれるフワッとした空気。 人は大きな志があるからチャーミングになれる。

チャーミングさこそが人の共感を呼び、
大きなうねりを伴ったインパクトを生み出す。
私たちはそう信じています。

効率向上を目指し努力を懸命に続け、
金融資本にレバレッジをかけてきた世の中。
パンパンに膨張させたその価値に、疑問符がついた今、
もっと多様でユニークな世の中が生まれる転換期かもしれません。
余力とイニシアティブをもって
「本質的な自然資本や文化資本の価値を磨き続けたい。」

壮大なロマンチストにして、
徹底的なリアリストを目指す私たちは、
社会をより良くする小さなイノベーションの連続でもって
長期的な社会課題解決に挑戦することにしました。

「本物はいつもチャーミングだ。」

GOODGOOD & Go.


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